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投げて!投神サマ!  作者: 風塵
第2章 街に着いてもスローライフ(Throw Life)!
133/177

133、チキチーキ1号

 無限に繰り返される0と1の羅列の世界。

 虚無の中に生じては消滅する光。

 その光の明滅は巨木の【根】のように複雑に絡み合い、1つの世界をすっぽりと覆い尽くしている。


 この世界に住まう人々はこの根に捉えられていた。

 根によって行動を支配されているのだ。


 その根に流れる明滅の中にまたひとつ所属不明なノイズが混ざった。

 それは届く筈のない、別の根からの明滅なのだ。

 膨大な光の中で拡散され、何の意味もなく徒に消えていくと思われた。


 しかし数十億という一人の中で、幾人かには確かに届いたのだ。


 気づいたのだ。



 やがてそれは人々によって繫ぎ合わされ、うねりを伴った大きな光となる。

 仮初の生命を宿したかのように脈打ち、来るべき時を待つのだ。


 光の揺籃から生み出されるのは……



 ………







「これは見事な壊れっぷりですね〜!イヒヒヒヒ」



 鬼と化した夫、イィッタールの有難いお説教を拝聴すること、一時間ほどが経過した頃だろうか…。


 耳に障るかん高い笑い声が壊れた道場内に響き渡った。



 彼はこのオ・ジィオー王国が誇る頭脳、耳長族の練金術師アオボだ。


 練金術師というよりマッドサイエンティストというほうが相応しいけどね。


 突拍子もない危険な実験を結構な頻度でやらかすので、中央に置いておくのはリスクが高過ぎると判断されて辺境のオウブルに所属させられたらしい。

 実際、新たに出現した「勇者」という職業を研究しようと、イィッタールと私を研究室に監禁して様々な実験したし…。

 珍しくイィッタールが切れてアオボをボコボコにして脱出したけどね。

 あの事件以来アオボにはちょっと苦手意識があるのよね…。



「アオボ、君が研究室を出てこのアルターまでやってくるとは珍しいこともあるもんだね」


 過去にトラブルがあったことを微塵も感じさせない涼しい声でイィッタールは彼に話しかけた。


「イヒィッ…、オウブルのギルド長に頼まれましてね

 私が開発したアーティファクトを届けに参りました」


 アオボもイィッタールには苦手意識があるのか、笑い声を引っ込めて優雅に挨拶を交わした。


「それにこのアルターにはヒジョーに興味深い研究対象の投神様も来ているというではありませんか!

 待てど暮せどなかなか私がの研究室に来てくれないので、私のほうから出向いてきたんですよ〜」


 そう言うと分厚い眼鏡の内に狂気を宿した目をぐるりと巡らせて(ワッタール)を凝視する。


「投神様〜、研究室でずっとずっとずっと待ってたんですよ〜ヒドイじゃないですかぁ!

 約束しましたよね、来てくれるって!

 あなたの為に素敵なアーティファクトを作成したというのに!

 見たい?見たいでしょ?

 それはそうとこの道場を破壊したのは投神様ですか?

 どのような行為の結果こうなったのですか?

 それをもう一度再現できますか?

 通常、道場の施設は女神の加護により内側からは破壊不可能と云われております

 試合時の死亡と同じく、破壊が()()()()()()()復元するんですよ

 それなのにどうやってこれほど破壊したんですか?

 教えてください!」


 出た!アオボの高速質問攻め!

 頭の回転が速すぎて次から次へと疑問が湧いてくるようで、一般人には答えようにも矢継ぎ早に質問され続けたら答えようがないのよね。


「投ゲタダケダ」


 か、簡潔に答えたわね…。

 実際そうなんだけど。


「投げただけ?」


「ソウダ

 投ゲはスベテをカイケツスル」


「全てを…!」


 流石のアオボも面食らっているわね。

 私たちも渉の力は訳が分からないもの。


「アオボ様、先ずは任務を遂行して下さい」


 アオボと共に現れたギルド職員らしき忍者が促す。


「あ、あぁ、そうですね…

 ですがモノがモノなので、人払いをお願いしましょうか」


「アオボがそんなこと言うなんて、よっぽどのモノなのね」


「イヒヒヒッ、これで世界が動き出しますよ…!」


「恐怖しかないわね…」

「そういうことでしたら場所を変えましょう

 こちらへ」


 イィッタールは勇者の私室にみんなを招くようね。

 テンゲインチルドレンたちは自身の敗北と、鬼と化したイィッタールやアオボの出現に呆気にとられて壊れた道場内に座りこんだままで動き出す気配はない。


「マタ、ヤロウ」


「ヒッ」


 追い討ちをかけるかのように渉がルアンたちに声をかける。

 みんなの心に恐怖を植え付けたようね。

 三大聖騎士と持ち上げられて傲慢なところがあったから、良い薬になったんじゃないかしら。






「さて、依頼の品とやらを見せてくれるかい?」


 勇者の私室の扉が閉められ、強力な結界が張られたのを確認してイィッタールは口を開いた。

 勇者二人とアオボ、そして渉、チュイ様、竜人族の娘、それにギルド職員の忍者2名がテーブルを囲んで座っている。

 このメンバーには話しても良いというギルドの判断のようね。


「先ずはギルドの方から報告させて頂きます

 私はオウブルギルド職員の忍者、アンと申します

 こちらをご覧ください」


 そう言うと収納から一枚の金貨を出してきた。

 女性の横顔のレリーフが刻印されているという、よくあるタイプの金貨である。


「ジャハン様から魔石式遠距離通信機(トランス・シーカー)にて報告があったと思いますが、この金貨が属性を操ることができるアーティファクトです」


「これが!」「なんと!」


 テーブルに置かれた一枚の金貨にみなの視線が集中する。


「このジャヌースの金貨は終絶に至る道にて未だ見ぬ地平線パーティーが悪のパーティーを撃退した際に奪取したものです」


「うん、報告があったわ」


「これには善の面と悪の面がございまして、装備する際にどちらかを選択できます」


「選んだ面がステータスの属性に反映されるという訳か…」


「こんなどこにでもありそうな金貨を所持してるかをイチイチ調べるのは難しいわね」


「収納に入れてしまえば尚更調べられない」


「属性が信じられなくなるわ…」


 この世界は悪行を重ねれば属性が悪となる。

 それは神が行うこれ以上ない確然たるジャッジであり、絶対的なものだ。

 それを前提に法が定められて社会が回っているのに、偽れるとなるとどれほど大きな混乱が起きるか想像もつかない。


「そしてこれを既に悪のギルドが活用していることが推察されます」


 ギルド職員の言葉に、みなはもう言葉を発することができずに押黙った。



「安心してください!

 対抗手段を開発しました!

 偽貨探知機チキチーキ1号!どんっ!」


「うわっ?!」


 アオボは血走った目を見開き、収納からアーティファクトをテーブル上に出現させた!


「こ、これは?」


「ジャハン様の要請により作成致しました、ジャヌースの金貨を探知するアーティファクトですっ

 このジャヌースの金貨は金貨にして金貨に非ず!

 SP開放で銀貨になりますが、それも銀貨にして銀貨に非ず!

 偽りの硬貨なのです

 面白いのは金貨や銀貨にない特別な波長を放出しておりまして、特殊な音波を当てると共振反応を起こすことが分かりました

 それを利用してジャヌースの金貨を使用しているかを判別することが可能でございます

 ちなみに使用していれば、その人物からも波長が出ておりますので、たとえ収納に入れていても検知可能です

 どうです?素晴らしいでしょ?」


 前の世界の大型銃器のような形状のアーティファクトを愛おしそうに撫でながら、アオボは一気に説明した。


「す、素晴らしいね、アオボ」


 イィッタールが褒める。


「でしょでしょ?」


「探知可能な距離や範囲はどれくらいなの?」


「良い〜質問ですねっ!

 実演してみましょう」


 そう言うとアオボはアーティファクトを手に持ち、部屋の端に行く。


「それでは!

 探知機チキチーキ、稼働!」


 アオボは銃を構えるようにしてスイッチを入れる。

 そして銃口にあたる部分をゆっくりと巡らせた。


 チッ  チッ  チッ  チッ チッ チキチキチキチーキ!


 銃口をテーブルの上の金貨に向けたときに音が大きくなった。

 なるほど、ソナーや金属探知機のソレだわ。

 アラート音が少し間抜けだけど…。


「これなら割と一度に大人数を検査できるんじゃないかな」

「各城門に一台は配備したいわね」


「それでは金貨を装備して収納に入れた状態でやってみましょう!」


 ギルド職員のアンが金貨を装備し、ステータスが変化したのを確認してから収納にしまう。

 その状態でも探知機は問題なく反応することが証明された。


「アオボ、これを量産することは可能かい?」


「もちろんでございますよ、イィッタール様

 動力に高純度魔石を使用しますが、設計図さえあれば高レベル錬金術師と高レベル鍛冶師の連携で作成できるでしょう」


「よし、早急に手配しよう」


「この1号機はかなりの高純度魔石を使用してますので、有効探知範囲が広いのです

 数ヒロに限定したものにすれば安価で簡易なものに改良できると思います」


「なるほど、そちらを量産しようか」


「むむっ?」


「どうした、アオボ?」


 探知機を操作していたアオボが訝しむ。

 アオボは探知機を構え、銃口を色んな方向に巡らせた。


 …チッ チッ  チキチキ… チッ チッ チッ…


「探知範囲を最大にしてみたんですが、どうやら付近にもあるようですよ

 ジャヌースの金貨が…」



「なんだと…!」


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