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黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
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23・戦闘終了


――慣れればこの程度のズレは修正出来る、が……。。


 やはり使えない、としかセイネリアは判断せざる得なかった。


「さぁこい化け物っ」


 楽しそうな声が聞こえて、セイネリアはちらと脳筋男の方を見る。

 今回の敵はぱっと見だと単なる野犬の群れである。とはいえちゃんと見ればそれを率いているのは魔物と言える大型の犬であることが分かって、例の脳筋男は目立つそれに向かっているところだ。そうなれば残りはただの野犬であるから、セイネリアはそれがとびかかってくるタイミングに合わせて一匹づつ潰していくだけの作業ではある。……だからこそ、こんな調整をしている余裕があるのだが。


「うおぉぉぉおおっ」


 派手に声を上げる男に呆れながらも、とりあえず心置きなく化け物と戦えるよう、それ以外の雑魚をセイネリアは掃除する。その程度は動きのズレがあっても問題はない。後ろの弓役も所詮取り巻き処理と分かっているから、脳筋男にのんびりヤジを飛ばしつつその周りの雑魚を射っていた。


 他の犬より一回り大きいそれが見ただけで化けモノと言えるのは、その体表が犬らしい毛ではなく鱗に覆われているからだ。ところどろこに毛が見える部分もあるのだが体の殆どが鱗で覆われたその姿は、爬虫類と犬の間の生き物というようだった。

 ただその姿通りに犬に比べて体は硬いらしく、弓役が援護で飛ばした矢は体の端に当たったせいもあって刺さらずにかすって逸れてしまった。


「おいっ、手ぇ出すなっ、これは俺の獲物だっ」


 矢の援護に男が怒った事で、後ろの弓役は肩を竦めて手を下した。

 本当に馬鹿だと思いつつも、セイネリアはあの男が負けるとも思っていなかったので特に何も言わなかった。あの男の得物は斧であるからあの化け物程度なら刃が通るだろうし、実際言うだけあって図体の割りに動きは悪くない。あの程度なら勝てるだろう、と思っているからセイネリアは大人しく雑魚相手をしているのだ。

 男に化け物が飛びかかってくる。犬型であるから当然噛みつきにくるのだが、男は左腕につけた小型盾でそれを叩き落とした。すかさずそこで斧を振り落とすが、さすがに化け物もその時にはすぐ引いている。だから今度は男が飛びかかっていけば、化け物は回り込んで飛びつこうとして――……。

 ぎゃん、と犬らしい声が聞こえて化け物は地面にたたきつけられた。

 その後すぐに上から斧が振り落とされ、次の音は化け物の断末魔の声となる。


――馬鹿だが言うだけの腕はある。……いや、あれは野生のカンという方か。


 斧とはいっても片手斧は小回りが利く。化け物が回り込んでくるのを予期していた男は、視線を向けずに横から来た化け物を斧の背で叩き落とし、そのまますぐにその刃を振り下ろしたのだ。


「ふははははっ、どうだ俺様の力はっ」


 リーダーが倒れれば雑魚は逃げだす。戦闘が終わったのもあってポーズまで取っている脳筋男に、後ろの連中が半分馬鹿にして拍手を送っていた。

 馬鹿は馬鹿だが戦闘だけなら使えるのは確かで、今までの敵も一番強敵そうなのはこの男が倒していた。セイネリアとしては本気で危ない敵なら手を出す気でいるが、この男で間に合うのなら任せておくことにしていた。どちらにしろセイネリアにとってはこの男で勝てる敵なら雑魚である事に違いはなく、それなら『戦いたい』と思うような相手ではない。



少し短めですみません。

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