127、フィフドラじゃなくてマジダン
「マジダンやってないですって!親の顔が見たいわ!」
目の前にいますけど。
顔変わっちゃってるけど。
「落ち着いてアッケミー
何か深い訳がありやがるはずでゲス」
お前も落ち着け。
「ゲームをやる時間なんてなかったんだよ
修行に明け暮れてて…」
「…!」
「まさかノボゥルのヤツ、育児放棄して…」
「違う違う!
流派の修行以外にも、投擲種目とか各種投げにまつわるスポーツの練習をしてたんだよ
自主的にな!」
「投げバカ、でんな…」
「ありがとうございます、褒め言葉です
でもフィフドラの1だけはやったぞ」
「そっちかーい!」
「フィフドラの次はマジダンやるのが正しい子供の成長過程だわ!そうやって大人の階段昇るのよ!」
「それは違うと思います
ってか父さん母さんて、そんなゲーム好きだっけ?」
「あ〜、要人の護衛任務って待機時間が結構ありまんねん
ほんで、控室でやる事ないからテレビゲームをよくやってましてん」
「言っとくけど母さんはマジダン派だからね!
フィフドラも勿論全部やったけど!」
「はあ…」
「母さんはマジダンが打ち切りになることに反対しとったし、署名活動やら裏で政府に圧力かけたりして…」
「ストップストップー!裏歴史は暴露しないで!」
「もう時効でんがな
世界も超えとるさかいに」
なんちゃって大阪弁に落ち着くのか、親父。
「そんな事より!
この世界はマジダンの世界を踏襲してるのよ」
「その逆かもしれへんけどな」
「魔術とか職業とか?」
「もちろん
そういうシステム以外に歴史とかも共通してるのよね」
「ふ〜ん」
「で、どこまで出てたんでっか?」
「何が?」
「マジダンのシリーズは何作目までなの?」
「え〜そんなの忘れちゃったよ
開発終了したっていう話しは聞かないから、まだ続いてたと思うけど…」
「マジ!?
大事なことなんや!思い出してんか!」
「えぇ?!っていわれても…」
「私たちが前の世界でプレイしたのは3作目までなのよ」
「その3作で起こったイベントの全てが発生してまんねん」
「そして私たちの知らないイベントもどんどん発生してきてるのよ」
「新作のマジダンの情報があれば、この戦争を優位に進められるかも知れまへんねん」
「うーん…、忍者先輩なんて言ってたかな…
あ、あれはフィフドラの話しだったか?
確かフィフドラが14か15ぐらいが発売になるって騒いでたな…
マジダンはそれより1つか2つほどシリーズ数が少なかったはず…!」
「えっ…!フィフドラってそんなに出てるんだ!」
「マジダンでも12とか13か発売されてるのか…!」
「あぁ日本を代表するRPGとして世界的に有名だぜ
確か映画とか実写とかもあったんじゃなかったかな?」
「「………」」
両親は顔を見合わせて押し黙ってしまった。
まさかそんなに続いているとは思わなかったようだ。
「海外の色んなとこに行ったけど日本のゲームは人気で、よくその話しを振られたな…」
ゲームはやらんって投げ遣りに答えてましたが。
「そんなに続いてるんじゃ、私たちの知識じゃ未来はどう転ぶかなんて見通せないわ…」
「そうでんな…」
「フィフドラとマジダンは互いにライバルとして切磋琢磨して面白いゲームにしようと頑張ったって、忍者先輩言ってたな」
「そうね…」
「でも、そのあと会社が合併して1つの会社になっちゃってね、特色が失われるって忍者先輩嘆いてたな…」
「!!!」
「いま何て?!」
「だからフィフドラとマジダンの会社が1つになったんだよ」
「なんでそんな大事なこと、先に言わないの!」
「えぇ〜…」
「マジダンの世界にフィフドラの要素が加わる可能性があるかもしれへんで!」
「そんなぁ
ここがゲームの世界を元に作られたって確定してる訳じゃないんだろ?
考え過ぎじゃない?」
「いや…この世界で100年生きてきて確信しとんねん
この世界はマジダンの世界とリンクしとるてなぁ
感じたことないか?
ゲームの設定、システムに沿うようにする“強制力”を」
「きょ、強制力……?
って、そんなことより父さんって100才なの⁉
そっちのほうがびっくりだよ!」
「そこに驚きますのん?」
「だってどう見ても俺より若いじゃん!
ピチピチの20代前半にしか見えん!」
「はぁ…
この世界の冒険者はダンジョンに潜って宝箱で若返さを保つのが常識なのよ」
「ということは母さんも…?」
「そう、御年百歳!
ってレディに年を言わせんじゃないわよ!」
「宝箱で若さを保つことはできるんやけど、寿命までは伸びひんねんで」
「え?」
「そう、そして私たちは普人族
前の世界の人とほとんど同じ
もちろん寿命の長さもね…」
「じゃ、じゃあ…」
「せやねん
いつお迎えがきてもおかしないねん」
「……マジか」
「生きてる間にワタルに会えて良かったわ…」
「ちょ、不吉なフラグ立てんなって!」
「フフッ、私たちは結婚したんけど、血の繋がった子供はつくってないねん」
「私たちの本当の子供はワタルだけだから…
それにまた子供を残して死んでしまったらと思うと…」
「………」
「その代わりに学校や孤児院を作って、血は繋がってないけど私たちの子供はいっぱいおんねんで」
「あぁ、何人か会ったよ」
「自慢の子供たちよ」
「………そうか」
せっかく会えた両親の寿命が尽きかけているという事に、しんみりとした気分になってしまう。
また、置いていかれるのか…。
「その女神様という存在に寿命を伸ばしてもらえないのか?」
「……私たちは長い間、ずっとずっと戦ってきたんや」
「今生でも精一杯やってきたから、無理やり寿命を伸ばしてまで戦いたくない、かな」
その時の二人の目は確かに血気盛んで活力に満ちた若者のものではなく、ある種の悟りを開いたような透明な静寂だけが宿っていた。
やり切った、のだろう。
何の迷いもなく、先人たちに胸を張って会いにいけるのだ。
羨ましい境地だ。
「ワタルの顔が見られたいま、もうこの世界に悔いはないで」
「あ、でも孫の顔を見せてくれるんやったら、もうちょい頑張るわよ!」
「せやな!それやったら気張るっちゅーねん!」
「ま、孫?!」
「そ!この世界は親が居なくてもサポートが充実してるから、どんどん子供を作っちゃって!」
「一夫一婦制とか、みんな気にしーひんから!」
「え…、ちょ…」
「残酷なようやけどはっきり言うとくわ
前の世界に帰る手段はないで
腹くくって、この世界に根を下ろしぃや」
「なっ…!」
「隣の竜人族の娘、かわいいじゃない
彼女?
ワタルはいわゆる古代種ってことになるから、異種族間でも子供をバンバン作れるかもよ」
「は?」「えっ?」
黙って話しを聞いていた翡翠は急に話しを振られて戸惑っているようだ。
「現在の人類種は古代種から分岐したと考えられてて、古代種のみ交配が可能なのよ」
「その昔、実際に先祖返りで古代種として生まれた男がおってな、色んな種族と交わって子を成したということや」
「生まれてくる子は母親の種族になるらしいわよ
あ、妖精族だけは無理だからね」
「あ、当たり前でしょ!
っていうかアンタたち不謹慎よ!不潔よ!」
頭の上でチュイが怒っている。
「投神、言っておくけと一般の人々は一夫一婦制だからね!
冒険者がおかしいのよ!
すぐに子作りするんだから…」
「チュイ様、それは冒険者が常に生命の危険に晒されてるからですよ…
生物の根源的な行動原理は“子孫を増やす”こと
どこの世界でも個々が増える為に頑張った結果、バランスが保たれているのです
そのバランスを、積み重ねてきた生命の循環を無視し、破壊し、侵食する魔人どもの危機が目の前にあるのです
どんどん増えなければ滅亡します」
「ワタル、サクサクと子作りしなさい
魔人どもをやっつける為にも」
親父……、普通に喋れるんかい。
そして母さんの表現はどうかと思います。
それにしても魔人に対する根深い憎悪を両親から感じる。
最近流れ着いた俺には理解できない問題だ…。
話せば判る、みたいな事を軽々しく口にしてはいけない。
彼らの歴史を否定することになる。
前の世界では感じたことのなかった両親の負の感情の発露に、少しだけ隔たりを感じてしまう自分がいた。




