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黒の主  作者: 沙々音 凛
【番外編:或る女の願い】
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59・地下へ

 朝になったため明るくなった屋敷内は、賊共がいなくなったのもあって静かだった。

 セイネリアとセルパはディタルから聞いた、捕まえた連中を入れてある地下の部屋へ向かって歩いていた。ヘタに他の連中に何か言われてついてこられたら面倒だから急いだ様子は見せないようにしているが、セルパのいかにも『これから大きい仕事をしにいく』のが分かる気合の入った顔は言っても無駄だから諦めた。


「な……なぁ、もしかしたら捕まえた奴全員と戦う事になるかもしれないんだろ? だったらあのすごい槍を持ってきた方が良かったんじゃないか? なんなら取りにいくか?」


 1階にきたところで、セルパがやけに目を輝かせて言ってそう言ってきた。セイネリアは思わずため息と共に返した。


「あれは呼べばくると言っただろ」

「そうなのか?! って、そうか、言ってたっけ……」


 魔槍は現在、庭の植木の中に隠して置いてきていた。どうせ呼べばやってくるし、誰かが見つけたところで持っていける訳もない。それは部屋に戻る時に説明はしてやった筈だがこの男は忘れたらしい。


「どちらにしろ、部屋の中が余程広くでもない限り出来ればあれは使いたくない。それにあれを使うと手加減出来ないんだ、今生かして捕まえてる連中をこれ以上減らしたくないだろ」

「あーそうか……」


 何故かセルパは明らかにがっかりした顔をする。

 勿論、少しでも危険そうだと判断したら迷わずに呼ぶつもりはある。ただまともに使えない狭い部屋で戦う事になれば使いにくいからアテにはしない。

 賊がいなくなったせいかやけに静かで、朝になって明るくなったのも相まって平和そうな廊下をセイネリア達は歩いていく。ただ状況を考えると、この静けさはおかしい。警備責任者がいないのに探し回ってる人間がいないのは指示がなくてもあり得ないだろう。そもそもあれだけいた警備兵の数が激減している。外にいるのか、それともそんなに警備兵のふりをして潜んでいたのがいたのか――理由が分からないのも気持ち悪かった。


「何者だ」


 地下に向かう階段は上に向かう階段とは別の場所にある。階段前には流石に見張りが一人いたが、セイネリアの顔を見るとすんなり通してくれた。祭り前に一応あちこちに顔だけ出しておいた意味はあったらしい。とはいえこの兵も、敵ではないという保障はない。

 地下への螺旋階段は薄暗く、とはいえ一応ランプ台は一定間隔で設置されているから足元が見えないという事はない。地下に降りるとそこから続く廊下の先に扉が2つ。それぞれ前に人が立っていた。よくみれば……奥にいるのがロッダという男だと分かる。

 セイネリアは、向こうが何か言ってくるより先に声を掛けた。


「護衛に雇われた冒険者のセイネリアだ。悪いが、捕まえた連中に聞きたい事があってきた」

「許可はありますか?」


 手前の兵が即聞き返してくる。セイネリアはそれに困ったように肩を竦めてみせた。


「あいにく、許可をくれる筈の連中が今現在揃って行方をくらましてる。急ぎで確認したいから、悠長に見つかるまで待ちたくないんだがな」

「あぁ……確かに、そうですね……」


 警備兵はそこで思い出したかのように困った顔をすると、奥にいるロッダに視線を向けた。向こうはこちらをちらと見た後、忌々し気に舌打ちをした。


「旦那様の許可なしに勝手な事は出来ない」

「でも、急ぎだという事ですし……」

「もし、彼らが敵と繋がっていたら大変な事になる」


 いや、繋がってるのはあんただろ、という言葉は脳内だけにして、セイネリアはわざと残念そうに言った。


「分かった、なら無理はいわない。だが、こちらの仲間のリパ神官の爺さんがこっちに来ているだろ。捕まえた奴の治癒を手伝ってる筈なんだが……」

「あぁ、それならこちらの部屋に」


 手前の部屋担当の警備兵がそう言ってくる。やはり、思った通りだ。


「なら爺さんに会っていきたい。他の連中から伝言を頼まれてる」


 また兵士はロッダの顔を見る。


「あの……こちらの部屋は怪我人しかいませんし、リパ神官様方もいらっしゃいますし……」

「俺達を信用出来ないなら、なんなら爺さんと話してる間はあんたも中に入って見張ってればいい。少しの間なら、見張りはそっちのあんただけで大丈夫だろ?」

「あ、はい、そうですね、私が中で見ていますのでっ」


 親切な警備兵は、そうロッダに頼んでくれる。この男は例の連中と繋がっていないと判断して問題ないだろう。さすがにそれも拒否すると印象が悪いと思ったのか、今度はしぶしぶ、ロッダは了承の返事を返した。


次回から戦闘終了までは場面が切り替わらない予定。

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