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 この異世界にやってきて5日目の朝。


 朝食後の日課となっている【図鑑】の確認作業を行う。


[佐紋健人サモンケント]

 性別:オス

 種族:人族

 スキル:図鑑魔法(スライム級)薬草採取(スライム級)打撃耐性(スライム級)


(今日も変化なしか…)


 人物リストの自分の詳細に変化がないことに少しだけ凹む。


(まあ、今日順調にいけば初めての魔獣召喚が試せるから、それに期待だな)


【図鑑】のジャンプワームの詳細を確認すると数値が89/100となっているのだ。

 計算では今日の午後には召喚魔法を実験できる。


 ケントは慣れた手つきでテキパキと準備をすませると《ゲート》と呟き、黒い扉を通って草原に出た。






 今日4匹目のジャンプワームを《フェアリーアロー》で一撃で倒してからガッツポーズをする。


「よしっ! 目標達成だ!」


 《イート》で吸収してから【図鑑】のジャンプワームの詳細を確認する。

 数値が103/100となっていた。


(100を超えてるけど、右側の数字は吸収上限じゃなくて召喚可能にするための魔力量の目安っぽいな。さて問題はここからだな)


 ケントが危惧していたのは、魔獣を召喚することで今まで貯めた魔力量が減るのではないかと考えていたからである。

 長時間かけてやっと目標の魔力を吸収したのに一度の発動でまた左側の数字が0に戻るなんてなったら目もあてられない。

 しかし躊躇っている暇はない。

【図鑑魔法】の習熟度をはやく上げなければ、いつまで経っても元の世界に戻る方法は見つからないのだ。

 それに【図鑑】に吸収した魔力を消費するという事実が早めにわかっておくほうが対策も立てやすくなるだろうと思い、周囲を警戒しながら《サモン・ジャンプワーム》と呟く。


「うっ…」


 体からなにかが急激に減って極度の疲労感に襲われた。

 その疲労感によって発生した眩暈で思わず倒れそうになるのをぐっと堪えて目の前をみると大型犬ほどの大きさのテカテカと黒光りするジャンプワームが出現していた。


「えぇぇぇぇっ!!」


 奇声をあげながら後ずさりし思考をフル回転させる。


(襲ってくる気配はないな。いつもの体長20cmほどの大きさのジャンプワームが出現すると思っていたからビックリしちゃった。 しかし召喚した魔獣ってこんなに大きくなるのか? とりあえず使役可能なのか確認しないとな)


 どうやって使役するのかわからないのでまずは適当に口頭で指示を出してみる。


「まずはすこしだけ左に移動」


 大型犬ほどの大きさの召喚したジャンプワームがもそもそと体を動かして左に移動してから止まる。


「回れ右!」


 もそもそと体を動かしながら右回転して頭のある方向を反転させる。


(どうやら言葉の意味を理解しているみたいだけど、俺の言葉のイメージが伝わっているというのが正解なのか? ってことは口に出す必要もないのかな)


 そう思いついたケントは前方に勢いよくジャンプしろと念じてみた。

 すると念じたとおりに召喚したジャンプワームは体をしならせてから10mほど先までジャンプして飛んでいった。


(指示には従うとなると、あとは自発的に行動できるかだな)


 早速召喚したジャンプワームに半径100mほどにいる魔獣を討伐し死体を回収しろと念じる。

 しばらく様子を見ているとジャンプを巧みに使いながら草原を自由に跳ね回り、隋所で野生のジャンプワームと戦い、次々と死体を俺の足元に咥えて運んでくる。


(あー、動きを見る限り忠実に主人に仕える犬って感じなんだな)


 運んできた3匹の野生のジャンプワームの死体を【図鑑】に吸収しながら詳細を確認する。

 数値が110/100となっていた。


(数値の減少は無くて良かった。これで心おきなく召喚魔獣を呼べるけど、そうなると召喚魔法の代償はさっきの疲労感から考えて俺自身の保有している魔力を使ったと考えるのが妥当だな。しっかし、さすがにあの疲労感を伴うとなると日に何度も使うのはきついな)


 周辺を跳ね回る召喚したジャンプワームを眺めながら、召喚魔獣に関する全容を把握することがまず第一だなと考えたケントは時間のある限り、召喚したジャンプワームを用いていろいろな検証を行うことにした。






 この異世界にやってきて9日目の朝。


 朝食後の日課となっている【図鑑】の確認作業を行う。


[佐紋健人サモンケント]

 性別:オス

 種族:人族

 スキル:図鑑魔法(スライム級)薬草採取(スライム級)打撃耐性(スライム級)


(今日も変化はない…、ポチもいるしそろそろ草原の外に足を運んでもいいかな)


 先日召喚されたジャンプワームはポチと名づけられていた。

 ポチという愛称でも使役および召喚することに全く問題はなかった。


 さて昨日までの検証で召喚魔獣について判明した点がいくつかあった。


 まず召喚時に込める魔力量でサイズを変更が可能だった。

 ポチの場合なにも考えずに召喚すると大型犬サイズとなってしまうが、その場合1日2回の召喚が限度であった。

 召喚時に込める魔力の量を意図的に絞ることで小型犬サイズのポチを召喚できた。

 この場合は1日4回の召喚が出来た。


 あとポチの複数召喚は出来なかった。

 同種の複数召喚ができないのか、そもそも召喚できる魔獣の数は必ず1体なのかはまだ不明である。

 別の魔獣を召喚できるようになったら確認しないといけない。

 もしかしたら習熟度によって召喚できる上限数があるかもしれないので、それも検証対象だなとケントは考えていた。


 次に召喚時に感じる疲労感だが寝る事で回復できることがわかった。

 保有魔力量をあげるか、もしくは魔力回復薬などがあれば日に何度も召喚できるだろうと想像しているが、とりあえず一度召喚してしまえば《サモンリターン》で戻すか、術者とおよそ200m以上離れるか、もしくは倒されるまでコストなしで維持される。

 術者が気絶したり寝てる間も術者の周囲に召喚魔獣を展開できるというのは護衛として考えると最適である。

 しかも召喚魔獣は寝ないで活動できるのは嬉しい限りだ。



 ケントは各種準備を済ませて椅子から立ち上がり、聖域から草原に出ると《サモン・ポチ》と呟く。

 少しの眩暈を感じつつ、大型犬サイズのポチが召喚された。


「今日は長距離を移動するから護衛を頼むぞ、ポチ」

「キュ!」


 ポチが小さく鳴いて返事をする。

 ある程度だが召喚魔獣とコミュニケーションが出来るのは心強い。

 人語が話せるような高位魔獣であれば会話の相手にもなるなと想いながらケントはテカテカと黒光りするポチの頭をなでる。


(まずは西に向かおう)


 そう思いつつ、ケントはポチと共に歩き出した。


 なぜ西なのかというと理由は二つあった。


 一つ目の理由は草原の東と北には大きな高い山々が連なっていたからだ。

 さすがに山を越えるのは厳しすぎる。


 二つ目の理由は草原の南側に深い森が広がっていたからだ。

 元の世界でも森の中というのは草原よりも多様な生物が生息している環境であり、より強い魔獣がうじゃうじゃいるだろうと警戒したからだ。

 それなりの攻撃手段を有していない状態で気軽に足を踏み入れるべきではないだろうとの思惑があった。


 ケントは新たな薬草が【図鑑】に登録されることを期待しながら、目にとまった野草を手に取りながら西を目指した。

 魔獣の襲撃に関しては、ポチに護衛を任せているので気分はハイキングのようだ。


 心地よい草原の風を感じる。


 ビュッ!


 それまでケントの横にいたポチが突然前方20mほどの場所に向けてジャンプした。


(おっと野生の魔獣がいたようだな)


 いつもであればすぐに野生のジャンプワームの死体を運んでくるだが、まだ戦闘を続けているのに違和感を感じた。


(新しい魔獣?)


 《プロテクション》を展開して、ポチに一旦距離を取るように念じながら、魔獣の正体を確認するために近づく。

 目の魔の草むらに体長30cmほどの緑のゼリー状の体をした魔獣がプルプルと体を揺らしていたのだ。


(スライムだわー)


 ポチと戦って無事ということは物理耐性を持っている可能性が大きい。


(魔法じゃないと倒せないってことだろうな)


 ケントはフェアリーワンドをゼリー状の魔獣にさっと向けて《フェアリーアロー》と呟く。

 光の矢が魔獣を貫くとゼリー状のボディがあっという間に地面に染み込んでいき、核となる石だけが残された。


 石を持ち上げると【図鑑】が幽かに光る。


(おっと登録されたみたいだな)


 アイテムリストの詳細を確認する。


[マジックストーン]

 状態:普通

 系統:水

 ※その身に魔力を内包している石、マジックアイテムの魔法触媒


(マジックストーンって名称と系統から考えると水魔石ってやつだな。 しかしアイテムリストに記載されてるとなるとこれは死体扱いにならないのか? 吸収できないとなると辛いんだけど…)


 試しにスライムから出た水魔石を指定して《イート》したところ問題なく吸収できた。

 さらに染込んだ地面に向けて《イート》したら、こちらも問題なく青い光の粒子が【図鑑】に吸収できてしまった。


(なるほど地面に染込んだ液体も魔力を含んでいたようだな)


 モンスターリストの確認する。


[グリンスライム]

 3/100

 性別:不明

 種別:魔生物

 系統:水

 スキル:物理耐性(小)

 ※スキルを常に発動。体力は魔力依存


(この魔獣は壁役にしたら高位魔獣との戦闘が楽になりそうだよな。是非とも召喚できるようにしないとな)


「ポチ、また移動中にグリンスライムがいたら俺が仕留めるから場所を知らせてくれ」

「キュ!」


 周囲を警戒してくれていたポチに声をかけると嬉しそうな返事が返ってくるので、ケントはポチに笑顔を見せながら西への歩みを再開した。


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