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2 妹フィオナとの出会いと、私に見惚れるケイン

ケインの妹の登場です。

 なんてのんびり構えていた次の日。報酬を預けるため街に出かけようと話し合っていたところ、エントランスにケインの妹が現れた。背が高く、ケインにそっくりな茶髪に濃い緑色の瞳。


 いつもは魔法で戦うこともできる文官としてお城で国の防衛について計画する部署で働いているそうで、なかなか帰って来ないらしく、ケインは急に帰宅した妹に驚いていた。


「あれ、フィオナ、急に帰ってくるなんて、何かあったのか?」


 妹には気安い口調なのね。可愛い、と言ってはなんだけど、こっちのケインもいいわ。


「ええ、昨日、異世界からドラゴンスレイヤーが召喚されてドラゴンを倒してくれたから、仕事の内容が整理されそうなの。まあ昨日はみんな動転していて彼には逃げられちゃったみたいだけどね。


 全く他にも魔物はいるのに、どうするのかしら。でもまあ上がいろいろ考える間、休暇がもらえて良かったわ〜…って…ねえ、兄様、その方はどなた?」


 上着を脱ぐ手を止めて私を見つめながらフィオナが尋ねる。それはそうだろう、帰宅したら見知らぬ女性が兄と一緒にいるのだから。


「あ…ええと」


 返答に困るケインの隣で妹さんに微笑む私。小細工してもきっとケインは隠しきれない。ならば嘘ではない返答をしておこう。


「初めまして、私、エミといいます。実は昨日ドラゴンスレイヤーの召喚に巻き込まれてしまって、異世界から来ました。神官や他の方々に気付かれる前に、お兄様のケインがうまくその場から逃がしてくださって」


 丁寧だけどかしこまりすぎない程度に、感じ良く、を心がけて話す。


 昨日のドラゴンスレイヤーの顛末は知っているようだから、異世界人は力はあるが非常識、だと思っているかもしれない。ケインを困らせてはいけない。


「まあ、そうなの」


 そう言いながら、妹さんは私をじっと見つめる。うん、ケインと同じ『鑑定』だろうね。でも気付かないふりをして明るく答える。


「はい、行くあてのない私にケインが住む場所を提供してくださって」


「ふーん…兄様がねぇ」


 ニヤリとケインを見ながらフィオナが言う。その口調は面白がっているような、それでいてケインに対しての優しさを感じるものだった。


「で、今からどちらへ?」


「街を案内してもらって、ついでに生活に必要な物を購入しようかと思っています」


 フィオナはそれを聞くと、パンっと手を叩いて微笑み


「じゃあ、街歩きにふさわしい服装にならなくてはね。アニー、私の街着を5、6枚運んでちょうだい!」


 とメイドに命じた。


 『おお、これが貴族の女性の振る舞いか!』と感動する私の手を引いて『颯爽』という言葉が似合う歩みで屋敷の奥へと進む。『フィオナ!』と呼ぶケインをよそに、


「エミ、私はケインの双子の妹なの。兄様は手のかかる神殿や王子に苦労していてね、本当は早く結婚して家を継いでほしいところなのにグズグズしていて困っているのよ。まあそこまで悪い人たちじゃあないんだけど」


 苦笑するフィオナの様子から、召喚された時の様子を思い出して、アレか〜と思う。


「とにかく、兄様が後を継いで伯爵になってくれないと、私の嫁ぎ先も結婚のあれこれを進めにくくて」


 話しているうちに、なにやらステキなお部屋に通される。それにしても、フィオナはもう結婚予定の相手がいるのか。


「ええと、フィオナ様は婚約者がいらっしゃると?」


「ええ、そう、いらっしゃるのよ〜。優しくてステキな人。今度紹介するわね。それから『様』はいらないわ、ただフィオナと。はい、じゃあこれに着替えましょう。それにしても、あなた、背が高いのね」


 フィオナはメイドのアニーが持って来た服の中から、緑色のワンピースを選んだ。はい、これ兄妹二人の瞳の色ですね、と心の中で苦笑しつつ受け取る。


「はい、でもフィオナ様もあまり変わりませんね?」


「うちは守りの血統だから魔法だけでなく身体も大きくて強いほうがいいの。なのでお父様もお母様も大きいわよ。私ももっと高くても良かったけどこればっかりは仕方がないわ。兄様はまだまだ伸びるかもしれないけど、私はあと少し、ってところかしら」


「えっ?まだ成長するの、ですか?あの、お二人の年齢を聞いても?」


「ええ、もちろん。私達は今22歳よ。身長は、そうねぇ、あと3年くらいは伸びるわね」


「22歳であと3年…成長期、ながっ!…いですね」


「ふふ、普通に話していいのよ。エミは何歳?」


「あー23歳です」


「あら、じゃあ丁度いいわね」


「何がですか?」


「なんでもないわ、こっちの話。さ、これにしましょう」


 彼女の言う『丁度いい』が何を指すかは言わずもがなだけど、今は言われるままに着替える。柔らかくサラリとした着心地のワンピースは白い丸襟が清楚な雰囲気で、ふくらはぎは隠れているが短めのブーツの上から少しばかり足首がのぞいている。


「うん、いいわ!アニー、前髪は横に流してピンで留めて。後ろはそのまま」


 私が自分でしても多分同じだっただろうヘアスタイルを指示するフィオナ。気が合いそうで嬉しい。そしてちょっとメイクをしてもらったら、楚々とした雰囲気の令嬢の出来上がりだ。一応歌劇団なんてものに入っているだけに、目鼻立ちはそれなりに人目をひくタイプですよ。


「フィオナ、ありがとう。こんなにステキにしてもらって、とても嬉しい!」


「私もよ、こんなにも兄様の…いえ、さあ行きましょう!」


 キラキラと瞳を輝かせるフィオナに手を引かれてエントランスへ行くと、私を見たケインがパカッと口を開けた。うん、見惚れてるね。


「あ…あ…え…」


「お待たせ。着替えてきたよ。フィオナが貸してくれたの、似合う?」


「も、もちろん!フィオナよりエミ様のほうが似合っている!!」


「ちょっとぉ、兄様、何それ。あー…でもまあいいわ。本当によく似合っているもの。さあ、お出かけでしょう?行ってらっしゃい。私は少し休むわ」


 ウィンクの後、ひらひらと手を振りながら自室へ行ったフィオナを見送り、私とケインは馬車に乗って街へと出かけた。

お読みくださりどうもありがとうございます。どうぞ最後までお付き合いください。

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