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黒の主  作者: 沙々音 凛
第八章:冒険者の章六
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10・見えるのだから

 エルが術を掛ける。それと同時に、彼女はこちらへ剣を向けた。彼女の剣は細身の片手剣で、左手だけに篭手をつけてそのまま前腕部に小型の盾を装備している。その左腕の盾を前に出して、彼女はこちらに突っ込んでくる。

 セイネリアが剣を受ければ、彼女はすぐに一度引いた。最初の打ち込みは彼女としてもただの試しのようなものだろう、そこで一度彼女は刀身を立てると手ごたえを見るように握り直した。


「悪くないな」


 嬉しそうにそう呟けば、エルが得意げににっと笑う。

 それでも彼もこちらにばかり気を取られている訳ではない事は、それとなく背にあった長棒を手に持っている事で分かった。


「行くぞ」


 再び彼女が突っ込んでくる。盾で前を隠してその横から伸ばされた剣をセイネリアは受けて弾く。だが今度はすぐに距離を取らない彼女の肩に、セイネリアは加減しつつも剣を落とした。彼女はするりと避けた。

 その反応速度に、セイネリアは思わず笑う。

 今度はもう少し剣速を上げて彼女を狙えば、避けながらも遅れて掠りそうな分を盾で受け流して逃げた。


――この辺りが限界か、惜しいな。


 まるで最初からこちらの動きを分かっているかのような反応速度は、実際本当に分かっているのだろう。だが、惜しい事に体が追いつききれていない。だからこその盾装備か――と考えながら、今度は彼女が伸ばす剣をセイネリアは少し力を入れて弾いた。案の定バランスを崩した彼女だが、それでも一歩引くだけでその場で踏みとどまった。


「流石、とんでもない力だな」

「俺相手なら、力で押し切られる事は想定して動いたほうがいい」

「確かにな」


 言ってまた剣を伸ばしてくる。セイネリアも剣を振り上げる。

 だが、レンファンの剣はセイネリアを狙う事はなかったし、セイネリアの剣も彼女に向かって振り下ろされる事はなかった。

 二人共、すれ違った背後に悲鳴を聞く。

 直後に剣を振り払えば、どさりと重い質量が地面に落ちる音が聞こえた。


「ほいよっ」


 続いたのはエルの声。

 彼が長棒を回して地面を一薙ぎぎすれば、それに足を引っかけられて転んだ人間が二人現れた。エルはすかさず倒れた者達に向けて追撃を掛ける。一人はそれをまともに受けてその場にまた転がったが、もう一人はその場から影に飛び込んで姿を消した。


「ヴィンサンロアの術か」


 セイネリアが呟いて、今殺したばかりの死体を蹴る。

 ヴィンサンロアは罪人の神であり、信徒が使える術は暗闇の中、影に隠れて身を消す事がよく知られている。ただし簡単に使えないようにペナルティがあるのが特徴でもあり、それでも連続で使えるという事はそれなりに訓練を受けている者という事になる。


「成程、卑怯な連中か」


 レンファンはそう吐き捨てて走り出すと、一見誰もいない場所を剣で刺し貫いた。

 同時に、醜い男の悲鳴が上がる。地面には三つめの死体が転がった。


「だが私には効かない。姿を隠しても無駄だぞ、私には見えるのだからな」


 この場にいるのは後二人。どちらもかなりの手練れなのか気配を消すのが巧く、セイネリアでも時折程度しか移動した敵の気配を読めない。だが彼女には関係がない、なにせ彼女は気配を読んでいるのではなく、秒か、秒以下の予知を見ているのだろうから。


 黙って立っていた彼女が再び動く。

 盾で何かを弾いてそのまま横に剣を薙ぎ払えば、4人目の死体が地面に転がった。となれば後一人、だが……。

 彼女はそのまま暫く辺りを伺っていたが、やがて剣を下すと腰に戻した。


「一人は逃げたな」


 つけていた目隠しを外しながら近づいてきたレンファンに、そうか、とセイネリアは答えてからエルの方をみる。エルは腰に下げていた縄で自分が気絶させた男を縛っている最中で、生きたまま一人が確保できたなら追う必要ないかと判断する。

 そのエルのところへ、レンファンが近づいて行った。


「手伝うか?」


ちょっとキリ悪いですが、このシーンは次で終わり。

レンファンさんの腕前紹介回的な感じでしょうか。


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