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ME TO SEX 僕は僕とセックスをする。  作者: 赤井獺京


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僕が好きなのは、鏡に映る彼

Me To SEX


 僕はこの顔が好きだ。


 鏡に映るこの顔が。


 この顔と目が合う度に僕は彼に触れたい衝動にかられる。目が離せなくなる。だから家の外ではなるべく鏡を見ないようにする。僕が彼と見つめ合うのは家で一人きり、洗面台の大きな鏡でだ。


 鏡に映る顔は、僕の顔じゃない。

 

 僕の顔はこれじゃない何 かで、ここに映るのは僕が触れたくてたまらない相手だ。

ここで僕は彼と愛し合う。


 体についているこの顔には、鼻の右隣と左のえくぼに小さな黒子がある。ちょっとだけコンプレックスだ。鏡に映るとそれが左右対象になって僕じゃない僕が映る。鏡に映る黒子のことは大好きだ。チャーミングだ。


 目は猫目で鏡に写ると右目だけ少し高い。歯は八重歯があって、これは嫌いじゃない。肌はこんがりと焼けている。ずっとサッカーをやっているせいだ。鏡に映る彼が魅力的に感じるのだから実際の僕は不細工ってわけではないと思う。


 僕が鏡の彼を意識し始めたのは小学生の頃になる。いまだにリビングに飾られたままの自画像を書いたことがきっかけだ。あれは図工の授業で各自手鏡を持参して自分の顔を描こうという授業だった。みんな机に画用紙を置いて片手に手鏡、片手に鉛筆を持って自分の顔を書いた。


 自分の顔を鏡で見るのなんて歯磨きの時くらいだった僕は、自分の顔を見始めると面白くて仕方なかった。いつも自分の目で見えるのは相手の顔で、自分の顔は見えていない。自分の顔なのに自分が一番見慣れていなくて、そう考えると痒ところが掻けないみたいな感じが、胸の中で起きた。


 自分の顔をしっかり観察しようと僕は手鏡を見つめた。頭ではわかっているのに自分の顔についているパーツを観察するのが新鮮だった。僕には目がちゃんと二つあってその上に眉毛がある。まつ毛は長くて、黒目はキョロキョロ動く。鼻は一つあって、その下に口もちゃんとあった。僕が口を開けば、口の中にある歯も舌も全部丸見えになる。僕は鏡を見続けてしまって、周りのみんなはすでに描きだしていたのにまだ画用紙は真っ白だった。その図工の授業は全部で六回くらいだったと思う。鉛筆で絵をかいて、色鉛筆で色も塗った。


 僕は家に帰っても鏡を見て自分の観察をした。鼻の下を伸ばすと筋が伸びたり首の皮は良く伸びる。僕は自分の顔を観察しすぎたおかげで自画像の完成度は断トツで上手かった。


 金賞のリボンを付けられたからこれは事実だ。だから母さんが喜んでそれをリビングに飾った。もう外したっていいのそのままになっている。小学生の頃はそれがきっかけで鏡を見るようになった。


 だけどその時はまだ鏡の中の自分が物珍しくて、面白くて見ていただけだった。彼を「彼」と認識してはいなかった。小学生なりに女の子と付き合って交換日記もしていたし、二人きりで遊んだりもした。付き合ったなりに手を繋いだこともある。今思えば、それはあくまで性欲の無い友達としての好きと変わりなかったのだと思う。


 僕の「彼」に対する意識が変わってきたのはいわゆる第二次成長期のタイミングだ。思春期と言われるのは恥ずかしい。


 中学生になって僕の体には性欲というモノが生まれた。それ以外にも声変わりはしたし、身長も140センチだったのが中学卒業の時には160には伸びた。だけど体に毛が生え始めるのは遅かった。


 それはもちろん、僕の体だけで起きていることではなくて周りの友達も同じだった。友達の家で集まってエッチな動画を見たり、誰と誰が付き合ってキスをしたとか、隣のクラスの男子が別の男子の「モノ」を舐めただとか、そういうくだらない性に関したことばかりにみんな釘付けだった。僕もそれに混ざってはいたけれど、エッチな動画を見ても気持ち悪く感じて、誰と誰がキスをしていたってどうでもよかった。


それは僕の中で性的欲求のはけ口が他の誰かじゃない、鏡に映る自分自身だったからだ。


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