変化
学校から出て俺はすぐさっきまで歩いてきた道を走り出した。
世界は変わっていない。
いまはお昼時、殆どの家庭は昼飯を食ってるだろう。
だから人とすれ違わなくても、さっきまでのような嫌な気配はない。
ただ・・・・・・・・・
嫌な予感は頭の中でいくつもの可能性を創造していく。
最悪綾子は・・・・・・・・
いや、それはない。
綾子がそんなことするはずがない。
頭を振る。
鮮明に映ってしまう出来事。
早く消してしまいたいからまた頭を振る。
これから起こり得る出来事に怖気づいてる場合じゃない。
重要なのは今だ。
俺は綾子に会わなきゃいけない。
なんとしてでも・・・・・・・
会ってどうするかなんてわからない。
それでも俺は綾子に会わなきゃいけない。
そんな感じに崩れそうになる心を必死に、無理やりにでも支えようとする。
そんなやつに信号が青か赤なんかを判断するのは無理だった。
キキィィィィィィーーーーーー!!!!!
ブレーキ音で俺は現実世界に戻ってきた。
車は迫ってきている。
反射的に避けれた。
人間ってすげぇ・・・・・・・・・
車も壁や電柱に衝突していなかった。
よく見ると高そうな車だ。
黒い車。
運転席側の窓から男の顔がでてきた。
いかにも、な匂いを漂わせる30過ぎくらいの男だ。
「馬鹿野郎ッ!!!!死にてぇのか!!!!」
そう言って男は顔を引っ込め、車を走らせていった。
車・・・・・・・・まったく気付かなかった。
綾子に会う前に閻魔大王に会いにいくとこだったぜ。
しかし、こんな住宅街にあんな人らが何でいるんだ?
あまりに場違いだった男たちはいったいなにをしていたのだろうか?
いやいや!
そんなことどうだっていい!
急がなければならない状況なのにどこか余裕を持っている自分が憎い。
まだ俺は心の中で否定している。
嫌な予感、綾子の起こし得る行動
あの綾子に限ってありえない、ありえない。
馬鹿か熊谷晃!!!
綾子の強さを知っているように、綾子の弱さも・・・・・・俺は知っている。
急げ!
何もなかったらそれでいいじゃないか!
俺は余計なことを考えようとする頭を振る。
そしてただひたすら走る。
綾子の家はあそこの角を曲がれば見える。
この角を、
瞬間、世界の空気がその表情を変えた。
「―――」
えっ・・・・・・・?
思わず走る勢いを緩めてしまう。
いま、なにか・・・・・
「――ら」
後ろから・・・・・・
「あきら」
俺を呼ぶ声
俺の足は止まった。
振り返る。
「あきら・・・・」
「――――――綾子」