奇跡の連鎖は止まらない。Part1
日曜日、決勝。
過去最高に優勝を狙えるポジションからスタートする。
「峰原さん、1コーナー気をつけてくださいね。密集して突っ込むとかなり危ないです。」
「それは俺としても承知してるよ。」
「それと、今回はもてぎでの3位でハンデピットタイムが加算になります。」
「5秒だっけか?」
「そうです。」
「それだけお願いします」
「はいよ」
その会話を最後に峰原はマシンに乗り込む。
そして、マシンを準備したメカニックたちがピットに退避していく。
そのあとすぐにエンジンが始動する。
ぞろぞろとフォーメーションラップへとマシンたちが走り出していく。
『峰原さん、タイヤの温度注意してください。今の時期あまりタイヤに熱が入りにくいので』
「わかってるよ。大丈夫。」
そう答えたあとフェラーリを左右に揺さぶる。
ウィービングという行為。
これでレーシングカーたちはタイヤに熱を入れ、タイヤが機能するようにさせる。
そうして全車が1周を終え、ホームストレートに戻ってくる。
最終決戦の幕が上がる。
全車が一斉にレーシングスピードまで加速する。
そして迫る1コーナー。
ここでトラッソレーシングは大外刈りを見せ、首位に上がってみせた。
ピットでは拍手が上がる。
「いきなりオーバーテイクかぁ…峰原さんおったまげたな…あのコーナーで行くなんて」
そこからトラッソレーシングはリードを広げ続ける。
気づけば2位とのタイム差は9秒ほどになっていた。
そしてこのタイミングでレースが一気に動く。
後続のGT4クラスのポルシェがヘアピンで姿勢を崩し、そのままスポンジバリアに激突。
このマシンの撤去のためにセーフティーカーが導入となる。
『峰原さん!この周!この周!』
「OK!!」
セーフティーカー出動が宣言される2秒前にピットレーンに滑り込んだ。
すぐに作業が始まる。
もう彼らにとっては慣れたものだ。
今回は5秒のハンデが課せられているため少し余裕を持って作業を行う。
それでも彼らは4秒残しで作業を終えた。
今年の始めでは考えられない進化だ。
作業が終わり、コースへと戻っていく。
セーフティーカーが出動している間に作業が行えると作業でかかった時間のロスがかなり減る。
それが今回トラッソレーシングを味方した。
コース復帰時で2位。あと1台また抜き返せば1位だ。
秋山はセーフティーカー先導終了後、オーバーテイクの決行場所を考えていた。




