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召喚日本の冒険者(ゲオルグ)

ちまちまと

ゲオルグ・バイエルン・シーゲルについて


 ゲオルグが自分の立場を意識したのは、いつだったか。

 初恋の幼馴染が、ゲオルグの兄に想いを寄せていることを理解したときか。

 寄宿舎の友人に、名前をからかわれて、親の愛を疑ったときか。

 兄達の優しい目つき、愛する家族に向ける眼差しを感じられなくなったときか。


 どれも違う、と、ゲオルグは思う。

 小さい、本当に小さいころ、父親に聞かされた建国騎士の物語。母親におぶられ、聞かされた、勇気ある者たちの物語。兄達と、友人達と、野原を駆け回り、悪党を退治した勇者ごっこ。

 小さいころは、誰もがそうなるように。ゲオルグは、憧れるべき存在に憧れたのだ。

 彼らは尊く、果敢で、勇気があり、不屈で、そしてちょっとばかり愛嬌があった。ゲオルグは彼らに憧れるあまり、自分が彼らの足元にも及ばないことを、幼いながらも理解していた。

 聡い子であった、と、神の目を持つ悪魔が居れば評したであろう。そしてまた、おろかであったと。

 ゲオルグは、少しばかり、自分の評価に「鈍い」のであった。自身の精神が、英傑に比較してあまりにも未熟であることを理解する聡明さを持ちながらも、彼は自身が、いずれ偉大なる人物として大成すると、何一つ疑うことが出来なかったのだ。

 人は、挫折と後悔を得て成長するのだ。何かをあきらめ、何かを選び、何かを得て、いずれ、すべてを失うのだ。

 ゲオルグは、つまり、何かをあきらめることを学べない人物だった。彼は少なくとも、不屈の精神だけは持ち合わせているよう振舞った。振る舞い続けているうちに、その精神は血肉となって、彼の心身を支えるようになった。そして、彼のおろかさは何一つ修正されていなかったので、……年を長じた彼はまだ、家族に、友人に、幼馴染に宣言しつづけていた。いつか英雄になる、と。

 そうであった彼が、周囲から疎ましがられるのも仕方の無い成り行きであり、つまりは自業自得であり、すなわち自分で撒いた種であり、何より、彼自身が思い描いた世界への扉の鍵を、得るべくして得たのであった。


 ゲオルグとはすなわち、かのような男であった。

 鍵がそろうには、今しばらくの時間と経験と、なにより縁が必要にせよ。

 彼は、自分の立場を、自分で見定め、自ら夢を掴み取る舞台へと昇ったのだった。

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