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黒の主  作者: 沙々音 凛
第五章:冒険者の章三
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13・水晶魔鉱石

「成程、水晶魔鉱石、か……」


 上から見ていた時は見え辛かったが下に降りれば確かに分かる。その空間の下の方の岩肌には目を凝らせばキラキラと輝く透明な水晶の塊がところどころに見つけられて、それらが強い魔力を帯びている事がセイネリアにも分かった。

 だが直後にセイネリアは疑問に思う……何故ソレが分かったのかと。

 セイネリアは自分の保持魔力が低い事を知っている。昔娼館にきた魔法使いに言われたのだから間違いない。ここまで少ない事の方が珍しい、ともいわれたくらいだ。だから生き物の気配には敏感でも、魔力の気配には鈍感だという自覚があった。過去に魔力が強いと言われた魔石をみてもこんな感覚は感じなかった。だが今回は、実を言えば壁の向こうにいた時からこちら側に何か妙な違和感というか気になる感覚が既にあった。


――これも、魔槍の主となった所為か。


 分かれば分かったで便利ではあるが気味が悪いのは確かではある。ただ通常で使う魔法アイテムにはそこまで違和感を覚えないから、今のところは明らかに強い魔力だけが分かるのだろう。不便ではなくむしろ便利だからいいことはいいが、何か他に聞く事があった時にでもあの魔法使いに確認してみるか、と今は考えるのを止めた。


「さて、掘り出す前に盾出してくれ、術を入れるからな」


 すぐにソレズドがそう言ってきて、皆がそれぞれ持ってきた盾が彼の前に揃う。盾を持ってこいというのは事前説明で言われていた。何せ今回は火の神レイペの神官がいるという事で、盾に火の耐性をつけるから火を吐くエレメンサがいても対処出来る、と言う事になっていた。だからこの仕事にセイネリアが持ってきた武器も少し大きめの片手剣で、一応盾を持ったまま戦うつもりできた。もし威力的に問題があったとしても槍を呼ぶだけで済むから重い両手剣は持ってきていなかった。


「剣には掛けないのか?」


 術を施された盾を受け取るついでに、セイネリアはレイペ神官のエズレンに聞いてみる。


「掛けてもいいが、エレメンサ相手には逆効果になることもある。火を吐ける奴にふれた場合レイペの魔法は吸われるんだ」

「吸う?」

「火を吐ける奴は火の魔力を持ってる。だから同じ火系の魔法は吸われるんだ」

「吸う、というのなら相手の力になるのか?」

「そこまでは知らん、同じ属性の魔力同士がぶつかると強い方に吸われるらしい。本当に吸われて相手の力になるのかただの無効化かは実際分からないが、少なくとも武器に術を入れても他の魔物相手のように切れ味が増す効果は出ない」


 魔槍のせいで、セイネリアの中にも多少は魔法に関する知識がある――例えば魔法は基本、より強い魔法で消せる、とか。それは魔法使いでなくとも知っている者は知っている程度の知識だから魔法ギルドに睨まれる事はないだろうが、それを前提とすれば同系の魔法はより強い方に吸われる、というのもありそうな事ではある。

 すくなくとも、でっち上げの理由を言って術を使いたくない、という事ではないだろうとセイネリアはそう判断する。


「いいか、エレメンサが出たらまず俺が前に出てひきつける。攻撃はグェン、ウィズラン、セイネリアに任せる。そっちの彼女はセイネリアの援護、エルは爺さんの護衛をしつつ術の維持だ」


 名を呼ばれたソレズドの仲間の戦士二人が返事をして、少し遅れてセイネリアも了承を返す。カリンとエルも続けて返事をすれば、後は各自鉱石集めに入る事になった。だが、そこで別れて各自壁の魔石を物色しだす中、レイペ神官のエズレンがぴったりソレズドにくっついていくのがセイネリアの目に入った。


「なぁに、あいつは囮役をやる代わりに一人だけきっちり魔法で守ってもらうつもりだからレイペの神官を連れ歩いてるのさ」


 ソレズドとレイペ神官を見ていたせいか、老神官がこちらの横を通り過ぎるついでにそう言ってくる。それでセイネリアがモーネスに視線を移せば、リパ神官の老人は既に魔石の最初の一つを取り出したのか、腰の皮袋に入れているところだった。

 魔鉱石の採取は実は意外に簡単である。同じく魔力を帯びている魔石を当てて軽くこすれば、魔力が共鳴しあって後はぽろりと岩盤から外れる。問題となるのは石が手で簡単に受け止めきれないような大きさだった時で、その場合は剥がれ落ちたそれを受け止める為の準備が必要となる。ただ幸い……というべきか、そこまでの大きさのものは見当たらず、各自片手に共鳴用の魔石をもって水晶魔石を採取していた。

 セイネリアは一通り辺りを見渡してから、自分の身長でぎりぎり届くような高めの場所にある石を主に集める事にした。なにせこの中ではセイネリアが一番身長がある、下にあるものは他の連中に任せればいい。

 だが、そうして順調に3つ程の石を取ったところで、セイネリアは聞こえた羽音のような音に、外へと繋がる穴の方を振り返って目を細めた。


「あれは……エレメンサか」



やっとこさ次はエレメンサ登場。

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