表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の主  作者: 沙々音 凛
第六章:冒険者の章四
199/1198

24・暗殺者との戦い1

 余興が終われば、少しだけランプ台の明かりが落とされて楽団が演奏を始めた。パーティ会場である中庭の中心周辺には広く空いた空間があり、そこにきらびやかな服装の人々が集まって優雅なダンスが始まった。それを横目で見てこっそりとカリンは会場を抜け出す事にした。勿論、セイネリアを探す為に。


 彼に何かがあったとは思えないが、大きな事件が起きずに明かりが復帰すればこちらの仕事は基本成功で終わった筈であった。それなのにいつまで経っても帰ってこない彼にカリンが不安になるのは仕方ない。

 一応、明かりがついただけではなくワネル卿も先ほどの件で警戒して孫娘と自分の周りに警備兵を配置しているのは確認した。そしてなにより、元凶と思われるゼナ卿の姿が見えないところからしてここで彼らを守る仕事は終わりにしてもいいだろうとカリンは判断する。


 人々の群れを抜ければ少しほっとして、ドレスを脱ぐかどうかカリンは迷う。

 ただ考えれば、ドレスを脱いだ動きやすい格好で歩いていればどう見てもここでは不審人物だが、この恰好なら人に会ってもどうとでも誤魔化せるという利点がある。だから余程の理由がない限りはこの恰好のままがいいと判断したが……それにしても動き難くて仕方がないのには辟易してしまう。

 庭の外れを彼を探しつつ歩いていたカリンだが、ちょっと油断するとドレスが植木にひっかかって音を立てては苛立つ事になり、自分の未熟さに悔しくなる。この恰好でも普段の動きが出来るようにならないと意味がない、と帰ったらワラントに相談してみようかとも考える。


 だが、そうして人気のない庭の隅を見て回っていたカリンは、ふいに殺気を感じて身を屈めた。そこへ刃物の煌めきが走る。屈んだまま相手の足を払えば、襲ってきた影が引いてカリンはその姿を確認することができた。

 おそらく、先ほどナーディラ嬢を襲った刺客の女だろう。

 いくらカリンでもあの暗闇では相手の顔までは見れなかったが、この殺気といい、速さといい、あの時と同一人物とみて間違いないと思う。

 女の体が音もなく動き、一瞬にして目前まで迫ってくる。

 持つ短剣の切っ先が、カリンの首を斬ろうと横一直線の線を描く。それをカリンは後ろに引いて避けたものの女は一歩踏み込むと共に再び短剣で首を狙ってくる。それを更に引いて避けはしても女はまた一歩前に迫ると同時に剣を突き出し、カリンもまた避けて――とそれを繰り返す事しか出来ない。当然、カリンの体はどんどん後ろへと下がっていくしかなく、逃げ場はどんどんなくなっていく。

 避けながらも手にナイフは用意してはいたが、これで相手の武器を受けるのは難しいと判断せざる得なかった。先ほどの暗闇では、向うも隠密行動重視でこちらのナイフとほぼ変わらない小型武器だったから受けられた。更に言えば先ほどは着ていたドレスも向こうは脱いでいて、服装的にもこちらが不利だった。


 相手がこちらを殺そうとしてくる以上、避けるだけで切り抜けるのは難しいだろう。いっそ悲鳴を上げて警備兵のところまで逃げてみるべきかとも考えたが、それでは騒ぎにしたくないという主の意図を台無しにしてしまう可能性がある。


 カリンは考える、ここを切り抜ける方法を。

 相手を倒す事は考えなくていい、逃げられればそれでいい。ドレス分の動作の遅れは仕方ないとして、せめて足に隠してある短剣を手に取れれば――考えて、相手の短剣を後ろに避けるのではなく思い切って身を屈めて避け、そのまま相手の腹に体当たりを仕掛ける。相手がプロならそれでも動揺せず短剣を上から刺してくるだろうがそうはさせない、カリンはドレスのスカートをまくり上げるついでに大きく上へと跳ね上げた。


 それで一瞬、相手の視界がドレスで遮られる。

 ただしほんの一瞬だけ、だがそれで構わない。


 足の短剣を抜いたカリンは直後に引いて、追撃の相手の剣を受けて弾く。その反動でさらに引いて、相手と一定の距離を取った。



戦闘途中で終わってすみませんです。次の2でこの女暗殺者との戦いは決着つきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ