表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

ハツミミデス


皆さん。こんにちは。根暗女子代表の巣守真白です。あ、自分で言ってライフが削られた…。ただでさえ暑さに殺らてているというのに。


ちなみに今は夏です。真夏です。夏休みです。サマーバケーションです。リア充達が大いに盛り上がるあの夏です。夏が好きな奴なんて大抵リア充ですよ。え、言葉の節々に刺がある?あはは…、気の所為ですよ。気の所為。私だって夏嫌いじゃ無いですよ。何故なら夏には夏コミがありますから!死んでられませんよね!



「男前受けとかたまらんですなぁ、たまらんですなぁ〜。」


現在、クーラーがガンガン効いた部屋でベッドに横たわりパソコンの画面を見つめている。

夏といえば海?誰がそんなことを言ったのですか!え?一般的にそうだって?…。

……こういう日はネットやゲームをするのに限ります。はい。


「この絵師様ほんと素敵すぎますよぉ、ふつくしいー」


おっとよだれが。

私がよだれを拭うと同時に普段鳴らないチャイムが六畳の部屋に響き渡った。慌ててノートパソコンを閉じ、覗き窓を除く。するとそこにはアイシャドウばっちりの大家さんが居ました。年齢不詳だが40代だと思う。

あ、説明不足でしたが、ここは大学の寮です。冷房、暖房完備の良い物件です。


私は戸を薄く開ける。


「あ、あああの、どうされましたか?」


私は根暗女子であり、コミュ障でもある。いらないスペックだ。


「巣守さん、急で悪いんだけど、ここから出ていってくれない?」

「why?」


いきなり何を言い出すんだ大家さん。思考がついていけなくて思わず苦手な英語が出てしまったぞ。


「すみません、聞き取れませんでした。」

「だから、はよ出ていけ。」

「直球すぎますよ!私何か大家さんに気に障ることしましたっけ!?」


ここは、3年間慣れ親しんだ城《六畳》だ。簡単に手放すなんて出来ない。しかも私にはここ以外居場所がないのだ。


「あー、違う違う。そういうのじゃないよ。ここ、夏休み中に耐震工事するの。…って前に言わなかったっけ?」

「ハツミミデス。」


そんなの聞いてたら優雅にBL漫画読んでないわ!


「あー、ごめんごめん。いい忘れていたみたい。」


大家さんの謝罪は悪そびれたように聞こえない。

スペック追加。私は影が薄い。


「お詫びにアイス代あげるから、大人しく帰省しなさいな。ほかの子達はとっくに家に帰ってるよ。んじゃーね。」


ポイッと大家さんは100円玉をほおり投げる。いきなり投げられて戸惑いながらも100円玉をキャッチし、大家さんに文句を言おうかと顔を上げれば、そこにはもう彼女の姿は消えていた。


右手に100円玉を握り締め、暫し呆然とする。

あぁ、なんてこった。実家に帰ってしまえば、帰ってしまえば…


「コミケが遠くなるだろぉぉぉぉ!」


ショックのあまり床に膝をつく。始発で行かないと間に合わない。通行費だけで何冊あの薄くて夢と希望が詰まった本が手に入るのだろうか。あぁ、想像しただけで目から雫が…。

…いや、これただの汗だ。

暑さのあまり滴ってきた汗を拭い、実家のことを思い出す。


…あの二人から離れるために家から出たんだけどなぁ…。


六畳の部屋に入り、小さく溜息をついた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ