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黒の主  作者: 沙々音 凛
第六章:冒険者の章四
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4・西の下区にて1

 首都セニエティのある土地は北東から南西方面に掛けて傾斜があって、住む人間のランクもその土地の高さに割合比例している。街全体を十字に切る大通りで街を四区画に区切れば、北東のエリアが一番金持ちが住んでいて、続いて北西、南東、南西と住人のランクは落ちていく。そういう事情ももあってか区分して言う時の名称では、東西はそのままだが南北は下区と上区という言い方をされ、基本的に下区の人間はランクの低い人間が住んでいる事になっていた。とはいえ南周辺でも流石に人目に触れる大通り沿いは別枠で、その周辺は別段危険だったり住人の質が悪いなどという事はない。特に国内の別の土地からくる人間は南門から入ってくる事が多いし、入ってすぐの場所には冒険者事務局の本局がある。だから最南端である南門の辺りもまた治安はきちんと保たれていた。


 だが、南門から西の方にくだって途中の段差を下りれば一気にこの街の暗部である貧民街となり、まともな人間はまず入って行く事はない。

 セイネリアのように自分の身を守れる自信がある人間は割合仕事の話などで入っていく事はあるが、用がなければ進んで行きたいと思うところでないのは確かだった。


――まぁ、ここまでは想像通り、か。


 その西の下区――ここは道や建物の整備が放置されている為、広い道がほぼなく狭い通りが入り組んでいて人を撒くには都合がいい――その路地裏で、酒場を出たところから尾行してきた男をかわしてセイネリアは考える。


 貴族の陰謀劇がらみ、となれば接触したこちらに尾行を付けられるのは想像出来た。ただ尾行してきた男はそこまで手慣れた者ではないというのは、この区画に入っただけであっさりと撒けた時点で分かる。

 だからおそらくその雇い主もそこまで力のある者ではない筈、とセイネリアは推測する。あの狩人を雇ったノウスラー卿は、宮廷貴族としてそこそこの位置だが悪い話ではその名をあまり聞いた記憶はない。主だったシェリザ卿は野心家であったから、同じく野心家であったり、注意しなくてはならない陰謀劇でおなじみの貴族の家の名はよく口に出していたが、少なくともそれらの中にノウスラー卿の名前はなかった。

 だからセイネリアの認識では、あまりその手の陰謀劇に参加しないタイプの貴族だったのだが……あの不慣れな尾行者を考えれば、その飼い主はノウスラー卿自身か、彼と同等、もしくは同じタイプの貴族だろうと考えられる。


――相手がこの程度の貴族なら、手を出してみるのもアリだが。


 貴族の陰謀劇に巻き込まれるのは危険ではあるが、その分見返りは大きい。金やポイントより、彼らとの繋がりを作っておけばあとでいろいろ使える。

 ただ相手がどんな連中でも軽く見てはいけない。貴族は縦横の繋がりが複雑で、ある貴族に恨まれたら全く関係ない他の貴族に狙われる可能性だってある。


 さてどうするか、と考えながら路地を歩き出したセイネリアは、そこで意外な光景を見て足を止めた。


「えーと、そこの角を曲がって二つ目の十字路を右に……だったかな?」

「違うよ、十字路を左、そこからまた二つ目の十字路を右に、だよ」

「ごめん、もう一度最初からいいかな?」


――何をやってるんだあの男は。


 酒場で別れたばかりの赤毛の狩人が子供に道を聞いていた。しかもよく聞けば子供は言う度に違う事を言っていて……だからつまり。

 途端、思った通りの事が目の前で起こった。


仕事話の前に狩人のちょこっとしたエピソードが入ります。


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