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1話 パーティー追放

 ちょっと書きたくなったので書きました。

 とりあえず1章分は投稿します。

 ある宿の1室にて。

 そこには、1つの冒険者パーティーが集まっていた。


「ゼイン。約束通り、お前をこのパーティーから追放する」

「……えっ?」


 その言葉に、ゼインと呼ばれた青年は呆けた顔をした。そして、追放と言い放った同じパーティーのリーダーである男、ヒューゴをまじまじと見る。

 ガタイの良い、恵まれた身長と筋肉質の身体から放たれる凄みと威圧感は、ヒューゴよりも小柄で細いゼインの心を引き絞るような心地にさせた。


「……や、やだなぁ、ヒューゴ! そんな冗談を言うなんて珍しい! きみらしくないなぁ!」

「ああ。俺だって言いたくなかったよ、こんなこと」


 引き攣った笑顔、上擦った声でゼインは笑い飛ばした。

 冗談だと思っていた。タチの悪いジョークだと。


 しかし、返ってきた言葉はどこまでも静かで、真剣で、沈んでいて……冗談で言った言葉ではなかった。


 ゼインは冷や汗を掻いた。

 笑顔が消えて、焦ったような表情に変わる。


「い、いきなりそんなこと言うなんて酷いよ!」

「いきなりじゃないぜー、ゼイン」


 ゼインの言葉に答えたのは、部屋にある備え付けの椅子に腰かけている細身の男、ライリー。

 このパーティーで最も剣の扱いに長けている戦士である。

 彼は足を組み替えながら、軽い口調で言葉を続けた。


「1ヶ月前に伝えたろー? お前がこのまま仲間に貢献しないなら追放するぜってさぁ」

「貢献ならいつもしてる! ほら、武器や防具にバフをかけたり、魔物にデバフをかけたり! あっ、あとは回復魔法! 怪我とか治してるでしょ!?」


 ゼインは補助魔術師である。

 味方を強化する魔法、敵を弱体化する魔法など、そういう補助系統の魔法を主に扱う魔術師。


 故に、いつも魔物と対峙した時は、後方で仲間の力を底上げしたり、敵を弱体化させて、パーティーに貢献してきた。

 だから、ゼインは彼らの役に立っていると、頼りにされていると、心の底から信じていた。


「うんうん、確かにそうだなー」


 ライリーは大袈裟に頷く。

 ゼインはその様子にホッと息を吐いた。


「で、それだけ?」


 首を傾けるライリーに、ゼインは凍りつく。


「そ、それだけって……」

「ぶっちゃけるとさ、お前の魔法、あんまり意味ねぇなって思ってたんだよね。効果がバカ薄くてさぁ、おいら達が強くなったーとか、魔物が弱くなったーとか、そういう……なに、実感っつーの? それが全くねぇんだわ」

「そ、そんなっ!」


 足元の地面が崩れさる感覚。

 唇を戦慄(わなな)かせるゼインに、「だから1ヶ月の猶予を与えたんだがな……」とヒューゴはため息を吐いた。


「この1ヶ月の間で、お前にもっと仲間に貢献する姿勢や魔法の上達が見られたら、俺達の考えも変わっただろう。だが、予め伝えておいても何もせず、しかも追放の件を忘れている始末。……ゼイン、お前は俺達のことをなんだと思っているんだ?」


 怒気のこもった言葉に、ゼインは口をパクパクさせた。何か弁解の言葉でも言わなければ。そうは思うものの、どんな言葉で自分の思いを伝えればいいのか分からない。

 頭が真っ白になっていた。

 視線を部屋のあちこちに飛ばして、その先で見つけた2人に声をかける。


「あ……アーチェ! ノヴァ! きみ達も僕の追放には賛成しているの!?」

「当たり前だろ」


 即答したのはノヴァと呼ばれた、長身で丸眼鏡をかけた男。

 このパーティーの魔法使いである。


「というか、俺が追放の話は進めたから、今更撤回とかないわ。ナイナイ」

「は?」

「は? 何その反応。まさかとは思うけど、お前さん、パーティーの足引っ張ってる自覚なかったのか? パーティーで1番実力不足なの丸分かりなのに? あァ~なるほどなるほど、だからそんなに焦ってんのかァ。ふひ、ひひひっひひ! ほんっとォ~に今更じゃねェか、ゼインくんよォ~?」

「ノヴァ、やめないか」


 ヒューゴに窘められても、ノヴァは肩を竦めただけ。ゼインを嘲笑い見下す目はやめなかった。


 一方で、アーチェと呼ばれた女の表情は固く、暗いものだった。

 険しい表情をしたヒューゴを見て、明るくお調子者なライリーの全く笑っていない顔を見て、いつものように人を小馬鹿にしながらも怒っているノヴァを見て……最後に、ただ焦っているだけのゼインを見た。


「あ、アーチェ! アーチェは!? 僕のことを追放することに賛成してるの!? 本当に僕が役立たずだと思っているの!?」


 アーチェは顔を歪ませた。胸が苦しくて仕方がなかった。

 役立たず……という言葉が、脳裏を(よぎ)ったことが無いとは言えない。だからといって、それを面と向かって言えるほど、アーチェは人の心を失ってはいない。

 でも、確かにゼインはこのパーティーには似合わないのだ。明らかに実力が伴っていないのだ。


 それを、どうすれば相手にあまり傷つかせずに伝えられるのか。


 悩む彼女の背中に手が添えられる。

 隣に立つノヴァのものだった。


 アーチェがノヴァを見上げれば、彼はニッコニコの笑顔でゼインを指差す。

 俺が言ってやろうか。そう唇が動いたのが見えた。彼の目が自身を心配しているように見えた。


 アーチェは目を閉じて深呼吸した後、もう一度ゼインと目を合わせた。


「ゼイン」

「アーチェ……」

「私は、凄く悲しい」

「アーチェ……! そうだよね! 僕と一緒に冒険できないなんて嫌だよね!」

「こんな形で別れることになるなんて、思ってなかった」

「……、アーチェ?」

「相談とか、してほしかったなぁ。……ふふ、それも、今更だね」


 アーチェは悲しそうに微笑んだ。

 そして、覚悟を決めた顔で告げる。


「私も、ゼインの追放に賛成してる」

「っ……!」


 ゼインは今にも泣き出しそうな顔をしていた。涙目になっているが、歯を食い縛り、手を握り締めて泣くのを堪えていた。


 その間に、ヒューゴがゼインに近づき、小袋を渡した。


「手切れ金だ。この宿の金は俺達で支払っておく。1週間分だがな、その間に今後の身の振り方でも考えておけ。俺達は別の宿を取る」

「ほ、本当に、僕達はこれっきりなの……?」

「ああ」


 ヒューゴは躊躇いなく頷いた。


「お前がこれからも、冒険者として活動していくつもりなら、どこかで会えるかもな」


 ヒューゴはそう言って、ゼインに背を向ける。


「ライリー、ノヴァ、アーチェ、……行くぞ」

「おー」

「あいよー」

「……うん」


 4人は部屋から出ていく。

 部屋に残ったのは、ゼインただ1人だけだった。

 次回投稿は3月16日、月曜日、0:00です。

 よろしくお願いします。

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