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黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
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27・魔法使いの正体2

 聞いた途端、魔法使いの顔がぐっと顰められる。


「それお前が知る必要はない――というか、お前がその意味を分からないというなら尚更いう気はない」

「どういう意味だ?」


 だが魔法使いはそれには返事をせずに得意げに笑うと、杖を掲げて何かを唱えた。

 反射的にセイネリアは腰を落として辺りの気配を探り、警戒する。


「何、出さないなら出さなくてはならないようにするだけだ、ここなら他の連中を気にする必要もない」


 暫くして、何かが近づいてくるのをセイネリアはまず耳で気づいた。地面の草が踏まれる音だけでソレのおおよその大きさとどれくらいの速さでこちらへ向かっているかはほぼ分かる。狩をしていたのもあってすぐに用意出来る弓を手に持ち、足音に耳を澄ましたままその音を逃さないように極力音を立てずに矢をつがえ、構える。

 近づいてくれば見るより先にやはり音だけで敵の大きさやタイプが分かる。そうして姿を現した途端、セイネリアはそれに向かって矢を放った。

 矢は確かに当たった。

 けれど刺さる事はなかった。

 ソレの体にまともに命中したのに、矢はそのまま弾き落とされた。


――成程、あの槍でないと刃が通らない程硬い敵を呼んだというところか。


 化け物の姿を一言でいうなら、やたらごつい鱗を全身に纏ったデカいトカゲだ。ただ顔はいかにもトカゲなのだがトカゲと言い切るには背中が大きく膨らんでいるからシルエットだけでいうなら亀の甲羅を持った大トカゲとでもいうところか。

 歩く速度は速いとは言い難いが遅いという程ではない。見たところでは武器は鋭そうな足の爪といったところか。それとも膨らんだ背中に防御以外の意味があるか。


 セイネリアは今度は剣に持ち替えて構えた。いくら硬いといっても剣が通る個所がまったくないという事はない筈で、手足の付け根、腹、喉、その中のどれかは刺すくらいは出来るだろう――だがそう思った直後、化け物はその場で頭を下げると体を丸め、セイネリアに向かって転がってきた。

 思惑が外れて、セイネリアは一度それを避ける。

 避けた後剣で叩ける程度の速度ではあったが、どうせ刃を弾かれるだろうと思えば手を出す気にもならない。ただセイネリアを通り過ぎた後、止まって一度丸くなるのをやめてからこちらへ向きを変えてまた丸くなった化け物を見て、セイネリアは剣を鞘に入れた。

 ちらと見た魔法使いはやたらと機嫌のいい笑顔で、セイネリアは思わず鼻で笑った。


――俺が槍を呼んだと思ったか。


 だがそうじゃない――セイネリアは口元に薄ら笑みを浮かべると、また丸くなって転がってきたそれを避けながら背のマントを外して手に取った。それからまたソレが方向転換をしている間にそこそこの大きさの石を拾うとマントを茶巾状にしてその中に入れた。……これで簡易的な打撃武器になる。


「なんだ、何をする気だ?」


 一変して驚きの声を上げた魔法使いにセイネリアは喉を揺らす。

 ……実を言えば、そこまでしてセイネリアは槍を呼びたくなかった、という訳ではなかった。魔法使いがちゃんと目的を話していれば余程納得のいかない理由でもなければ出して見せるつもりはあった。だが力で従わせようとしたからその鼻を明かしてやりたくなっただけだ。

 そこで丁度方向転換が終わった化け物がまた転がってくる。

 それをやはり避けたセイネリアは、今度はそのままその化け物を追いかけた。そうして、一度止まって丸まっているのを解除したソレの頭に向けて思い切り、布に入れた石の武器を打ち付けた。


「おい、貴様何を……」


 そもそも単純な話、硬いなら斬ろうとしなければいい。

 刃の通らない全身甲冑プレートアーマーの騎士に有効なのはメイスやハンマーなどの打撃武器というのは誰もが知ってる事で、そして生物なら頭に強い衝撃を受ければ無事ではすまない。

 思った通り丸くなることも出来ず、気絶したのか動けないでいる化け物に更にセイネリアは布で包んだ石を打ち付けた、それが完全に白目を剥いて口を開き、まったく動かなくなるまで。



まぁここの戦闘は魔法使いを馬鹿にするためにやってるだけのおまけ的なものなのであっさり終了。


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