がん細胞
試しにやってみましょうか
はたして
ぼくと ぼくの愛とを 切り離すことができるのか
そこのナイフを手にとって
でも どこをどう切ればよいのやら
分かりゃしない
この愛は ぼく
ぼくは この愛
あなたはぼくに巣食う がん細胞
ぼくの全身を蝕み 支配する
恐ろしい 愛という名の がん細胞
あなたにもし
ぼくと ぼくの愛とを 切り離すことができるなら
どうぞ やってみてください
そうして
ぼくから ぼくの愛 を 切り離した後
ぼく は 残っているのか
ぼく は 知りたい
さあ そこのナイフを手にとって
どうぞ やってみて
もしも 切り離すことができぬなら
そのままに しておきましょう
それと共に 生きてゆきましょう
ぼくは
欠けたものは
欠けたままに しておきましょう
ぼくはそれが
うつくしいと おもうから
いつかぼくが死ぬとき
それ も 死ぬ
ぼく は 消え
ぼくの愛 も 消える
まるではじめから 存在しなかったのと 同じことになる
ぼくはそれが すこし悲しい
ぼくが消えてしまうことよりも
ぼくの愛が消えてしまうことのほうが かなしい
あなたがいなくても
ぼくは時々 しあわせでしょう
あなたがいなくても
ぼくの夢は 叶うでしょう
あなたがいなくても
ぼくはとりあえず
生きてゆくのでしょう
不完全なかたちのまま
あの月のように