表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
123/1196

15・突破1

 太陽が頂点を過ぎ、少し降り始めてくる時刻。

 見張りを買って出ているセイネリアは、不気味に沈黙する辺りを見つめてからこちらの陣内を見た。


「おい、誰か砥石になるモンもってねぇか」

「待ってくれ、こっち終わったら貸せる」

「ナイフでもいい、誰か余分に武器もってる奴いるかー?」


 騒がしく声を掛け合いながらも、武器の手入れと準備をしているのは戦闘職の者達。数少ない術がメインの連中は逆に休憩中で、治癒専門である唯一のリパ神官は仮眠をとっていた。皆が皆、生き残りを賭けた戦いの為精一杯の準備をしている最中で、今のところ士気は高い。


 今すぐ、とは言ったが実際に行動を起こす前に各自準備する時間を考えて、ここを出て行くのは先ほどの話し合いから少し後……太陽が向こうにある目立つ木のてっぺんに掛かったらという事になった。それまでに武器の準備を整えて食事を済まし、万全の態勢で臨めるよう指揮官であるアジェリアンから皆に伝えられた。

 セイネリアは武器の手入れも必要がないという事で進んで見張りを引き受けた訳だが、それをあの上級冒険者の男は少し残念そうに了承した。おそらく彼としてはもう少し細かく作戦を練るのに相談したかったのだろうと思われたが、寄せ集めの連中にはあまり細かく言わない方がいいと思っているためそこは気づかないふりをした。


「そろそろ……だな」


 太陽は降りはじめて木にかかろうとしている。先ほどまであわただしく動いていた者達もほとんどがじっと動かなくなり、最後の時を覚悟して目をとじ体力の温存に努めているところで、休憩していた術者達は目を開けて水を飲んだり用を済ませていたりしていた。

 幸いな事に、まだ向こうから襲い掛かってくるような気配はない。空にシーレーンが飛んでもいないから、あれがまた出てきて魔物を扇動するとしてもそれまでにある程度は距離を進めるだろうと考える。


「時間だ、準備がまだの者はいるか?」


 アジェリアンが立ち上がって言えば、一斉に座っていた者達が立ち上がる。そこから何も言わなくても彼らは事前に言っておいた通りに陣形を作り、頼むぞ、とセイネリアに声を掛けて上級冒険者の騎士は下がった。


「走れっ」


 アジェリアンが怒鳴る。それでセイネリアを先頭に全員が走り出す。

 セイネリアの予想した通り、走り出してもすぐに魔物達は反応しなかった。静まり返った谷間の広い地を冒険者達は全力で走る。だがやはり走り出して暫くすればすぐにあの歌声のような鳴き声が聞こえてきて、周囲から一斉に魔物の声が沸き上がった。


「くるぞっ」


 走る間は多少陣形の乱れはあったが、敵が向かってくるのを見て足を緩めれば皆が陣形を整えながら敵に備える。

 最初の戦闘は、一番前にいるセイネリアから。

 例の実態のない魔物が実体がないからこそのスピードでとびかかってきたのを、セイネリアが槍の一振りで霧散させる。続いて、すぐにやってきた鳥のような化け物を叩き落とし、走ってきた頭が二つある大型の犬のような化け物を斬り捨てた。

 切れ味が良すぎる槍の斧刃は、大して力を込めなくてもその重みだけで振り回せばその程度の魔物の首は落とせる。へたに怪我をさせないように他の者には近づくなといってあるから、迷う事なく振り切れば一振りで2,3匹を始末することだって少なくない。

 だがそうして一人少し突出した状態で戦っているからこそ後ろの連中を置いていかないようにするのには気をつけねばならず、合間合間に後ろを確認する必要があった。


「くそっ」


 思ったより後ろとの間が空いていれば当然戻る。

 敵はセイネリアの槍を恐れているのか避けて後ろに行こうとしているものもいて、想定していた通りにこちらで前からの敵をさばき切れていなかった。

 だから下がって、指揮官であるアジェリアンに加勢する。


「すまんっ」


 三体受け持っていたうちの一体を斬れば、彼もさすがに即座に一体を落としてもう一体も続けて倒す。最初、セイネリアが先頭であるなら最後尾に行くといった男を、自分の後ろでフォローを頼むと言ったのはセイネリアだ。

 指揮官として、戦力として、彼を殺される訳にはいかないから傍に置いておきかったのと、こうして魔物がこちらを避けて後ろに回り込む事も考えていたからだが、それは確かに正解だったらしい。

 魔物が回り込むからその後ろの負担は増えるものの、流石に上級冒険者なだけある男は少なくともそれを耐えきってはいた。



こういう動いてるシーンで分割は心苦しいところですが、さすがに数回分かけさせて下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ