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ME TO SEX 僕は僕とセックスをする。  作者: 赤井獺京


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9/9

初めてのデートは身代わりデート

分かったよ、と返事をすると燈弥はすぐに待ち合わせ場所と時間を送ってきた。そして彼女の写真も。


重原佐紀さんは陸上部らしい細身で短髪の女の子だった。写真は友達であろう女の子とのツーショットだった。その顔は笑っていて笑顔が可愛い子だと思った。燈弥と同じ右のえくぼに黒子があった。

だけどその黒子には、鏡の向こうの黒子や燈弥の黒子に感じるチャーミングさは微塵も感じなかった


待ち合わせ場所は駅前の大きな時計台の前で、集合時間は十五時、今は十四時になったところだった。間に合いはするけれど時間はギリギリだった。


僕は急いて準備をした。髪を乾かしながら女の子とのデートには何を着るべきか悩んだ。正直デート用の服なんて持っていない。グレーの無地の半袖に水色のシャツ、それと母さんが長ズボンを半ズボンに切ったデニムパンツに着替えた。そして母さんの用意してくれたオムライスを急いで食べた。食べる前に、着替えた写真を燈弥に送っておいた。


どうかな、と聞いた問いにはグットマークだけ返事が来ていた。。僕は急ぎ足で駅まで向かった。外は熱くて、せっかく流した汗もまたジワジワと湧いて出てくる。


額の汗をぬぐいながら駅に向かう。駅に近づくにつれて人並みも増えてくる。それに浴衣姿の人が多い。ピンクや青色の華やかな浴衣だ。扇子と一緒に大きなぬいぐるみを付けたハンドバックを持って歩く女の子が多い。なんでみんな、手のひらサイズの大きなぬいぐるみを付けて歩くのか分からない。邪魔じゃないのだろうかと正直思う。待ち合わせ場所に着くと汗をぬぐった。背中はびっしょり濡れていた。時間は約束の五分前。遅刻はしなくて済んだ。

ここで困ったことに気が付いた。重原さんの連絡先を知っているのは燈弥で僕じゃない。ここでやり取りをすることができない。


僕は燈弥に時計台についたと送ると、重原さんももうすぐ着くって、と返事が来た。心臓がざわつきながら彼女を待った。嫉妬とかのざわつきとは違う。授業参観で親の前で作文を朗読する直前みたいなそんなざわつき、緊張だった。


僕は緊張している。


それもそのはず、女の子とデートなんて初めてだ。それに今の僕は僕じゃなくて、燈弥だ。


燈弥になりきらないといけない。今の僕は燈弥の鏡だ。僕は目を瞑ってよし、と言った。


「お待たせ、トウヤ君」と声がかけられた。


重原さんは髪を青色の着物を着ていた。大きな、真っ赤な金魚の描かれた夏らしい着物だった。大きいぬいぐるみのついたハンドバックは持っていなくて安心した。


「は、はじめまして」


僕は開口一番墓穴を掘ってしまう。


だけど彼女は笑って、初めてでは無いでしょ、と言った。そして両手を前で組んで僕の前に立って、初めまして、と笑いながら言った。


彼女は口を押えながら大笑いをして、僕もつられて笑った。初対面だけど分かる。

彼女はいい子だ。


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