表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
投げて!投神サマ!  作者: 風塵
第2章 街に着いてもスローライフ(Throw Life)!
128/177

128、先生やっちゃって下さい!

「マジダンのシリーズがそんなに出てるのは分かったけど、虚月が出てる以上、この世界は3作目がベースとなっているはずだわ」


「その後のシリーズに虚月が象徴として出てこなければええんやけど

 フィフドラの龍晶石みたいにな…」


 そう言うと両親は俺のほうを少し恨めしげに見る。


「悪いがフィフドラ1以外のゲームの知識は全くないぞ

 そんものがあっても良い投げができる訳じゃないし」


 …何故か憐れむような目で見られた。

 解せぬ。


「虚月、龍晶石ってのは何のことだ?」


「……虚月は夜空に薄っすらと輝く、常に満月のほうの月があるでしょ?あれのことよ

 それと龍晶石はフィフドラで出てくる、ほら、あの龍が守ってる水晶よ

 1では大した意味はなかったけど、シリーズを重ねるごとにフィフドラの象徴みたいなモチーフとして全作に重要なものとして扱われたのよ」


「あぁ〜、あれね!そんな名称だったんだ」


「虚月はマジダンの3作目に出てくる第二の月でな、敵の本拠地があるっていう設定やねん」


「ほうほう」


「ゲームでは虚月に乗り込んでラスボスを倒すっていうのがストーリーなのよ」


「ロケットでも作るのか?」


「マジダンはね、基本的にダンジョンに籠もりっぱなしのゲームなのよ!

 細かいことは描かれないの!」


 急に母さんの怒りにも似た感情が爆発する。

 なんか怖ぇーな。


「ゲームではダンジョンを通ったら何故か虚月に行けんねん」


「あのゲーム史に残る恐ろしいダンジョン…

 セーブポイントが全然なくて何度やり直したことか…!」


 母さんが血の涙を流しているが放っておこう。


「学者曰く、この世界の虚月は魔人の本拠地なんだけど、実際の物質として存在してる訳ではないみたいやねん」


「?」


「パラレルワールドって知ってるか?

 近くにあるけど同じ次元に乗っかってないねんて

 それが本来交わるはずのない別次元の異世界が徐々に顕在しようとしてるらしいねん」


「SFか?俺には分からん世界だな」


 投げに全く関係のない世界は投げ遣りに考えるのが俺のモットーです。

 自分の力で、生身で投げることに意味があるのだ。

 UFOは興味ないが、円盤投げは大好物です。


「ワタルが前の世界でどのような生き方をしてきたのか、何となく分かってしまうわ…」


「昇と似とるな…」


「お師さんにか?

 …なんか嫌だな」


 あの常識のない天現捨投流バカと同類だなんて…。


「気づいてる?虚月はどんどん近づいてきてるのよ

 虚月とこのマザージェルが接するときに大崩壊が起きると云われているわ…」


「二つのしゃぼん玉がぶつかったら、だいたい二つとも割れるやろ?

 たまに二つが引っ付くだけで済む場合もあるけど…

 学者の説明ではそんな感じらしいで」


「ヤバいじゃん」


「そしてそれは魔人が人為的に起こしているらしい」


「魔人は玉砕する気か?」


「しゃぼん玉が引っ付く方に賭けたのか…」


「別次元の月なんて攻撃できないのなら、人間達にはどうしようもないんじゃない?」


「いいえ!

 EXダンジョンのダンジョン・コアを破壊すれば、このマザージェルと魔人の世界を繋ぎとめる楔を断ち切ることができて二つの世界は交わらない」


「と、女神に言われたんや

 転生する際にな」


「へぇ〜…」


 女神には会ってないから、ちょっと分かんないっす。


「私たちは何度もEXダンジョンに挑戦したんだけど、全て失敗したわ」


「サポーター含めて強力なパーティーメンバーを募集したんやけど、なかなか集まらへんかってん」


 父さんの目線がちらりと頭の上に向けられた気がする。


「それならばど、冒険者学校を創設して冒険者を育むことにしたの」


「あの頃は魔人の侵攻も激しくて戦争にも駆り出されたし、いつの間にか地位が上がってしもてEXダンジョンに潜る時間も無くなってしもたけどな」


「実際に目の前で被害を受けてる人々を放ってダンジョン籠もるなんてできなかったわ…

 ゲームじゃあるまいし」


「投神先生、EXダンジョンへは私もお供しますっ!」


「わっ、びっくりした!」


 翡翠が目を爛々と燃え上がらせて口を挟んだ。

 この世界の人々がEXダンジョンを特別視する意味は理解したけど、イマイチそんなテンションになり切れないんだよね。


「竜騎士さん、貴方はなかなか良さそうね」


「って言うか、ワタルは無職なんやろ?

 女神様から加護も貰ってへんのならEXダンジョンなんか絶対無理やで」


「投神先生は、私より遥かに強い!

 勇者様がたに匹敵すると思います!」


「へぇ…!」


「こらこら翡翠サン、煽らない」


 前世、それも前の世界のことだろうけど、流派の使い手は好戦的で壊れた人が多いんだから…。

 記憶の中の両親はそんな殺伐としたところは一切なかったんだけど、目の前の二人からは強烈な武のオーラを感じる。


「事実を言ったまでです

 投神先生は職業や魔技に囚われている者には至ることができない境地におられますから」


「……強制力ガン無視やな、この娘」

「面白いわね、ひとつ手合わせ願いましょうか…」


 ほら、武人の魂に火がついちゃったじゃんか!

 翡翠はなんで「先生、やっちゃって下さい!」みたいな顔してるの!


「あはははっ、面白そうだけど来客みたいよ?」


 チュイは頭の上から飛び立ち、部屋の中をパタパタと飛び回った。

 そういえば確かにこの部屋を目掛けて4、5人の者がやってくる気配がする。


 メイドさんの引き止める声が聞こえるが、静止を振り切り扉が乱暴に開けられた。

 これはこの世界的にオッケーなの?


「ひどいじゃないか、お父さんお母さん!

 散々僕たちを待たせておいて、どこの馬の骨とも知れない男と先に会うなんて」


 馬の骨はこの世界でもネガティブな表現に使われるのね。

 モンゴルのバクシが聞いたら呆れるだろうな。

 それとも自分の馬を把握してない愚か者が居るのを不思議がるだろうか。


「ルアン!勝手に入ってくるんじゃない!」


 父さんが入ってきた4人の若者たちを叱る。


 お父さんお母さんと呼んだから孤児院や冒険者学校とやらの出身者なのだろうか。

 デザインや素材は違うが、それぞれ首元にストールっぽい物を巻いている。

 ん?一人だけ見たことがあるな。

 名前は覚えてないけど。

 どうもこの世界の人々は初対面や挨拶の際に自分の名前を名乗らないような気がする。

 まぁ前の世界でもそういう国もあったか。


「†昇龍の三大聖騎士が揃って何事よ

 それにバリン、珍しいわね

 貴方が表立って出てくるなんて」


「人聞きの悪いこと言わないでよ、母さん」


 バリンね!酒場で会ったこの策士はバリン。

 覚えました!


「俺は必死で3人を引き留めようとしてたんだぜ?」


「ものは言いようだな、バリン」


 背が高くて筋骨隆々の男が低音ボイスで指摘する。

 背中にこれまた巨大な盾を担いでいるのに鈍重そうな感じがしない。

 フィジカルでは1ミリも勝てんな、こりゃ。


「私たちを差し置いて優先して会った者を見定めに来ただけですよ、お父様お母様」


 貴族だな!知らんけど!

 優雅に金色の長髪を靡かせた王子様っぽい男がこちらをチラリと見やり、抑揚の効いた声を響かせる。

 獣人族のようで犬っぽい姿だが、イケメン具合を損なっていない。

 アフガンハウンドのような豪華な美しさがある。


「無職の何の力もない怪しい男がお父さんお母さんの貴重な時間を奪おうなんて許せないだよ、僕は!」


「私たちが呼んだのよ、ルアン」


「だったら面会を辞退すべきだね、持たざる者は!」


 これはディスられているようですぞ。

 ただ一切腹は立たない。

 何となく父さん母さんへの愛情が故の暴走に感じるからだ。

 この世界で両親が紡いだ、俺の知らない“絆”を見せつけられて少しだけ淋しくなった。


「投神先生は強い

 貴様らよりもな」


 ですよね先生っ、みたいな顔でこっち見るな、翡翠!


「竜騎士のお嬢さん、面白い冗談ですね…!」


 ほら〜!

 美しいアフガンハウンド王子の鼻面にシワ刻まれちゃったじゃんか!


「じゃあ、僕たちが試してあげるよ!

 お父さんお母さんの時間を奪う程の価値がある奴なのか!」


「良いわね!やりましょう!」


 母さんまでノリノリっ?!

 やっぱり流派の使い手のノリだ〜。


「ほな“道場”に移動しよか」


 父さんが軽い口調で宣言した。


「道場?

 あんのか?」


「もちろんだ」 


 二人とも異世界に転生しても流派の使い手としての魂は失っていなかったんだ…!


「くくくっ、上等だ

 やってやらぁーな」


 俺は嬉しくなって盛大に指をボキボキと鳴らすのであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ