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黒の主  作者: 沙々音 凛
【番外編:或る女の願い】
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51・偽物達2

 セイネリアは周囲を見る。倒した連中については既にカリンが全員を縛り上げていて、今はそれをひとまとめにしておこうと、もう一人の騎士団員姿の奴に先に縛った2人を引きずってきて貰っているところだった。

 警備兵にここが見つかった様子はなく、ジーナも何も言ってこない。ならばすぐここから移動した方がいい状態でもないだろう。

 セイネリアは一旦剣を腰に戻して、ルーテアに向き直った。


「あっちの裏切り者はディスティナンと通じてた。だからターゲットであるあんたが来たところでディスティナンの奴らを呼んだのさ。何か場所を知らせるような魔法道具でも渡されてたんだろ」

「つまり、ここに倒れているのはディスティナンの者という事でしょうか?」

「その通りだ。で多分、残って戦ってた連中はただの下っ端で、あんたを連れて逃げようとしてた2人は下っ端じゃなく本国の偉い人間と繋がってる。……まぁ、その下っ端じゃない方の、おそらくあんたの姿をしてたやつが、俺の予想では皆の姿を変えていた魔法使いだ」

「なんだって?」


 最後の魔法使いのくだりを聞いてすぐ声を上げたのはアードだ。彼は驚いて即、縛って転がされているルーテアの顔の者を見た。


「こちらに術を掛けたあと……入ってきていたのか?」

「姿を変えられるなら、あの混乱の中でいつでも入ってこれたろうな」


 言えば彼は、確かに、と呟いてよくよくその魔法使いと思われる者の顔をみようとする。いくら見ても見ただけでは本物かどうかの区別はつかないだろうが。


「顔と言わず、服でも触ってみれば見た通りじゃないのが分かるんじゃないか?」

「確かに……」


 言ってアードが立ち上がる。だがそのタイミングで、魔法使いと思われる人物が目を覚ました。セイネリアとしては話を聞くため手加減をしてやったのでやっとかというところではあるが。

 セイネリアは相手が起きた事で躊躇して立っているだけの男を通りすぎると、目が覚めたルーテアの顔をした魔法使いだろう者のところへ行く。それから怯える相手に向かって聞いた。


「お前、魔法使いか?」

「なっ……」


 言われた相手は明らかに狼狽えて、慌てて逃げようとしたが自分が縛られて動けない事に気づくと諦めて動きを止めた。

 セイネリアは尚も尋ねる。


「お前が、連中の姿を変えていたんだろ?」


 相手は答えない。だが最初の問いに狼狽えた段階で魔法使いである事は確定だし、ここにその役目以外で魔法使いがいるとは思いづらい。ほぼ確定している問答で時間を掛ける気はないので、セイネリアは剣を抜いた。益々怯えた目でこちらを見る相手に見せつけるように大きく振り上げ、その目の前を通り過ぎるように振り下ろす。剣は座った状態のそいつの足の間に突き刺さっただけだが、ひ、と悲鳴が上がって相手の目は虚ろになる。

 セイネリアは今度はしゃがみこんで相手と視線を合わせると、笑みを浮かべて言ってやった。


「何も答えないなら賊の一人として始末するだけだ、それでも良ければ黙ってろ」


 視線が定まっていなかった相手の瞳が止まってこちらを凝視してくる。ガタガタと小刻みに震える相手に、セイネリアは唇の笑みを消すとその琥珀の瞳で相手を見据えたまま言った。


「貴様にはいろいろ聞きたい事があるし、手伝ってもらいたい事もある。役に立ちそうだと思ったから殺さなかったが、そうでないなら殺した方がこっちも面倒がない。……ここで死ぬか、こっちに協力するか、どちらがいい?」


 セイネリアは確信している事があった――魔法使いが自分の命よりも雇い主の命令を重視する事はあり得ない。なにせ魔法使いというのは一般人と違う世界で生きている、貴族でさえも魔法ギルドを恐れる段階で、自分の命より契約を優先する魔法使いなんてものはまずいない筈だ。


「分かった……お前のいう通りにする」


 案の定、そう答えて来た魔法使いだが、当然ルーテアの声ではなかったがそれでも女の声だった事に少しだけ驚く。


「女か?」

「そうだ。男が女のふりをしていなくてほっとしたか?」

「別に」


 魔法使いなら動きにくい恰好だろうし何より戦闘職の動きは出来ない。だから魔法使いが化けるならルーテア本人だろうと思っただけで、女だから女に化けたとかは考えていなかった。ただまだぼうっと突っ立っているアードという男に、セイネリアは振り向くと聞いてみた。


「あんたの仲間に姿を変える術を掛けたのも女だったか?」


 固まっていた男が、それでやっと動き出す。


「あ……あぁ、声からしても同じ人物だと思う」


 それと同時に、魔法使いが言ってくる。


「納得したか? それで、何を聞きたくて、何をしろというんだ?」


 声に苛立ちはあるが、口先だけでここを切り抜けて、こちらを騙そうとしているようには思えない。ただこの女魔法使いが本当にこちらにつくかどうかについては、相手の意図を読もうとするよりこちらについた方が得だと思わせるようにすべきだろう。


「そうだな、まずはあんたを雇ってる連中について聞きたいんだが……」


途中っぽいですがこのシーンはここで切って、次回は部屋の方に行ったセルパと他の連中との話。


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