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黒の主  作者: 沙々音 凛
第六章:冒険者の章四
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5・西の下区にて2

「だからぁ、ちゃんと話きけよ、いいかっ、まずそこの角をさ……」


 困る狩人に少し怒って説明しながら、子供の手は狩人の腰の袋へと伸びていく。まぁこの手の場所にいるガキの常とう手段だなと見ていれば、その手は袋を掴む前に狩人の手に掴まれた。驚いて顔を上げる少年に狩人はにっこりと微笑んだ。


「うん、悪いけどこれはあげられないんだ。道案内のお礼はこっちでいいかな?」


 言って狩人は掴んだ子供の掌を広げさせると、その上に小さな包みを置いた。ばっ、と子供はそれを奪うように掴むと、すぐ急いで逃げた。


「おいっ、ごめん、結局角を曲がってから二つ目の十字路を左でいいんだよねっ」


 勿論子供は足を止めない。振り向きもせずすごい勢いで走り去っていく。

 途方に暮れたようにそれを眺めて立ち尽くす男を見て、セイネリアはこの男に対して何度目か分からないため息をついてから彼の前に出て行くことにした。


「こんなところで何をしてるんだ、お前は?」


 声を掛ければ振り向きざまに、赤毛の狩人は大声を上げた。


「あー……いたいたっ」


 セイネリアは思わず眉を寄せる。狩人は何故か笑った。


「良かった無事だったんだ」


 どうやらこの男は自分を探していたらしい、という事がその言葉で確定する。


「いやー、こちらについてた尾行が一人君について行ったみたいだから君を追いかけたんだけどね、初めて来たからこの辺りの道がこんなに入り組んでるなんて知らなくて、気付けばすっかり迷ってしまってたんだ」


 セイネリアは見せつけるようなため息とともに軽く頭を押さえて見せた。


「つまりお前は、俺を追いかけて来たこともないこの区画に入ってきたのか?」

「あぁ、君に迷惑をかける訳にいかないだろ?」


 なんだこの能天気男は――正直セイネリアでさえ本気で頭が痛くなった。

 ただとりあえずここでいつまでも立ち話をしている訳にもいかないので、セイネリアは男に手招きをして歩き出す。


「こい、表通りまでなら連れていってやる」

「助かる。……ところで尾行は?」

「とっくに撒いた、そっちもいないようだが」

「うん、迷ってる間に撒いてしまったみたいだね」


 それは良かったな、と返しながらセイネリアはこの間抜け過ぎる状況にいろいろ呆れていた。いくらそれなりに腕がある冒険者であったとしても、今まで来た事のないだろうこの周辺に自分を追いかけて入ってきたというのは考えなしすぎる。今まで入ってこなかったという事はここがどういう場所かを知らない訳ではないだろうし、考えなしなのか能天気なのか自信家なのか、正直セイネリアでもこの男の本性は掴み切れないと思った。


「お前は、尾行がついてるのが分かっていたのに俺に話しかけたのか?」


 だから一応、もしかしたら本当は計算高い男の可能性も考えてそう聞いてみる。


「あぁ、例の仕事がヤバそうだって思ったのはソレもあってね」

「なら俺に話した時点で、俺も尾行されるのは当然だろ」

「いや……そうなのか?」


 この男の思考はどうなっているのか……セイネリアは再び頭を押さえた。


すごいお人よしだけど腕は相当いい、という狩人さんなんですね。

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