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投げて!投神サマ!  作者: 風塵
第2章 街に着いてもスローライフ(Throw Life)!
121/177

121、最大の危機

「もう!これは一体どういう状況なのよ!」


 妖精女王という二つ名を持つ妖精族のチュイが、投神の周りを激しく飛び回っている。


「よ、妖精族!」

「珍しい!」

「わたし初めて見た!」

「てか、“妖精女王”じゃん!」

「かわいい!」

「持って帰りたい…!」

「ば、ばか!失礼だぞ!」


 チュイの登場に若い冒険者たちはさらに盛り上がる。


「うるさーいっっ!

 ちょっと“同期”するから静かにしてて!」


 若い冒険者たちは高レベル冒険者であるチュイの剣幕に怯え、静まり返った。

 チュイは投神の頭の上に立って目を閉じる。


「………同期完了

 投神、あんた数日でえらい暴れっぷりね…

 魔人を2体も倒しちゃって」


「「「に、2体?!」」」


「チュイ、キュウにキエテシンパイシタゾ」


 またもや騒ぎ出しそうな冒険者たちを制して、投神がチュイに話しかける。


「あ〜、ごめんね!

 超大型更新が入ったのと、()()()()が別の根を構築しちゃったから大変だったのよ」


 チュイは意味ありげに投神を睨む。


「???」


「ううん、投神が悪い訳じゃないわ…

 もう大体落ち着いたし

 …それでこれからどうするの?」


「ユウシャにアウ」


「「「む…」」」


「そうだったわね

 妾もあの子たちに挨拶するわ、久しぶりにね」


 勇者の名前が出てきた途端に若い冒険者たちの顔色が変わる。


「勇者の子供たち

 投神が勇者に会うことは()()()()()()のよ

 心配しないで」


「だが今は面会謝絶だ

 俺たちですら会えん…」


 ダージェが口を開く。


「そうね、だから妾が様子を見に行ってあげるわ

 投神、勝手にパーティーメンバー増やさないでね!」


 そう言うと、チュイは光の尾を引いて酒場を出ていってしまった。


「挨拶する間もなかった…!」


 竜騎士スーディがガクリと項垂れる。


「セワシナイナ〜」


「なかなか個性的な方ですね

 お話しの内容もほとんど理解できませんでした」


「ソウダネ」


 冒険者たちは勇者に気軽に会いにいける立場の妖精女王と契約している投神をどう扱っていいのか分からずに、少し遠巻きに見ている。


「身元は不明だが、危ない奴じゃねぇってことだな、ダージェ」


「ちっ」


 ダージェとその取り巻きが踵を返して去っていく。

 それにつられて多くの者が投神から離れていった。

 完全に醒めてしまったから飲み直すのだろう。

 バリンと呼ばれた軽薄そうな男は席を立たず、投神との会話を続ける気のようだ。


「投神のおっちゃん、悪ぃな

 中央では勇者の子供としての立場を利用しようって奴らが多くてな…

 あいつは皆んなのことが心配で警戒してんだ」


「ソウカ、イイヤツダナ」


「はっ、まぁな…

 俺たちの多くは孤児でな

 お父さんお母さん…勇者様がたが創設された寺子屋で育ったんだ」


「………」


「俺たち頭の悪い組は冒険者として活躍する為に、ずっと一緒に訓練してきからな

 俺たちは家族みてぇなもんだ」


「……ソウカ」


「投神のおっちゃん

 あんたが何者であろうと勇者に害をなす者なら、我らテンゲイン・チルドレンの全てが敵になる

 それだけは覚えておいてくれ」


 投神の周りにいるテンゲイン・チルドレンの冒険者たちは薄ら笑いをやめ、覚悟を決めたような目で投神を見ている。


「ジョウトウ」


 投神はその覚悟を受け止め、不敵に笑った。

 そして満足そうにコップに残った酒を飲み干した。


「…よし!

 じゃあ飲み直そうぜー!」


「ささ竜騎士のお姉様、このお酒美味しいですよ!」

「いや、私は些か飲み過ぎた…」

「投神のおぢ様はどんな女性がタイプなの?」

「投ゲオワッタトキノシセイガウツクシイヒト」

「はあ?」

「どうして妖精女王と契約できたんだ?

 お父さんお母さんだって拒絶されたって話しだぜ?」

「ワカラン」

「竜騎士のお姉様、投神さんと付き合ってるんですか?!」

「つつつつ付き合ってなどおらん!」

「投ゲアッタダケダ」

「何それ、意味深…」


 さらなる情報引き出すため、或いは取り込むための質問が続けられる。

 こうして表面上は賑やかな宴会が再開され、夜がふけていくのであった。



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「イィッタール、アッケミー、久しぶりね!」


「これはこれは妖精女王陛下…」

「ご機嫌麗しゅう」


 勇者の部屋に無断で入ってきたチュイを慇懃無礼な態度で迎える二人。


「冗談は結構よ…って随分と疲れてるわね…」


「そうなのよ…、3体も同時に魔人に攻められちゃってね

 城壁もボコボコにされちゃって、後処理で超忙しいのよ」

「魔人側も失地回復を狙って何か狙ってくるかもしれないからね…

 その為の対策も練らないといけないし」


「そう、それで子供たちを呼んだのね」


「あぁ、壁の修復には時間がかかるからね

 警備を手伝ってもらう予定だ」


「子供たちと言えば…

 実はね、妾は今とある普人族と契約したのよね」


「なにっ?」「マジでっ!」


 二人とも持っていた書類を机に叩きつけるほど衝撃を受けたようだ。

 かつてEXダンジョンに挑む際に契約者となり協力を求めたが断られたことがあるのからだ。


「投神という男の子よ」


「「投神…!」」


「そう、そして彼はあなた達の子供と言ったそうね」


「そうなんだよ!」

「私たちも早く渉…、その投神と話したいから必死で処理を急いでるのよ…」


「文官も派遣したら良かったのに」


「中央は危険な辺境に大事な文官を出さないわよ」


「ふーん

 じゃあ、あなた達はいつ投神と会うつもりなの?」


「3日…、あと3日でかたをつける」

「チュイ様、彼に3日後に城に来てくれるよう伝えといてくれない?」


「了解、じゃあまた来るわ!」


 そう言うとチュイは勇者の部屋の窓から飛んで行った。


「あ、相変わらずだね…」


「強力な結界張ってんのに、なんで入って来られるのよ」


「妖精族、しかも統括個体のチュイ様はチートだからな…」


「しっかし、投神…渉がこの世界に来てたなんて…」


「あぁ、まだ確定した訳ではないが…

 だが、彼には何か魂の繋がりを感じたのは確かだ」


「……はっきりさせる為にも、この書類の山をやっつけましょうか」


「フッ、魔人より強敵だな」


「アハハハッ、そうね!」


 長年お互いを支え合ってきた二人は、今回の危機も共に手を取り合って立ち向かう。

 もう二度と離れないように…。



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「いやー、飲んだわー」


 こんなに飲んだのは何年ぶりだろ。

 しかし全く酔えないのが残念だな。

 周りはもうベロンベロンの酔っぱらいどもで溢れてる。

 この世界では、たとえ危険なほどアルコールを摂取しても白魔術で解毒できるようで、それを前提に度を越して飲む奴が多い気がする。


 ガタンッ!


 後ろに座ってた男がひっくり返って床に転がった。


「おい、大丈夫か?」


「ダイジョウブっスよ!

 耐状態異常を鍛えてるだけっスかラ!」


「???」


「次のレベルアップが楽しみラ~!」


 そう言うと男はスヤスヤと眠ってしまった。

 よく分からんが幸せそうなのでそっとしておこう。


「投神せんせー!

 いーえっくすには私も連れてってくださいよ!」


「はいはい」


 翡翠はさっきまで酔いが醒めてたのに、また酔っ払ってるな。

 ところでイーエックスダンジョンとはどんなところだろうか?

 何故か今日はこの単語をよく耳にするな…。

 この世界にとって特別なダンジョンなのだろう。


「絶対でツよ…!

 ……ぐぅ~」


「寝た…!」


 周りを見ると酔い潰れて眠っている奴が多くなってきた。

 お店的に良いのか?

 …てか、店の人いないし。

 職人のタルっぽい爺さんは相変わらず元気に飲んでる。

 これは朝までコースだな。

 俺はもう眠たくなってきたからテントで寝たいところだが、女性の翡翠をこのまま置いていく訳にはいかない。


「おい、翡翠

 こんなところで寝たら風邪ひくぞ」


 翡翠を揺さぶる。

 この世界に風邪があるのか知らないが、ちゃんと自分のテントで寝たほうが良いだろう。


「う〜ん、せんせ〜…ムニャムニャ」


「ぐわっ⁉」


 寝ぼけた翡翠に抱きつかれて倒れ込んだ!

 美しい女性に抱きつかれて嬉しくない訳ではないんだが、異常な力で締め上げられて息もできない!


「ぐぎぎぎぎ…や、やめ…!」


 なんという力だ!

 10m級のアナコンダよりも遥かに強い締め上げだ!

 両腕を封じられた態勢で、両足もがっちりとホールドされている。

 翡翠の化け物みたいなフィジカルの強さで身動きが一切取れない!

 自分の骨がパキパキと折れていく音を聞こえる。

 肺は押し潰されてもう息を吸うことができない。


 この世界にきて最大の危機がこんなとこにあるなんて…。

 こんな事なら岩の大地でサバイバルしときゃ良かったかな。

 結構あの生活気に入ってたかも…。


 柳…、俺の柳は元気か?


 意識が、薄れていく…。


 お師さん、父さん母さん、師匠たち…。


 偉大なる先人よ、俺は雄雄しく生きられただろうか?


 胸を張って貴方達に会いにいけるのだろうか


 こんな終わりかたで



 ………パキン


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