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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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19・穴

 セイネリアは眉を寄せる。貸すのが嫌というより、何をするという説明がないからだ。他の連中からもいかにも不審そうな目を向けられて、流石にヘタな事では動じそうにない魔法使いも困った顔をした。


「えー……軍での魔法使いの仕事といえば弓矢を防ぐ、のはお約束ではないですか」

「つまりあんたもそれ出来るって事か?」

「えぇまぁ、私の場合ちょっとクセがあって使い難いんですけどね」


 魔法のクセ、と言われてもここにいる者で魔法使い以外に魔法に詳しいものがいる訳がない。だからますます顔を顰める連中を見て、魔法使いは手短に説明した。


「えー弓矢を防ぐ魔法は大きく分けて2種類ありまして、一つは風で防ぐ術、もう一つは空間魔法使いが空間に穴を開けて矢をどこかへ飛ばしてしまうという術です」


 この魔法使いフロスは空間魔法使いと言っていた、だから後者を使えるのだろうというのは予想出来る。ただそれがマントとどう繋がるのか分からない。


「どちらも一長一短あってその説明は省きますが、私が使えるのは勿論後者で……ただ、大抵の空間魔法使いが出来るように、何もない空間にいきなり穴を開ける事が私は出来ないんですよ」

「……それは、何かモノがあれば出来るということか」


 セイネリアがすかさず聞き返すと、魔法使いは安堵したようににっこりと笑う。


「そうです、さすが話が早い。私の場合、何かちゃんとしたモノに穴を定着させる、という方法で空間を開く事が出来るのです」

「あぁなら……そのマントにその『穴』を開けて、矢が飛んできたら広げれば矢が防げるってことかな」


 呟くようにそういったのはエーリジャ。フロスは満足そうに頷いた。


「そうです、そうです、矢が飛んで来たらどこかへ隠れるより、マントを広げて中に隠れればいい、という事です」

「成程」


 納得したセイネリアはマントを外す。マントならほぼ全員がつけているが、体の大きさのせいは当然として腕を全部隠すように前で留めているセイネリアのマントは圧倒的にでかい、隠れられる面積を考えてセイネリアに頼んだという事だろう。


「これでいいか」

「はい、本気で物理的に穴を開けるのではないのでご安心ください。マントの表面を入口として空間を開けるだけですから、ちゃんと後で解除してお返しします」

「あぁ、そうしてくれないと困る。生地の幅が規格外で作らせるのに時間が掛かるんだ」


 笑った魔法使いはセイネリアのマントを受け取る。

 ただその直後、布の重さに驚いて落としそうになったのだが。





 西の下区で夜中歩いているようなのは当然マトモな人間ではない。ほぼ確実に後ろめたい事をしている連中で、金がなくても善良な連中やトラブル巻き込まれたくない連中は家の中に閉じこもって外には絶対に出ない。

 だから基本、道を歩く人影はなく、辺りは不気味な程に静まり返っている。

 その中を、特に警戒したようにも見えない冒険者の一行が歩いていくのはまずない光景で、彼らは迷いなく細道の先へと向かっていた。


 そこへ、ひゅ、と矢が空気を切る音を鳴らして飛んでいく。


「エルっ」


 声を上げたのは、耳の良さでは一番のエーリジャ。


「おぅよっ」


 エルがすかさず前に出て彼の長棒を両手で持って上に掲げる。そこからばさりと布が落ちて皆がその影に隠れた。セイネリアのマントの端をエルの長棒に結びつけてカーテンのようにしているという訳だ。


 こちらを狙った矢が続けてやってくる。

 最初の一本は的外れなところに刺さったが、今度は確実にこちらに届く。

 一応『穴』を事前に見て大丈夫だと理解してはいるものの、こんな布一枚で矢を受けるなんて不安になるのは仕方ない。だから矢がきた瞬間、皆の表情は緊張に強張る。

 とはいえ勿論、矢がこちらに届く事はない。

 衝撃どころか布が揺れさえもせず、あまりの手ごたえのなさに布を持っているエルは拍子抜けした声で呟いた。


「大丈夫……みたいだな」

「えぇ、そのまま持っておいてくださいね」


なんだこのサブタイ……いやだからタイトルとかつけるの苦手なんですって。

なんかやっと動くシーンか、ってとこで終わってすみません。ただここはまだそんなちゃんとしたアクションシーンにはならないんですよ(==;


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