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黒の主  作者: 沙々音 凛
第十九章:傭兵団の章三
1002/1189

40・確認と依頼

「それで、用件は何でしょう?」


 適度に笑ってから、ラスハルカは唇の笑みは残したままでそう言ってきた。


「お前、アルワナ神官として反魂術は使えるか?」


 すると彼は目を丸くして、それから笑いだす。


「まさか、ただの神官である私が使える訳ないじゃないですか。あの術は少なくとも司祭長か、それ以上の方でないと使ません」

「そうか」


 この質問に対してはそうだろうなと思っていたことだからセイネリアとしても落胆はない。なにせよく知られているリパの蘇生術でも、使えるのは神殿長以上だそうだから当然といえば当然だ。


「なら確実に反魂術を使える神官を紹介してもらう事は可能か? 勿論報酬は正規料金を払う、成功率を上げられるのなら金を上乗せしてもいい」


 話を聞きながらラスハルカの目が細められていく。聞き終わった後で彼は一旦目をつぶると、暫く考えるだけの間があってから口を開いた。


「紹介は出来ます。おそらく貴方の名前を出して依頼というのなら優先で受けてもらえると思います」

「なら頼みたい、受けてくれるならお前にも紹介料は払う」


 それには彼が苦笑する。


「それは別にいいですよ。私としてはついでで出来る事ですから、その程度でお金はいただけません」

「悪いな」

「構いませんよ。貴方に借りを作るのは得がありますし。……そう思うのは向こうもでしょうし」

「頼む」


 セイネリアが改めて言えば、ラスハルカはにこりと笑う。


「はい。ではそちらの方はすぐ問い合わせてみますね。返答があり次第こちらから連絡しますので、具体的な話はその時に」


 言うと彼は一瞬、視線を外して唇を動かした。セイネリアは気にした素振りを見せずに丁度やってきた酒を受け取って給仕の女に金を渡す。専用の用心棒がいたり、首都のように顔馴染みばかりが来る店なら後でまとめて払うところもあるが、外からの人間が多いこの手の酒場では代金は品物が来た都度支払うのが普通だ。


「ちなみに、反魂術の成功率はやはり魔力で変わるのか?」


 それは酒を飲みながら、あくまで興味があるという程度の言い方で聞いてみる。相手は特に考える事もなく答えた。


「そうですね、そこは当然高い方がいいです。その点今回は心配ないですね、勿論他の条件も揃えばとなりますが」


 心配ない、か――セイネリアはほんのわずかに、口元を歪めた。


「目的の魂は、本人の傍にいるというのは確認済みらしい」

「そうですか。アルワナ神官に見てもらったのですか?」

「かもな。根拠なく希望だけで断言するようなタイプの男じゃないから、信頼できる方法で確認しているとは思うが」

「そうですか。それならかなり成功率は高くなりますね」


 サーフェスは狂っているが、確認もせずに言い切るような男ではない。そもそも、反魂術と違って死者を見るくらいならアルワナ神官であれば大体は出来る、確認を頼むのは難しくないだろう。

 それにきっとあの男の事だから、おそらく成功率を少しでも上げるために出来るだけの事はして、そして魂が傍にいるかなんて重要な要素は何度か、へたをすると定期的に確認している可能性が高い。


「ともかく、頼むからには確実に成功させたい。だからこちらで協力出来る事はするし、用意して欲しいものがあるなら用意する。かなり無茶だと思うものでも、とりあえず言ってくれれば出来るだけはどうにかするつもりだ」

「そうですね、それも言っておきます。貴方がいる以上に成功率を上げる手段はないと思いますが」

「そうか」


 ラスハルカは少し赤い顔のまま、楽しそうな笑みを崩さない。かといって酔って言動が信用出来ないという状態ではない。彼の目の奥はちゃんと冷静にこちらを見ている。だから反魂術の術者については彼に任せて問題ないだろう。


 その後は酒がある間だけさしさわりない近況報告等を話して彼とは別れ、セイネリアは予定通り日が落ちる前に団に帰る事が出来た。

 そうしてその翌日には、彼から反魂術が使える神官についての連絡が入った。


ラスハルカの発言は微妙におかしいところがあります。

次回はサーフェスが団にやってきます。

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