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落ちたクリームのゆくえ

 幾らか分かった事がある。

帰る道すがら元気のないわたしにままはとても心配したけれど、そんな事は今の私には些細な事だった。

 帰るなり、家の玄関に飛び込み有益と思える情報を片っ端から引っ張りだした。

テレビ、住所、西暦。

その他もろもろを調べまくった結果、分かったことは僅かばかり。

今は西暦1999年。

概ね私が産まれた年と変わらないらしい。多少の誤差はこの際多目にみることにした。悩んでも日付は変わってはくれない。

 テレビを観ても見覚えのある顔がちらちら居る辺り、全く前の私に関係ないというわけでもないらしい。

 住所は東京の都心部、東京に関しては前の私じゃよく分からない。私は関西に住んでいたから。

 色々と引っ張り出してうんうん考え込む私に両親はおおいに心配の目を向けた。

やっぱり弟に構い過ぎただとか。お姉ちゃんだからと我慢させ過ぎたとか。

そんな事を言ってぱぱは頭を抱え、ままは眉を八の字にしていた。

 さすがにこれは不味いと思い記憶の中のわたしを総動員してわたしを演じてみたものの、どうやら遅かったらしい。

ぱぱとままはもう少しわたしにも目を向けると結論付けてしまった。

これは私にとって大きな痛手だった。

 これから自分の身に何が起きているのか調べようという矢先の保護者の警戒はそれすなわち情報の枯渇を意味していた。

まあ良い。大人たちの会話から分かる事も有るだろうと鷹をくくったものの、私の認識は甘かったのだと数日で思いしらされることとなる。

 ぱぱとままは幼児にするようにわたしを甘やかし、その一挙一動に私は辟易した。

無理もない。両親からしたら今のわたしは幼児そのものだし、仕方のないことだ。だけどもわたしの中身は二十数歳。

幾ら私が甘ったれといえど、これはきつい。

 何とかこの苦境を乗り越えたいと絞り出した苦肉の策が「わたしもうお姉ちゃんだから」だった。

 この一言から両親の過保護モードは徐々に軟化し、後に私はこの事を『ソフトクリーム事件』と名付けその軽い頭に深く深く刻み込んだ。

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