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黒の主  作者: 沙々音 凛
第六章:冒険者の章四
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26・暗殺者達の最期

 ランプ台の明かりが復帰した丁度その時、襲撃者の一団を片付けたセイネリアは彼らがやってきた方向へ行って調べてみた。特に何かあった形跡はなく、抜け道などからここへ侵入したとは考え難かった。勿論魔法使いも見つからなかったが、あの魔法使いが奴らの侵入の手助けをした可能性は高いと思った。とはいえこれ以上ここを調べていてもどうにもならない、それよりも警備兵が戻って来る前に立ち去るべきだと判断したセイネリアは、そこで一旦パーティー会場の方へ戻った。


 ランプ台の明かりが戻った会場は、何事もなかったように変わらず貴族達の馬鹿騒ぎが続いていた。

 その中でセイネリアは、ある人物を探した。

 ランプ台の火が消えた時、魔法使いに向かって合図をしていた人物。魔法使いが見つからないなら、そっちの人物を探す方がいいと判断したのだ。

 男は思った通りまだ会場にいた。配置されていた場所からしてすぐ消えれば怪しまれるだろうし、まさか自分の役目を誰かに見られているとは思っていなかったのだろう。


『さっき魔法使いに合図してたな、貴様の飼い主は誰だ?』


 警備兵のフリをしている男の背後に立ってそう声を掛ければ、男は動揺をみせずになんのことでしょうととぼけた。だが、ならば一緒に他の警備兵のところに行ってお前の素性を証明してもらうおうと言えば、男はそれには、はい、とは答えられなかった。


『何、なにも貴様を捕まえようって訳じゃない。貴様のご主人様が気前のいい人間なら逆に協力してやってもいいんだがな』


 こういう時は馬鹿のふりに限る。おこぼれに預かりたいだけのごろつきと思わせ、こちらを見下してくれれば勝ちだ。


『長く話す気はない。ちょっとだけ話に付き合ってくれたら、他の連中には黙っていてやるさ』


 そうして男を庭の隅に誘い出し、さてどう吐かせてやろうかと話だしたところで――男は突然苦しみだすと、喉を掻きむしって絶命したのだ。

 魔法か薬か、口封じの為に何かされていたらしいというのは分かるが、殺させてしまった段階で手がかりは途切れてしまった。

 仕方なくセイネリアとしては、こうなればあとはこの男の死体をディンゼロ卿にでも引き渡すか、と死体を隠す場所を探していたところでカリンが戦っているのを見つけた、という訳である。


「この女は?」

「ランプ台が消えた時、ナーディラ嬢を襲撃した者がいました。その者とおそらく同一人物です」

「成程、見たところプロだな」

「はい」


 襲撃にきた一団は雑魚共だった。だがこの女はカリンと互角に戦っていたところからして本職の暗殺者だろう。更に言えば、死んだこの男も所作からしてプロらしいとセイネリアは思っていた……が、ふと思いついてセイネリアは急いで倒した女の傍にしゃがみこんだ。


「……やはりか」


 確認すれば、死体の下になっていた女は死んでいた。

 倒れた時の打ちどころが悪かった、という事もない。セイネリアは気絶すればいい程度の力しか込めていないし、本職の暗殺者が倒れた程度で死ぬ程まぬけとは思えない。何より勝手に死体になったこちらの男の件がある、この女が仲間だったらしい事を考えれば同じような死に方をしてもおかしくないだろう。


「死んだのですか?」

「あぁ、口封じだろうな。予め成功できなければ殺すために何か……薬か、魔法でも仕掛けておいたんだろうさ」


 ここまで周到に手を回すなら、この二人はヴィド卿側が送った人間である可能性が高い。あの消えた魔法使いもその可能性は高いだろう。本来魔法使いは貴族の勢力争いなどに手を貸してはいけない事になっている筈で、ここは後でまた例の『承認者』にでも聞いてみるかと思うところだ。

 雑魚の一団はおそらく警備兵たちが捕まえたと思うが、ヴィド卿絡みで何かが分かる事はないだろうとセイネリアは思う。庭の影で転がってるだろうセイネリアが事前に射た連中も、捕まえたところでノウスラー卿とグクーネズ卿、いいところゼナ卿の名前が出て終わりだろう。


とりあえずセイネリアが出て来たのはこういう理由という事で。


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