3話 不安な始まり
「あいつ本当に理解できてると思う?」
「うーん……どうだろ」
ライリーの溢した言葉に、アーチェは苦笑いした。
ギルドへ依頼を受ける前に、全員で今後のことについて話し合った。
Bランクの依頼の中でも難易度の高いものに挑戦してみること。
これまでの実績が認められ、Aランクへの昇格試験を受けられるようになったこと。
そして、ゼインのパーティー脱退のこと。
これから1ヶ月の間に何かしらの頑張りが見られない場合は、パーティーから抜けて貰うことを、リーダーであるヒューゴの口から伝えた。
パーティー追放を告げるヒューゴの顔は険しく、真剣なものだった。
それに対して、ゼインは目を丸めた後、にっこりと笑ってみせる。
「うん、分かった! 僕、もうちょっと頑張ってみるよ!」
本当に大丈夫か?
と、4人は微妙な顔をした。
ニコニコと笑っているゼインに、パーティー追放に対する危機感を全く感じなかった。
だからこそ、ライリーは冒頭のような呟きを溢したのだ。
1ヶ月後に追放する、というのが決まった次の日だからだろうか。
ライリーには、その笑顔が「追放なんて本当にしないだろう」という、楽観的なものに見えてしまった。
顔をしかめるライリーと、そんな彼の話を聞くアーチェに、ヒューゴの声がかかる。
「ライリー、アーチェ。もう出発するぞ」
「はーあーいー!」
「すぐ行くー!」
返事をした後、「また後で話そうぜ」「甘いものでも食べながら」と約束を取り付けてから、仲間の元へと駆け寄った。
「今日はどんな依頼受けたん?」
「トロールの討伐だ。近くの森で群れているところを発見されている」
「なーる」
最大で5メートルにもなる巨体の人型の魔物。
その巨体から生み出されるパワーとタフネスはかなりのものだが、動きは鈍重で頭の回転も鈍い。
1体や2体であればCランク冒険者パーティーでも討伐可能とされているが、数が多いとBランク以上の仕事になることもあるらしい。
「群れって何体くらい?」
「確認できただけでも7体だと」
「多っ」
ライリーは目を見張る。
最低でも7体。もしかすればそれ以上にトロールがいる可能性があるのだ。
「今回はライリーに頑張って貰うぞ」
「はいはい、陽動ね。任せとけって!」
「下手に足止めると魔法でぶっ飛ばすから気を付けろよー」
「おーいノヴァさーん? 味方誤射は頼むからやめてくれよー?」
「はは」
「何笑ってんだお前?」
ライリーがノヴァに突っかかっている中、ゼインはアーチェの隣に近寄っていた。
「アーチェ、さっきライリーと何を話してたの?」
「ライリーと? うーん……ゼインのことだね」
「え? ぼ、僕のこと?」
「うん」
「そ、そっか」
アーチェの言葉にゼインは目を丸めた後、顔を赤く染めた。
アーチェは先程のライリーの言葉と表情を思い出す。
「……ゼイン、頑張ってね。体力作りの相談とか乗るし……魔法のことだって、ノヴァとか、ギルドの教官とか、相談に乗ってくれる人がいるから」
「うん! 僕、頑張るね!」
ゼインは満面の笑みで頷いた。
次回投稿は3月18日、水曜日、0:00です。
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