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黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
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10・危機

 翌日、この化け物退治が始まってから五日目。目立つ場所で暴れていた連中を大方倒したと判断した上層部は、隊を分けて、あちこちに散らばる樹海外の森や谷に逃げ込んだ化け物共の退治をする事を決定した。


 今回の仕事は国の募集だけあって騎士団員で構成された部隊が1つ存在し、そちらにつく3隊が本隊として一番広いロキリアナの森の担当となった。セイネリア達のいた隊は他2隊と共に、やはり多数の魔物が逃げ込んだと言われるカラリナ谷に行く事になった。

 一つの隊は大体10~20人が配置されていた為、谷行きとなった3隊の合計人数は50人近くとなる。これは本隊の次に多い戦力で、他は割合小さな森林や、街道の周辺に1,2隊単位で割り当てられる事になった。


 最初は、問題がなかった。

 谷を進めばたまに頭上や正面から化け物や大型動物が襲ってはきたが、狩人達を中心とした索敵役が術を駆使して敵を早めに発見していた事もあってか、不意うちを食らって隊列が崩れるという事さえなかった。

 ただ、問題は谷の先にあった開けた広場のような場所で起こる。

 最初、いかにも敵がいそうな場所なのにやけに静かな事を不思議に感じた者は何人かいたが、それでも誰も止めることなく広場の中心まで皆でのこのこ進んでしまった、それが間違いの始まりだった。

 そこで広場をぐるりと囲むようにあった木々の間から一斉に魔物が飛び出した。

 しかもその中に一般冒険者ならまず見ることがない、実体を持たないタイプの魔物が混じっていた事が問題だった。


「なんだこいつ、斬れねぇ、うわぁぁぁあ」


 武器でダメージを与えられないとなれば、大半の連中はそれだけでパニックに陥る。剣を恐れずぶつかってくる敵に、頭を抱えて逃げ惑う者が続出する、もはや隊列を維持するどころの話ではなかった。

 とはいえ、実体のない化け物――セイネリアも見たのは初めてだったが、聞いた事だけはあったそいつらは、よく見ればさほど恐れる敵ではないというのが分かる。実体がなく物理攻撃が効かないという事は向こうもこちらを攻撃出来ないという事である。ただその白くのっぺりとした白い球体に手足が何本も生えているような恐ろしい姿と、耳障りな奴らの出す女の悲鳴のような声が酷く不快で不気味だというだけだ。

 誰かが叫ぶ。


「気にするなっ、こいつらは幻術みたいなものだ、襲ってきても害はないっ」


 そうは言っても、人間、大きくて不気味なものが自分に向かってきたら、分かっていても目をつぶるなり体が固まるなりしてしまうものだ。だからそこで目をつぶったところを別の魔物や動物に攻撃される、もしくは実体のない魔物だと思って放置しようとしたらそれと重なっていた別の魔物に襲われる等、害のない筈の敵でもいるだけで被害は馬鹿に出来ない状態になっていた。

 あちこちで悲鳴が上がる、バラバラに逃げ惑う連中がまともに戦っている連中の邪魔をし、どちらも怪我を負うというバカバカしい事さえ起こる。

 そんな中、少しは頭が回る連中が打開策を見つけ出した。


「目ぇつぶれっ」


 言うと同時にそこで一瞬強い光が弾ける。それがリパ信徒の術かそれとも代わりの光石かはしらないが、強い光が消えた後にはその周囲にいた例の実体がない連中は消えていた。


「奴ら光に弱いぞっ」

「集めろっ、そしたら俺が術で消すっ」


 どうやらリパ信徒がいるらしい。なら光石の数を気にしなくても良さそうだ、などと考えながらセイネリアは目の前に迫ってきた敵を斬る。白いふわふわと浮かぶ化け物は斬られて姿を保てなくなり、まるで空気に溶けるように消滅した。


「お前のそれ……斬れる、のか?」


 助けられた男が驚く。セイネリアは無言で次の敵に向かう。手に持つのはあの槍――混戦でもそれなりに場所が確保できそうだからとここで魔物が湧いた途端に呼んだのだが、魔槍というだけあって魔力を纏っている所為か例の連中もこれなら斬ることが出来た。これは想定外の幸運で、おかげでセイネリアは槍に変えてから何も考えず事務的に敵をつぶす事に専念できた。



ここから危険を抜けるまでは暫く続きの話になります。

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