提案
翌日、トラッソ赤城の拠点。
雇用関係の書類を眺めながら将来のことを考えていた。
ドアがノックされる。
「どうぞー」
「失礼します」
「あれ、木下くん、どうしたの?」
「実は提案がございまして。」
「提案?」
「レース、レースに出てみませんか?」
「レースってあれか?あの服とかの生地の…」
「そのレースじゃないです!モータースポーツの方ですよ!自動車のレース」
「あぁ、そっちね。にしてもどうして?」
「自分がもともとレーシングチームの戦略担当だったこともあるんですけど、レーシングチームとして活動を再開すればスタッフたちの雇用も維持できると思うんです。」
「それはたしかに名案だな…でも、車とかはどうするんだ?」
「そこは私のつながりを活かすんです。自分HAYABUSAモータースポーツってチームにいたんで。」
「なんか俺でも聞いたことあるぞ。」
「結構有名ですよ。自動車のパーツも出していますし。なんなら町中走ってるチューニングカーの足回りはHAYABUSAのものって言っても過言ではないくらいです。」
「そうなのか。」
「どうします?一応マシンとマシン、機材を運ぶトラックの手配は決定の一歩手前くらいまでできていますが。」
「そんなとこまで行ってるの!?早くない?」
「勝手に進めすぎましたよね。すみません」
「いやいや、仕事が早いね。ちょっとその、車見せてよ」
「これです」
木下のタブレットに表示されたのはフェラーリ488GT3 evo。
「これってフェラーリじゃん。」
「一昨年までHAYABUSAがスーパーGTで使っていた良質なマシンです。」
「これで俺達はどんなレースに出るんだ?」
「私達が出るのは、アジア最高峰のGTレースって言われているGTワールドチャレンジアジアのジャパンカップってシリーズに参戦する予定です。」
「なんか最高峰ってすごそうだな。」
「この大会にはアジアでも有数の強豪チーム、ドライバーが集まります。」
「それってどんな感じだ?」
「まぁ、わかりやすく言えば私達トラッソ赤城がAFCチャンピオンズエリートに出る感じですよね」
「そりゃあ、恐ろしいな。」
「だから、ドライバーも良い人を見つけています。」
「どんな人だ?」
「この人たちです」
「まず、峰原尚樹選手。彼はWECのLMGT3っていうクラスで4勝を挙げています。」
「それでもう1人はアマチュアレーサーの中でもかなりの実力を持つ秋山俊貴選手です。彼は今年スーパー耐久でST-Zクラスでチャンピオンになった実力者です。」
「来年から本格的に活動を開始していきます。」
「あれは平気なのか?スポンサーとか」
「そこは大丈夫です。2人の持ち込みのスポンサーでなんとか資金は確保できそうです。」
「俺達のスポンサーは全部いなくなっちゃったからな。」
「あはは…そうですね…」
木下の目は笑っていなかった。




