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投げて!投神サマ!  作者: 風塵
第1章 岩ばっかりの異世界でスローライフ(Throw Life)!
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47、ロケットパンチ

 金属の塊のようなロボット、じゃなくてゴーレムが地響きをたてながら超重量の体を動かして迫ってくる。


 ダブルヘッドと同じで、足は遅いが一発貰うとアウトな危険な奴だ。

 しかもこいつの防御力は非常に高い。

 並の金属製の武器では一筋の傷すら付かない。


 だが俺には八つ石がある。


 腰に結わえたビニール袋から石を取り出し、投気を込める!



「破壊してっ、角石先輩!」


 シュンッ! ギィンッ!  ビシッバキバキバキ…!


 ゴーレムは俺の投げた角石を片手の手のひらで受けた。

 腕はかなり早く動かせるようだ。

 しかし角石の破壊の効果で手のひらを中心にひび割れが発生していき、片手が粉々に砕けた。

 破片は強化ガラスが砕けた粒のような結晶状になって飛散している。


「流石っス角石先輩っ!」


 破壊できたのは肘から先だけだが、何回か繰り返したら倒せるだろう。

 円を描きながらバックステップして、角石を拾えるようにゴーレムを誘導させる。


 部屋内を半周ほどしたところで、ゴーレムの目が光り出した。


「んん⁈」


 砕けたゴーレムの欠片が動いてる…?

 欠片はコロコロと転がり、ゴーレムへと集まっていく。


 ヤバいんじゃないの、これ。


 欠片はゴーレムの足に触れると水銀のように液状になって吸い込まれていく。

 欠損した肘から先がその液状に覆われ、何事もなかったように腕が再生した。



 振り出しに戻ったぞ…。


 硬いわ、再生するわ、一発が怖いわで手詰まり感があるな。

 人型で、歩くのが遅いのがせめてもの救いだ。


 腕を壊してから再生するまでに時間があったから、それまでに全て壊してしまえば良いか。



「よしっ!」


 花崗と泥石を握り、投気を込めていく。

 足でさえ投気を込められるんだから、両手で込めながらバックステップを刻むのもできる。

 花崗で凍らせ、泥石で重力を加えて砕く。

 そして角石を拾って投げる。

 これを繰り返せば、勝てるはずだ。


「連続で、投げるっ!」


 シュンッ! ギィンッ!  シュンッ! ギィンッ!


「どうだ!」


 ゴーレムは投石に素早く反応し、復活した手で防いだ。

 凍りつき、そして砕けたが、また肘から先だけだ。


「ならば角石っ!」


 シュンッ! ギィンッ!  ビシッバキバキバキ…!


 拾い上げて投げつけた角石は反対の手で防がれたが、肘から先を破壊した。


 俺は石を拾う為に駆け出した!


「あ痛っ!」


 足の裏に激痛が走る。

 地面に散乱しているゴーレムの腕が砕けた破片だ。

 それが忍者のマキビシのように俺の足の裏に刺さっている。


 靴なんて持ってないし!


 破片を抜いていると、ゴーレムの目が光り、欠片が集合して腕が完全に復活しやがった。

 俺もすかさずアクエルオー様で治療をしておいた。


「そして、また振り出しか」


 振り出しだが、角石、花崗、泥石はゴーレムの足元に落ちている。

 拾いに行きたいがあの手の素早い動きを見ていると、手の届く範囲に入るのは危険だ。


 金属の塊だから赤石や電気石はダメージがないように思える。


 あとは縞石の切断だが、こいつの硬さに通じるだろうか…。

 あの関節部のボールジョイントぐらいなら斬れるかもしれないな。

 やってみよう。


 投気マシマシだ!


「絶対切断!縞石ぃっ!」


 シュンッ! バギィンッ!


 縞石は見事に関節部のボールジョイントを切断した!

 腕が大きな音を立てて地面に落下する。


 目が光る前に畳み掛ける!


 俺はゴーレムに向かってダッシュ!

 攻撃を貰わないように、破壊した腕側に回り込む。

 大きな腕が風切音をあげてすぐ横を通り過ぎる。

 足による踏みつけはしないようだ。

 やってくれたらひっくり返せそうなんだけどな。

 あ、しかし、人間の関節の可動域は完全に無視していやがるから、そこは注意だ。

 上半身が一回転しても平気なようてす。


 ゴーレムの攻撃を縫って石を回収。

 そして角石に投気を込めていく。

 死と隣り合わせの危険なダンスだ。



 これは攻撃を避けているのではない。

 投げる為の助走なんだ。

 投げる為のステップなんだ。


 俺は大きな投げの中の一環にいる。


「ははっ楽しくなってきた!」


 俺の動きはどんどん早くなっていく。

 ゴーレムの攻撃の予兆が見える。

 余裕を持って躱しながら、投げる!


「そこだ!」


 シュンッ! バギィィンン!


 ゴーレムは助走の効いた投げに反応し切れずに、投気のたっぷり籠もった角石を二の腕にくらった!


 バシッ!バギバギバギバギ…!


 咄嗟に頭部を庇ったようだが、上半身の広範囲に渡ってひびが入り、崩れていく。


 次だ!


「あっ!」


 二投目に移ろうとしたとき、ゴーレムの目が光っているのに気が付いた。

 そして迫る死の気配!


「ぬおっっ!?」


 ズガッッ!!







「な…、何が起こった…?」


 左脇腹が抉られて、吹っ飛ばされたぞ…。


 ゴーレムを見ると、絶賛カラダの修復中である。



 確かあのとき目が光った後、斜め後ろから何かが飛んできた。



「腕か…」


 あれだ、ロケットパンチだ。

 やられたな。

 投げに入っていた為か視界が拡がってて、ギリで直撃は避けられた。


 なのにこのダメージよ!


 アクエルオー様、治療を宜しく!





「そうして、また振り出しに戻る、と…」


 しかし相変わらず無傷のゴーレムに対して、俺はダメージがある。

 ジリ貧か…?


 いやいや、情報が揃ってきた俺のほうが有利!


 一つ気になる点がある。

 それは頭部にダメージが入るのを嫌っていることだ。


 目が光ることによって修復や切り離された腕を動かしている。

 目か、それと同じく光る額の模様を潰せば再生出来ないんじゃなかろうか。

 でも顔を潰すには素早く動く腕が邪魔なんだよな〜。


 素早い腕。

 飛んでくる腕。


「腕、か…」


 よ〜しっ、やってやろうじゃないか。

 何度目の仕切り直しか忘れたが、勝負といこうじゃないか。



 先ずは石の回収からだ。

 いや、投げるついでに拾うのだ。

 そうしたら、ほら、避けられる。


 振り下ろされる巨大な拳。

 その一撃一撃は俺を軽くぺちゃんこにする力がある。

 投げステップで当たらない場所に移動し、投げる隙を探す。

 石が落ちてる。

 俺のだ。

 拾っとこう。

 ちょうどいい、これを投げてやる。


 投気!



「斬れ!」


 シュンッ! バギィィン!


 縞石で肘を切断!


 足で踏んで投気を流していた花崗を足の指で掴んで投げる!


「凍れ!」


 シュン! パギィィンッ!


 投げの威力は弱いが、もう一方の腕を凍らせるのに充分な投気を纏っていた。

 俺は前転し、ゴーレムの足元に転がっていた泥石を掴む。


「潰せ!」


 シュンッ! バリィィィンッ!


 凍りついた腕は高い音を立てて、粉々に砕け落ちた。


 両腕を失い、危機と判断したのか目か光る!


 足元に破片がゴーレムに集まると同時に、切断された腕が宙に浮く。

 そして俺に目掛けて高速で打ち出された!


 ドンッ!


 早いっ!


 高速回転する腕は弾丸のようなスピードで飛来する。


 なんちゅーもんを()()()()()んだ!


「ロケットパンチは投げるものっ!」


 バッギィャャーーンッ!!



 金属が互いに押し潰される不快でけたたましい音が部屋に響き渡る。


 それが収まり静寂が訪れた頃、頭部を己のロケットパンチで完全に破壊し尽くされたゴーレムが、石像のように微動だにせずに佇んでいた。





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