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黒の主  作者: 沙々音 凛
第七章:冒険者の章五
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7・合流

 後衛部隊は思ったよりは近くにいた。

 いや、合流した時にはそう思ったが、それは後衛部隊側がこちらに近づいてきていた、というのもあったらしい。


「とりあえずお前らは中入ってちっと休め、怪我してンなら治してもらえっ」


 エルが飛び出してそう言ってきたから、セイネリアとアジェリアンは合流してすぐ陣の中心に入った。

 実を言えば蛮族との戦闘の場合、耐えるだけなら後衛部隊はかなり強い。魔法による防御、回復、攻撃補助があれば、護衛についている者たちだけでも相当数の敵に囲まれても持たせることだけは可能であり、だから散り散りになった場合はまず生き残っているだろう後衛部隊を探して合流するのがクリュース軍では決まり事となっていた。


「すまん、お前ら二人で敵をひきつけてくれてたんだってな」


 座りこんですぐ、そう言ってアジェリアンの傍に寄ってきた男は鎖帷子の上に騎士団員の印であるサーコートを着ていた。


「今回の貸しは高いぞ。で、状況はどうだ?」

「こっちの部隊が襲われた段階で、偵察部隊は合流を諦めてわざと散開して逃げたらしい」

「連中は馬だろうからな、それもありだろ」

「あぁ、で、半数はこっちに合流してる。もう半数は砦に向かったようだが、全滅はないだろ、一人でも戻れれば援軍を呼んでくるのは間違いない」

「救援要請の光石は投げてる、じきに救援はくるだろう」

「あぁ、だから俺たちはここで待ってればいい」


 アジェリアンは騎士の称号を持っている。騎士になったときに騎士団に3年程在籍していたそうだから騎士団員に知人がいるのはおかしくない。話し口調からすれば当時の同僚といったところだろうという騎士団員に、セイネリアは聞いてみた。


「こっちの連中はどれだけ合流できてる?」


 騎士団の男はセイネリアを見ると厳しそうに眉を寄せた。


「君らが抑えてくれたおかげでかなり助かったが……連中、騎士団の者を優先して襲っていたらしくてな、傭兵の方は8割がた合流できたが、グノー隊長とその隊の騎士団員は大半の行方が分からない。生きていればわかると……思うのだが」


 後衛部隊には目のいいものや、魔法を使う者が多くいる。確かにこの周辺で生きて戦闘中というのなら、その様子くらいは誰かがみつけているはずだった。


 今回の救援部隊として砦から出てきたのは2部隊、合わせて50人弱といったところだ。グノーというのはセイネリアのいた部隊の隊長ではないから、もう一隊の方の騎士団兵が壊滅状態というところかとセイネリアは考える。

 ざっと見渡したところ、今ここにいるのは40人弱というところだろう。偵察部隊の連中もいるから20人くらいは合流出来ていない事になる。

 敵の数はわからないが、この人数で後衛を囲む陣形が取れれば救援がくるまで耐えるだけなら問題はない筈だった。

 だがそう考えていたところで、にわかにまわりがざわめき始める。敵と対峙しているはずの外周を守っている連中から上がっている声に、セイネリアは耳を澄ませた。


「グノー隊長っ」


 その声を確認した途端、セイネリアは立ち上がって声が聞こえた方向に向かった。そうして見た光景は、セイネリアが予想した通りのものではあった。

 現状、どうやら戦闘は一旦止んでいて、蛮族達はこちらを囲んで遠回しに見ているような状態だった。その中でこちら側の者がみな凝視している敵の一角……そこには傷だらけで木にはりつけにされているどうみても蛮族ではない甲冑姿の男がいた。


――つまり、あれがグノー隊長様というところか。


 磔の男のそばにいる蛮族達は何かを叫んでいた。ただセイネリアに彼らの言葉が分かるはずはなく、周りを見渡す。


「奴らが何と言っているのかわかるやつはいるか?」


 聞いてみれば意外な人物がそれに答えた。


「……どうやら、今からあの隊長さんを殺すぞってことらしいね」


 赤毛の狩人がどうしようか、という顔をして言ってきたのを見て、セイネリアは口元をゆがませた。


「……なら、あの隊長を助ければ特別報酬は確実だな」


 言われたエーリジャが驚いて聞き返してくる。


「助けるって、折角の現在の陣形を崩す気なのか? ……それともまさか、君一人で突っ込む気、とか?」


 セイネリアは笑って答える。


「そのまさかだ。それと、お前にも期待してる」


 エーリジャは顔を引きつらせたあとに頭を抱えた。


そんな訳で次はセイネリア一人で突っ込みます。

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