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黒の主  作者: 沙々音 凛
第六章:冒険者の章四
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36・仲間

 エーリジャの仕事を発端とした貴族の陰謀劇潰しの仕事はどうにか無事に終了し、約束通りディンゼロ卿はセイネリア達3人の依頼完了書を事務局に提出してくれた。当のディンゼロ卿が別れ際まで上機嫌でいただけにポイントも報酬も十分すぎるくらいに入って、こちらの懐事情も冒険者としての評価も大いに潤った。

 ちなみに、どうしても内密に進めたい仕事の場合など、今回のように仕事の終了後に雇い主が依頼完了書を提出する事で後から依頼の仕事だった事として冒険者のポイントを貰う事も出来る。ただし当然それが出来るのは雇い主側が余程信用のある人間――つまり地位のある人間でないとならない訳だが。


 ともかく、仕事も終わって報酬も無事入ったというところで……それでめでたくこの仕事は終わりとなる筈だったのだが、少しばかり想定外の面倒な事態にセイネリアは直面していた。


「ちぇ、仕事だったならとりあえず声掛けてくれたっていいじゃねぇか。なんのために固定パーティの登録してんだよ、俺たちはさ」


 次の仕事の話をしようとして酒場に呼び出したエルは、事情を聞いた途端一言で言えば……拗ねた。

 成程カリンの予想通りだった訳だ、と妙に感心したセイネリアだったが、正直なところ彼がそこまで不機嫌になる理由が分からない。


「貴族どもの胸糞悪い化かし合い現場だぞ、お前は嫌いだし向いてないだろ」


 セイネリアとしてはそれだけの話で、別に彼の能力的にいらないと思ったとか等、見下したりした訳ではない。


「そンでやれる事あんならやるさ、別に好きな仕事ばっかやる訳じゃねーぞ俺だって。どうしても無理なら断る事はあるだろーけど……でも組んでるんだからさ、やっぱ一応聞くだけ聞いて欲しかったさ」


 椅子に後ろ向きに座っている彼は、いいながらいじけたように椅子の背に顎を乗せる。面倒な男だ、とは思いつつも彼の言う事に一理あるのも分かるので、セイネリアとしては今後はどんな仕事でも声だけは掛ける事にしようとは思いはする。


「まぁそりゃぁ……寂しいよね、仲間ハズレにされた気になるのは仕方ないし」


 同じくここに呼び出したエーリジャが苦笑して言えば、エルが、だよな、と力強く返した。今日はエルに彼の紹介もするつもりだったのだが、彼と会ったいきさつを話して先日のワネル家での事を話した途端にエルが拗ね出して……この状況になったのだ。


「そういう意図はないが」


 セイネリアが当然だろという顔で言えば、エルが噛みつく勢いで返してくる。


「あぁお前はそうなんだろうけどさ、いやそういう奴だってのは分かってるんだけどな、そんでもよ……一応仲間だって思ってた奴が、知らない内に知らない仕事受けてもし何かあったら悔しいじゃねーか。俺がいたからどうにかなったとかねぇだろうけど、何も出来ないとこで知らない内にってのが嫌なんだよ俺は」


 それでセイネリアも思い出した。確かにこの男はそれだけの理由で、あのドラゴンの洞窟で先に逃げずにわざわざ綱から手を離して戻ってきたのだ。

 セイネリアは軽く笑う。

 そうして何も言わず心配そうに黙ってみているカリンの頭に軽く手を乗せた。


「確かに、お前の言った通りだったな、カリン。もう少しお前の言った事をよく考えればよかったようだ」


 自分みたいな腹黒い人間にしては、随分と仕事仲間はお人よしばかりが集まったものだとその事に気づけば妙に笑える。能力と信用で選んだ筈が、随分と自分とは違う善人達と組む事になったというのはなんとも皮肉なものだ。


「悪かったエル、次からは余程事情がない限り、どんな仕事でも受けたらお前にも声を掛ける」


 それで、おう、と返してちょっと機嫌を直した彼を見てから、セイネリアは現在のパーティメンバーである彼らに向けて言った。


「さて、なら仕事の話に入ろう。次の仕事現場はバージステ砦、つまり傭兵としての戦闘参加だ。危険なのは当然だし、人間相手が嫌なら断ってくれても構わんが……」


 戦場へ行くというのが分かった途端、彼らの顔色が変わった。


これでこの章は終わり。


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