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黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
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8・青い髪の神官

 化け物討伐の仕事が始まってから、四日目。


「おい貴様、これから会議だといったろ、何故集まってこない」


 偉そうな男の声に、木によりかかっていたセイネリアは隠す気もなく不機嫌な目を向けた。それで一瞬たじろいだ男は、だがセイネリアが興味もなさそうに目をつぶったことでまた怒鳴る。


「貴様、おいっ、聞いているのか? わざわざお前達の意見も聞いてやろうといってるんだぞ、何故こない」

「別に俺は意見なぞない。決まった事には従うからでなくても構わんだろ。そんな暇があったら少しでも休んでいるほうがいい」


 セイネリアのいる隊の隊長である男は、やけにやる気があってこうしてちょくちょく会議だといっては下の連中から意見を聞いていた。ただこれには理由があって、隊長になった者は下についたものからの意見で後でもらえる信用のポイントが変わるからだ。つまるところ『いい隊長だった』と言ってもらいたいから下からの意見も聞くというスタイルをとっているだけという訳である。そんな無駄な物に時間を割く意味はない。別に特別疲れているという訳ではないが、次の戦闘の為に寝ている方が有意義だというものだ。


「貴様っ、やる気がない、と評価につけてやるからな」


 当然、下の評価は隊長になったものがつける。ただその為にこの男の機嫌を取る気もならないから好きにしろと思うところだ。どうせ無事生還できれば貰える基本ポイントを考えれば、それで追加されるポイントなど誤差レベルだ。


「まーまー隊長っ、従うってならいいじゃないか。こういう仕事やってる奴にゃ大勢との話し合いを煩わしいって思う奴は結構いるしさ、人に合わせた付き合い方が出来るってのも上に立つ人間には必要だぜ。なにせこいつが戦力としちゃ頼りになるのは分かってるんだし、ここでこいつの機嫌を悪くさせたっていい事はないんじゃないかね?」


 そこで、どこか気楽そうな男の声が聞こえてセイネリアは薄く目を開けた。この男は同じ隊のアッテラ神官で、このやる気がありすぎる隊長をフォローしている姿をよく見かけた。実際、この手の仕切り屋は腕に自信があるもの程煩わしいと思うのが普通で、それでも問題が起こっていないのはこの男がフォローして回っている所為というのが大きい。


「まぁそうだな。……ただ会議に出ないなら決定した事に文句はいう資格がないからな」

「あぁ分かってる」


 どうせ出ようが出まいが決定は変わらないんだろ、とは口に出さず大人しく了承を返せば、それで不機嫌ながらも隊長の男は去っていく。セイネリアはそこから今度は視線をその場に残っているアッテラ神官の男に向けた。


「確かエルラント・リッパーだったか」


 聞けば、意外そうに男は驚いた顔をしてみせて、それから笑った。


「噂のセイネリアに名前を憶えてもらえたなんて嬉しいじゃねぇか、ま、俺の事はエルって呼んでくれていいぜ」


 にこりと笑う男は確かに人好きのするどこか愛嬌のある顔をしていて、割合小柄なところも人を警戒させないのだろう。人種が入り混じるクリュースでも珍しい青い髪というところからすれば国内や近隣国の出身ではないらしいが、言葉に不自然さはないからかなり子供の頃からこの国にいる事は分かる。


「……あぁ、ならエル、正直助かった、礼を言う」


 そうすれば更に男は目を丸く見開いて、それから今度は声を出して笑う。


「なんだあんた、思ったより付き合い易そうじゃないか」

「俺の事をそう思うのはお前くらいだろ」

「まぁ俺の信条として、礼を言える奴と謝れる奴は信用できるってのがあるからさ」

「成程」


 面白い男だ、と思うと同時に笑ってみせればアッテラ神官の男も笑って、彼の得物である長棒をくるりと回して肩に担いだ。



やっとこさ主人公サイドのレギュラーキャラ二人目が出せました。二人のやりとりは次で終わって、その次からまた戦闘になります。

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