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黒の主  作者: 沙々音 凛
第七章:冒険者の章五
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19・戦闘開始1

「ちなみにあの後、気持ちよく帰って皆に仕事の話をしたら、ヴィッチェとフォロにはえらく怒られた、どうして自分たちを連れていかなかったんだとな」

「正直に話せばよかったろ」

「言ったさ、危ないからだってな。そしたらフォロに泣かれた。勝手に行かれた先で俺が死んだりした方が嫌だと」


 その言葉にセイネリアは考える。そうしてそれが、仕事に呼ばなかったあとのエルのセリフと同じだと分かってしまって、思わずククっと喉を鳴らして笑ってしまった。


「……なんだ?」


 不審そうな顔でアジェリアンが睨んでくる。


「いや、悪いな、ただの思い出し笑いだ。俺もつい最近エルに同じ事を言われたと思ってな、泣かれはしなかったが」

「何をしたんだ?」

「あんたと同じだ、単に仕事に呼ばなかった。完全にあいつ向きじゃない仕事だったというだけなんだがな」

「成程……まぁ、気持ちは分かる」


 少し考えた素振りを見せたアジェリアンに、セイネリアは意味ありげに笑ってみせた。


「ただ言っておくとな、エルが言う場合とあの女神官が言う場合では、かなり違う意味が入ってくると思うぞ」

「違う意味とはなんだ?」


 眉を寄せる自分より10近くは年上の男に、セイネリアは笑ったまま言ってやる。


「それは、俺がカリンを置いていった理由と、あんたが彼女達を置いていった理由の違いくらいの意味だ」


 アジェリアンは益々顔を顰めた。


「まったくわからないんだが」

「そろそろ自覚しないとひどい目に合うと思うぞ」


 アジェリアンの顔が更に苦く潰れて行って……だが、その会話はそこまでになった。風笛が鳴って、敵の襲撃が告げられたからだ。





 砦を守る側と攻める側の戦いとなれば、守る側は砦に篭って敵を迎え撃つというのがセオリーではある。だがクリュース軍の場合、敵が少数でこちらが気付く前に襲われた場合はそれもあるが、こうしてそれなりの大群で堂々と敵がやってくる場合はこちらも堂々と正面から迎え撃つのが決まりであるらしい。……理由としては、蛮族相手にわざわざ砦に篭って砦を傷つけさせる戦いを恥とする騎士団側の風潮が大きく、不意打ちか戦力的に自信がない場合しか籠城戦にはならないという事だ。


 だからこそ、蛮族の大群がくる可能性の高い砦には騎兵部隊がいる。

 砦の城壁にずらりと弓役を並べ、下では横一列に整列した騎兵部隊を先頭としたクリュース軍が待ち受ける。それが、この手の戦いでの定石となっているらしい。

 これらの話は例のこちらを呼び出した騎士たちから聞いた事だが、くだらないプライドだなと思った反面、それでも今まで、少なくともこの砦では蛮族を毎回退けてきたのだから笑って馬鹿にする気にはない。


「さて、これでやっと噂の槍騎兵隊が見れるというわけだな」

「あぁ、一見の価値はあるぞ」


 アジェリアンがそれだけ楽しそうに言うのだから、少なくとも見て面白いモノではあるのだろう。ナスロウ卿の話を聞いていた騎士達の中には騎兵隊の者もいて、マトモにデキそうな人間だと評価して良さそうな人物ではあった。このバージステ砦の槍騎兵部隊がクリュース軍一の精鋭部隊と言うなら、ある程度の期待はしても良さそうだとセイネリアも思っていた。


「槍隊、用意っ」


 槍騎兵部隊に号令がかかり、騎兵達は立ち位置の修正をして槍を構える。

 こちらからはまだ見えないが、遠目の効く狩人か、もしくは千里眼持ちのクーア神官が敵の姿を見つけたのだろう。


「まず最初に弓だ。それが途切れたら槍騎兵部隊が突っ込む。今回は2段出るそうだ。それが終わったらこちらに号令が入るぞ」

「あぁ、何度も聞いた」


 アジェリアンの緊張した声に、セイネリアは笑って返す。


「本気で神経が図太いな、お前」

「今更だ」

「そうだな、今更だ」


やっとこさ、大群同士の正面衝突。

ただ意図的に、よくある戦記物から1桁くらい規模おとした人数の戦闘にしてます。

まぁ別に国同士の戦いではなく、ただの小部族との小競り合いのちょっと大きい奴くらいですしね。


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