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黒の主  作者: 沙々音 凛
第五章:冒険者の章三
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31・裏

 治療にはそれなりの時間が掛かってしまった為、終わった頃には外もかなり薄暗くなってしまっていた。だから急いで全員下へ降り、ランプを着けて荷物整理をしたのだが、流石にいくら岩壁に隔てられていたとしても隣にいつドラゴンがくるか分からない場所に安心していられる訳もなく、そこから少し洞窟を下って小さいが外への穴が開いている広めの場所でその日は休む事になった。


 当然の事だがそこへ行くまでのパーティの空気が重苦しいものだったのは言うまでもない。完全にソレズドの仲間達とセイネリア側の人間との間には深い溝が出来ていて会話もほぼなく、ソレズドは負い目があるから行きのようにパーティーリーダーとして皆に指示を出せる訳もなかった。だからそこまでのパーティーへの指示は全てセイネリアがして、カリンやエルが文句を言わないのは当たり前としてソレズド達も文句ひとつなく大人しくしたがっていた。

 ただカリンとして不思議に思ったのは、彼らの企みについて報告したにも関わらずセイネリアはあまり気にした様子はなく、彼だけはソレズド達への態度も話し方も行きとほぼ変わっていないように見えた事だった。勿論もともとセイネリアは無駄に会話をする人間ではないので話したとしても一言二言だが、カリンやエルのようにソレズド達に明らかな敵意を向ける事はなかったし、嫌味の一つも言う事はなかった。

 それだけでなくさらには彼は、休む前の夕食時にとんでもない事を言いだしたのだ。


「とりあえず言っておくとだ、今回の件だが、俺は別に貴様達が今までどんな悪さをしてきたかを事務局に言う気もなければ、貴様達が俺を見捨てようとしたと訴える気もない」


 聞いた途端にエルが大声を上げた。


「なんでだよ、俺はともかくお前はドラゴンの前に置き去りにされたんだぞっ」

「だが死ななかった、おかげでドラゴン退治も出来たしな。なら別にいいじゃないか」


 どこか楽しそうに返すセイネリアの表情から真意は読み取れない。カリンは主に逆らう気はなかったがそれでも腹に据えかねるモノがあるのは当然で、大人しく黙ったままではいられず言った。


「ですが主、この先他に犠牲者が出ない為にも、彼らは罰されるべきです」


 セイネリアはそれに怒るでもなく不満そうにするでもなく、微妙な笑みを浮かべたままさらりと返した。


「出たらそいつがまぬけなだけだな、この手の連中はこいつ等だけという訳じゃない、警戒しないでカモにされる方が悪いとも言える」


 さすがにそれで割り切るのはどうかとはカリンも思ったが、もとより主の言う事に逆らうつもりはないのだからそれ以上何かを言える訳もない。カリンが引き下がれば、エルも嫌々という風を見せつつも引き下がって、ソレズド達の顔には明らかに安堵が浮かんだ。

 だが。


「何故だ。お前さんの事だ、裏があるんじゃないのか?」


 そう言って来たのは老神官のモーネスで、カリンは僅かに首を傾げる。なにしろカリンにとってはこの時点ではモーネスも被害者の側の人間だと思っていたのだから。


『あー……ジーサンが奴らの頭だってさ、こいつが言うにはな』


 カリンが戸惑っている様子が分かったのか、エルがこそっと言ってくる。カリンとしては驚くしかないが、セイネリアが言ったとなればそれは本当なのだろう。


「まぁ、裏はあるといえばある。ないといえばない。……俺には正義感なんてモノはないからな、わざわざ親切に他の奴らに貴様達が危険だと教えてやるような事はしないし、お前らのような存在は許せないから潰してやろうとも思わない。ただ俺は情報として貴様達の正体を知ってる。その情報が使える時には遠慮なく使わせてもらうし、使う機会がなければ使わないで終わるかもしれない、それだけの話だ」

「私を脅す気かね?」


 確かに、悪く考えればそうとしか取れないが、カリンは彼女の主がそんな小者臭い事をするとは思えなかった。セイネリアをみればいつも通り冷たい瞳で薄い笑みを口元に浮かべているだけで、完全にモーネス以下ソレズド達を見下して威圧していた。



この主人公に正義なんて言葉はないです。かといって悪にも興味ないですが。

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