悶々、1週間
この一週間は悶々と過ごした。学校で燈弥と話すときはいつも通り接することができたけれど、後ろを向いた瞬間胸を締め付けられる思いだった。
燈弥は今週デートをする。それだけが頭にこびりついている。
授業中も部活中もそのことが頭の表面にぴったり張り付いて全く身が入らなかった。しまいには集中しろとコーチに怒られてしまった。
別にいい事じゃないか。モテないよりもモテた方がいい。そう考えようとしてみても無理だった。
思考は結局、燈弥が手を繋ぐのか、キスをするのか、女の子と目線を合わせてクシャっとした笑顔を見せるのか……。そんなことを考えてしまっていた。
僕は燈弥を好きなのか? いや、僕はいつの間にか『彼』と燈弥を混同してしまっている。好きなのは『彼』であって燈弥ではないはずだ。それが分かってはいても、燈弥がデートをすることを考えてしまう度に胸の中が重くなった。
そんな中僕にもお祭りの誘いは来た。同じクラスの竹麿からだった。竹麿は僕の後ろの席で、このクラスで一番初めに仲良くなった。席が近いからだけど。
竹麿はいい奴だ。ただのいいやつ。帰宅部で、趣味で絵を描いている。身長は僕と同じくらいだけど見た目は1.2倍太っている。休み時間に袋菓子を毎回食べているからそのせいだと思う。短髪で丸眼鏡をしている。まあ、女の子からお誘いはこなそうなタイプだ。
「男二人で祭りに行くのかよ?」
「別に男二人でもいいじゃん。お前もしかして女子といく予定でも……」
「いや、ないけれど」
「せっかく高校生になったんだから青春を送りたいんだよ、俺はね。俺だって女子といきたいわ……でも誘う勇気が……」
「大丈夫、タケマロなら誘えるさ」
僕は竹麿の右腕を擦りながら半笑いでそう言った。それから彼のお腹を撫でた。
「ぽっちゃり好きな女子だっているさ」と竹麿は怒ったふりをしながら僕の腕を掴んできた。竹麿が僕の首に腕を回してきて、僕は竹麿のお腹を叩いてギブアップと合図をした。
竹麿の話だとお祭りは土日で二日間やっていて、毎年駅前の神社で開催されているらしい。それに花火大会も近くで夜行われるようだ。
何年か前に母さんと行った記憶がある。あの時は母さんが僕の楽しみにとっておいたシュークリームを食べて不機嫌だったのを、ご機嫌取ろうとしての時だと思う。不機嫌なのを直すタイミングが分からなくて、お祭り中不貞腐れた顔をあえて作っていた記憶がある。それももう、小学生の頃の記憶だ。それ以来そのお祭りには行っていない。
申し訳ないと思いながら竹麿の誘いは断った。一緒に行ってあげたいけれど、向こうで燈弥に遭遇してしまえば胸の中の感情が抑えていられるか分からない。
悶々とした週が過ぎて、土曜日の部活終わりに家に帰ると母さんは少しあわただしくしていた。僕が帰っても、おかえりと言うだけでペットボトルの水と何かを持って、使っていない空き部屋の中に入っていった。そこからしばらく出てこなかった。




