恋愛は押してダメなら・・・・・押してみろ!!
読んでいただきありがとうございます。
モンスト。ハガレンコラボ決まりましたね。中毒の作者は発狂案件でした。
「好きです。俺と付き合ってください!」
「ごめんなさい」
そう、俺の渾身の告白をバッサリと切り捨てると彼女は綺麗な黒髪をなびかせ行ってしまった。
踵を返して優雅に歩いていく先輩と、手を差し出したまま上目でそれを見送る俺の図。
うん。まったくいつも通りの光景だ。
「これで99回目か」
桜舞う新緑の春。
そこに流れる一筋の涙。
俺・波風優司は先輩に99回目の告白をして―――いつも通りフラれた。
◇◇◇
「で。いつも通り俺のところに反省会しに来たのか。お前」
「なぁ。本当にどうすればいいんだ?もう次で100回目なんだぞっ!?」
「次もあるのかよ……。わかったから落ち着けって」
高校二年生の初日。
今日は始業式とHMが終わるとすぐに下校となった。
クラスのほとんどが下校してまばらになった教室。
その窓際の席で俺は高校からの友人である沖田尚継に99回目の恋愛相談をしていた。
「それにしても、もう次で100回目か。意外と早いもんだな」
「一年の時からハイペースで告白してきたからな。質よりも量で俺の気持ちを伝えようと思って」
「それで?先輩の様子はどうなんだ?生徒会とか告白してる時とか少しでも変わったのか?」
「うーん。全く変わらないな」
「そうか。さすがは『薄氷の女王』だな」
「それ、本人の前で言わないほうがいいぞ」
『薄氷の女王』とは、俺の想い人でありこの学園の生徒会長でもある氷室真冬の二つ名だ。
容姿端麗、才色兼備。
艶のある長く綺麗な黒髪と絶対零度の藍色の瞳。
そして、今まで何人の男に言い寄られても誰にもなびかなかった学園のマドンナ。
どんな時でもクールな生徒会長。それが氷室真冬だ。
ちなみに「薄氷」の「薄」は彼女の胸部装甲の厚さを表しているとかいないとか。
この二つ名の由来が彼女の耳にも入っているのか、この名を彼女の聞こえる範囲で言うと生徒会室に連行されて二度と帰ってこないらしい(生徒会を執◯する!)。
まぁこんなことは置いといて。
「尚継。俺は本気だ。次こそは絶対に告白を成功させたいんだ!」
「と言ってもなぁ。先輩の方が何も変わってないとなるとどうにもなんないしな。本当に様子に変化はないのか?小さいことでもいいから」
「うーん………あっ」
そういえば告白が77回を超えたあたりから真冬会長がたまに目をそらすようになったかも。
以前ならいくら目を見て話しても一切動じてなかったのに……。
しかもなんだか顔も赤くなっていたような。『保健室行きますか?』って言ったら頬をつねられたな。
「目をそらされるようになったかも。あとその時は顔が赤くなってたような……」
「ほう」
「でもこれって、嫌われたから……」
「いや。もっとないのか?本当に些細なことでもいいから」
「うーん」
そういえば最近。いつの間にか真冬会長から名前で呼ばれるようになったかも。
それと同じくらいの時期に真冬会長から『あなたも名前で呼んでいいのよ?ずっと名字だとむず痒いわ』って目をそらされながら言われたんだった。
「お互いに名前で呼ぶようになったかも」
「………決まりだな。優司。お前にこの恋愛のプロが絶対に告白が成功する”技”を授けてやる」
「恋愛のプロって小説の中だけだろ」
「うるせぇ」
尚継はこう見えて現実恋愛を中心に執筆している人気ラノベ作家だ。
今までくっつけてきたカップルは数え切れないほど。
まぁ尚継自身は一回も成功してないけど。
「それで?その”技”ってなんだ?」
「ああ。これは技と言うよりは作戦なんだが。昔から『恋愛は押してダメなら引いてみろ』って言われるだろ?」
「そうだな」
「だけどこの大人気恋愛ラノベ作家から言わせると、これは悪手だ」
「現実では一度も成功してないけどな」
「それはお前もだろ」
思えば。こうして尚継と作戦会議ができるのは真冬会長にフラレてるからなんだよな………。
「どうした優司?」
「いいやなんでもない。尚継教えてくれ。お前とっておきの作戦ってやつを!」
沈黙が俺達を支配する。
たっぷり数十秒。尚継は温めるとゆっくりと口を開いた。
「恋愛は押してダメなら”押して”みろ!!」
押してダメなら押してみろ?
押し続けると嫌われるから引くんじゃないのか?
これだと次も失敗するんじゃ―――
そんな俺の不安は彼のさらなる一言で払拭された。
「正直。さっきの話から先輩はお前に脈アリだと思うんだよな」
「なっ、なにぃ!?」
「お前が気づいてないだけで多分だけど、会長お前にデレてるぞ」
「………ワォ」
「だからな。次でグイグイ押せば陥落すると思うんだ」
「よっ!流石は大人気恋愛ラノベ作家!」
「調子が良いやつだな。お前」
あの会長が俺に脈アリでデレてるだって?
そんなこと。俺一人だったら一生気づくことができなかったかもしれない。
俺は本当にいい親友を持った。
「わかった。今度こそ成功させる。ありがとうな相棒」
「そっちこそ。感謝してるなら早くイラスト仕上げてくれ。もう締切過ぎてるぞ」
「ヒュッヒュッヒュ〜〜〜」
「おい。相棒なんだよな?」
「………あと三日待ってください」
どうやら仕事だけは俺の告白を待ってはくれないみたいだ。
◇◇◇
それから心の準備やら心の準備やら心の準備が整うまで三日がかかった。
あっ。ちゃんとイラストは仕上げたからね?(尚継の家で缶詰にされた)
俺は今日の放課後に真冬会長を体育館裏に呼び出していた。
そして、ついにその時がやってきた。
「すみません。真冬会長。お忙しい中お呼びしてしまって」
「いいのよ。副会長のあなたの頼みだもの。会長として私には聞く義務があるわ」
普段と変わらず淡々と言い放つ我らが『薄氷の女王』。
だけど、永久凍土と言われている彼女の薄氷は今日解けることになるだろう。
「それで?要件は何かしら?ゆっ、優司くん」
あっ。目そらした。
あっ。顔が赤くなってるな。
めっちゃ可愛いんだけど。
「聞いてください。真冬会長」
「なっ、なんでしょう」
俺は一度深呼吸する。
これで言うのは100回目になるな。
「好きです。俺と付き合ってください」
「………ごめんなさい」
いつもと全く変わらない光景。
手を差し出す俺と踵をかえす真冬会長。
いつもならこれで終わりだ。
俺が告って真冬会長がそれをフる。
99回そうだった。だけど、100回目の今日は違う。
ダァン!
「真冬会長」
「ひゃっ!ゆ、優司くん?」
俺は帰ろうとした真冬会長を壁ドンで妨げた。
いつもより近い会長との距離に俺は思考が止まりそうになるが―――
『いいか優司。お前は壁ドンで先輩を止めたら自分の思っていることを言えばいい。できるだけたくさん思いつく限り言え。それだけでいい』
親友との記憶が脳裏に蘇る。
「あなたの横顔が好きだ。いつもとなりで仕事を真剣にこなすその時の顔が。あなたの笑った時の顔が好きだ。みんなは笑わないって言うけど、俺にたまに見せる無邪気な笑顔が好きだ。あなたの優しさが好きだ。何があってもいいようにここの生徒全員の名前を覚えてますよね?そんな優しさに俺は惚れた。あなたの声が好きだ。聞いてるだけで安心できるから。他には……クソっありすぎて言えない!とにかくだ」
俺は黙って俺の言葉を聞いている会長の目をしっかり見て言う。
「あなたの全部が好きなんだ。真冬会長。俺と付き合ってください」
これが俺の気持ちだ。
普段から思ってきた全ての気持ち。
知ってますか真冬会長?
俺が副会長選挙に当選した時どれほど嬉しかったか。
会長の表情は下を向いていてわからない。
ああ。今回もダメだったか。
そう思って、黙ってしまった会長から離れようとしたその瞬間―――
「待って」
「え?」
真冬会長に抱き寄せられたと思うと、この唇に感じる柔らかな感触は………
「え?キス?え?えっ?キッ、キス!?んっ」
されるがままになること数十秒。
俺には永遠に思えたような時間。
真冬会長はようやく俺を解放してくれた。
「まっ、真冬会長?」
「これ。私の”初めて”だから」
「真冬会長?」
「真冬でいいわ。優司くん」
そう言うと何事もなかったように歩き出す真冬会ちょ……真冬。
あの〜返事を貰ってないんですけど?
「待ってください!へっ、返事は?」
俺は背を向けて歩いている真冬に叫ぶ。
しかしそんなのはもう決まっていた。
「どう思う?」
彼女は唇に指をあてながら振り返った。
その顔は今までにないほど赤く、美しく、そして可愛かった。
ボーッと彼女を見ているとまた歩き出してしまった。
「待って!真冬!」
俺は彼女の隣へと走り出す。
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100回目の告白はそうして彼女の薄氷を解かしたのだった。
◇◇◇
「待って!先に行かないで!」
俺は真冬の手を掴む。
ようやく真冬に追いつくことができた。
なぜか彼女は隣に行こうとすると走って逃げてしまう。もう300mくらい走ったぞ。
「真冬?」
「見ちゃダメ……」
彼女は照れている顔を手で隠してしまう。
うん。めっちゃ可愛いな!
【完】
面白いと感じた方は評価とブクマといいねのほうお願いします。
それではまた。次の物語で。




