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黒の主  作者: 沙々音 凛
第七章:冒険者の章五
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15・気まずい朝2

「フォロ……いや、それは少々問題があるとは思っているが、ただ彼の考え方は正しくもあって……」

「正しい? 部下だと言って……女性をモノ扱いしてその……行為を強要するような人がですか?」

「強要はしていないだろ、それは当人同士の問題で外野がどうこういう話じゃない。俺が奴を認めているのはそういう部分ではなく、彼は感情を考慮しない判断が出来る男であるから……」

「つまり、情のない人という事ですか。……そうですか、わかりました」

「フォロ、それは悪い意味ではなくな」

「情のない人間、という言葉をいい意味で使うのを聞いたことがありません」

「フォロ~」


 フォロ側の言いたいこともアジェリアンの言いたいこともわかるエルとしては、ここで仲裁に入る気にはなれなかった。そもそもそんな事をしたら余計こじれるだけだと言うのは分かっているし、他人のナントカを邪魔するやつは馬に蹴られて死んでしまえという言葉もある。エルは馬にも馬みたいな勢いの女にも蹴られたくはなかった。


 女神官にそっぽを向かれ、いつもなら上級冒険者らしく威風堂々とした態度の男が項垂れながらエルの方にやってくる。そして元気のないその様子のまま、どこかの疲れたオッサンのような声で聞いてきた。


「エル……どうすればいいと思う?」


 一応女性陣に聞こえないように小さくしたろうアジェリアンの声に、エルはまず、大きなため息で返した。

 本音を言えばエルとしてはセイネリアの性格を分かっている分、俺ァ知らねぇぞと決め込みたいところだったが、パーティーリーダーであるアジェリアンの事を思えばそれは出来ない。ちなみに外野でこの状況に頭を悩ませているのはアジェリアンとエルの二人だけで、後は『触らぬ神にたたりなし』とばかりに無関係を装っている連中ばかりだ。エーリジャでさえ『ヘタにあれこれしなくてもなるようになるんじゃないかな』で終わりにしてくれた。彼は人が良すぎるくらいの人間……だと思っていたのだが、あまり深く考えない性質なのか、それとも年齢的にある程度悟っているのか、こういう事にはヘタに手を出さない主義らしい。


「うー……ん、そうだなぁ」


 とはいえ、悩んで見せつつも解決案なんて大きく分ければ2つしかない。

 すなわち、ヴィッチェに好きなだけ吐き出させてスッキリさせるか、このまま放置してギスギスしたのを我慢するかだ。まぁ一応皆プロだから、後者を選んでも仕事はどうにかなると思うが――パーティーリーダーにそれを進言するのはなんというかエルとしても申し訳なかった。

 となれば答えは一つしかなく、とはいえそれもなぁ、と思わなくもなくもない……が、どうにかなっかぁ、とも思ってエルはアジェリアンに顔を向けた。


「あー……セイネリアの奴に話聞けってぇのは俺がどうにかすっから、ここはもう、ヴィッチェに言いたい事言わせるしかねぇんじゃね?」

「いやそれはマズイだろ、これでセイネリアまで不機嫌になったら俺も困る」

「あー……いやそらねぇと思うぜ?」


 あの強面の極悪男は、幸いな事にいくら罵られても馬鹿にされても怒る事はない。理にかなった意見ならとりあえず聞くだけ聞くし、理不尽な感情任せの話なら聞き流すだけだ。その結果ヴィッチェが余計怒る事になるかもしれないが、溜めて険悪になるくらいなら吐き出して貰ったほうがマシだと思う……いや、思いたい。


 かくして、食後に話をさせよう、という結論にエルは思い至ったのだが。

 ……その思惑には思わぬ邪魔が入ってしまった。


「失礼、こちらにいるセイネリア殿にお話があるのですが」


 恰好で騎士団員とすぐ分かる男は、サーコートの胸のマークからすればこのバージステ砦の兵だろう。

 食事中にやってきたその男が、エルより先にセイネリアに食後の約束を取り付けてしまった為、結局隊の中に嫌なギスギス感を残したまま……セイネリアがその話から帰ってきてすぐ、朝の訓練からそのまま偵察に駆り出される事になってしまったのだった。



次は偵察のお仕事シーン。

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