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黒の主  作者: 沙々音 凛
第四章:冒険者の章二
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1・クリュースという国


 今は昔の物語――吟遊詩人たちがお約束のように冒険者達の冒険譚を歌う前に言う口上は、あまりにも聞きすぎてその内容を知らない者はこの国ではいないくらいだった。成り行きで兵士の反乱の首謀者になってしまった騎士と、その騎士の友人でもあり部下でもあった魔法使い見習いは、王からの『どうにかしろ』という責任転嫁の一声で冒険者制度を作り上げたのである。


 兵達の能力と報酬の払いを明確にするため、そして樹海を調べる為、ついでに言えば戦争が終わって仕事を失った傭兵達の行先まで考えて……仕事を受ける者を全て『冒険者』として登録させて、国に仕事の斡旋業を始めさせた。

 勿論最初はいろいろ問題が多く、なかなか冒険者たちは増えなかったし、依頼者側も国を通せば仲介料を取られる事に反発してそうそう登録してくれなかった。けれども途中から魔法ギルドの全面協力が始まって、一般生活でも冒険者制度を利用すればいろいろ便利だという事が広まってからは爆発的に広まり、今では都市部の人間ならある程度の歳になれば皆冒険者登録だけでもしておくのが普通の事になっていた。


 まぁ大ざっぱに言えば、国は国民を把握出来る上に仕事の仲介料を手に入れられ、代わりに冒険者たちへの各種サービスの提供と、仕事に見合った能力と信用のポイントを発行する。依頼者達は事務局を通す事で大勢の人間に募集を告知出来るし、依頼する人間の能力や信用、過去の仕事での働きなどの情報を提供してもらえる。そして冒険者達本人といえば、便利な専用サービスを使える事や仕事がもらえる事は勿論、ポイントを上げればもっと割りのいい仕事を貰えるという分かりやすい目標も出来る――とそんな制度であった。


 この手の制度はまともに動き出すまでは大変だが、ある程度まで広がればあとは加速度的に広まるというのがお約束でもある。今では金だけ貰える仕事より評価ポイントがもらえる国を通した仕事をしたほうが後々得だと冒険者なら皆思うし、依頼者側も報酬が足りない分を国に評価ポイントで補って貰える上にそもそもポイントを貰えない仕事はロクな人間が引き受けてくれないと、どちらも制度を通さないと成り立たなくなっていた。おかげで冒険者と魔法ギルドを牛耳っている王の権力も増し、平民でも評価を上げて出世出来るかもしれないなんて夢物語を信じて多くの人間がこの国にやってくる。


 だから現在、クリュースは名実ともにこの辺りで一番の大国であり、裕福さと冒険者という潜在戦力では群を抜いた存在となっていた。



えー、前置き文みたいなのが続きましたが、次からは普通に物語の続きというか、セイネリアのお仕事話が始まります。

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