第5話 スクリム①
お久しぶりです
あーやっと家ついた…
もう7時か
と、今いるのは俺の家の玄関である。
幼女になってから歩くスピードなども遅くなり、しかも一人で出かけてるから警察官に職務質問(?)をされたりしてなんだかんだで結構帰宅に時間がかかってしまっていたのだ
靴を脱いで、トイレに直行する。
やばいやばいと思いながらギリギリのところで間に合い、なんとか一息ついた
あー何回かこれまでやってるけど未だに慣れないなあ
初めの頃なんかは
出る場所が若干違うし、なんとも言えない違和感しかなかったけど
その時に比べればマシか
とか考えながらそのまま脱衣所へ向かう。
俺が元々着ていたユニセックスのギリギリ着れるぐらいの服を洗濯機に入れて全裸になり全身鏡を前に立つが、
やはり見えるのはさらさらとした誰しもが二度見するような美麗な銀髪と
碧眼の透き通った目と透明感のある真っ白な肌。
そして最終的に見えるのは下に何か大切なものがなくなっている姿であった。
んー逆にここまでくるとスッキリするよね
ちょっと、自分の裸だけど恥ずかしいしなんか罪悪感あるからバスタオルつけて入ろ。
うー寒い
そして行く前に入れておいたお風呂に入る
細い両足をまず湯船に入れ、次に肉付きはよくないが白く細身な体を浸けて
四肢を伸ばす。
ああぁあーーー風呂はええんじゃ〜五臓六腑に沁み渡る〜
と今の身体らしからぬ銭湯のおじさんのようなことを思いながら、
今日を無意識に振り返る。
やっぱクリスマスは人多いから結構きつかったな、、、
初日はまだ着ぐるみでただ立ってるだけだったからまだしも、
今日と明日のレジってどっかでミスしそうで怖いんだよなあ
あと単純に人と接したくない
今日の客だって俺は普通にレジ打ちやってるだけなのに
愛想が悪いとか言ってくるし…
もうやめたい
まあこれも終われば正月とかは休みだしなんの気兼ねもなく羽を伸ばせる!
朝起きてーゲームしてー勉強してー飯食ってー寝る
…色々できるとか思ってたけどそこまでやることもないな、
ってなんか虚しい。
ここら辺で考えるのストップしとこう…あ〜辛い
誰か俺を養ってくれないか?
あと、単純にこの体になってから初日だし、慣れてないことが多すぎる
背は低くなるし無駄に注目集めるし色々不便。
新しく服とかも買わないとだしなぁ
明日注文しとくか
ファッションセンス壊滅的なほどないから誰かに頼みたいけど、
今の現状言えるの現状二人ぐらいしかいないし
親に言うことでもないけどいずれは言わないといけないし…
まあどうせ自分で選んだ服着ても外出ないから意味ないか
んーまあ面倒なことは明日に回して今日は寝たい
普通に疲れた
様々なことを思いながら口を水面に当てて、ぶくぶくさせる。
地味に楽しい。
ブクブクブクブクブク・・・
飽きた。
もうそろそろ出るとしようかな
明日もあるし。
風呂を出てシャワーも浴びずにそのままちょっとぶかぶかなパジャマに着替える。
この服だとズボン引きずっちゃうなあ
あとパンツも男物ぐらいしかないから、これも買い換えないとだめだな
ふわあぁと思わず欠伸をしながらベッドへと向かう。
無駄に大きい掛け布団をかぶってそのまま寝る体勢に入ってしまった。
お休み世界
そこに残っていたのは夜の静寂さとキッチンに残った夜ご飯の支度であった。
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チュンチュンと鳥の鳴き声が聞こえ、
カーテンも閉めずに寝ていたために朝日が顔に降り注ぐ。
「あ”ーいつの間にか寝てた〜」
未だに聞き慣れない自分の声に違和感を感じながら、友達からのチャットを返す。
そのまま喉が渇いたため水を飲もうと床に足を伸ばしてキッチンへと足を運んだ。
キッチンはシンプルに白で統一されたIHのコンロが2つに、シンクそしてその向かい側に皿やコップが揃えられた棚が置いてある。
「んぐっんぐっぷはぁ」
んーやっぱり朝は水飲むのが一番目が覚めるね、ってあれ
うわ昨日飯作ったまま残ってんじゃん
誰かにあげるか、賢三とか
けい「なあ、昨日食べそびれた飯あるけどいるか?」
けんぞう「昼ぐらいになったら食いに行くわ」
けい「おけ でも13時からバイトだから11時ちょっとに来て」
けんぞい「了解。あ、そういえばお前今日ログインするのか?」
けい「まあ一応するかな」
けんぞう「お、まじか!今日プロの人とスクリムすることになってるから
一緒にしねえか?」
けい「スクリムってなに?」
けんぞう「フレンドと一緒にするプライベートの試合みたいな感じ。
人脈も広がるし、相手もうまいから結構勉強になるとは思う。
まあ、けいは初めてほぼ1日だけど十分に化け物レベルで上手い し、ゲームへの理解度が段違いだから通用するぐらいの実力はある」
けい「なるほどな、全然いいよ」
けんぞう「わかった決まりだな 今日の夜の9時からだからそれまでに準備しと けよ」
けい「んーわかった」
そしてチャットを終えて
VRを起動して服を買いに行くことにした。
またベッドに戻って今度はVR世界にログインするための準備を完了させて横たわり、目を瞑った。
「コネクト」
再び目を開けるとそこは2回目の白い部屋で以前ナビゲーターに言われたことを思い出し、目の前のドアを開けた。
「うおぉぉぉ」
目の前に広がっていたのはあらゆる店が収容されているショッピングモールが横にも無限に続いているかのような場所であった
例えるならばインター◯テラーのブラックホールの中にある5次元空間のような場所である。
すげええええめっちゃでけえええ
ってあれどこに何があるかわからん
「はいはーい!どうもーナビゲーションのナビ子です!
何かお困りですか?」
お、いいところに出てくる
「実は下着と可愛い感じの服と普段着が欲しいんですけど…」
「分かりました!では条件に見合う店を数店舗ほどお連れしますね!」
「ありがとうございます」
「では、テレポートするので酔いに気をつけてくださいね」
え?歩かないの?
と思っているのも束の間、ギュインと視界が回り始めた。
ちょっ、これは結構三半規管にくるっっッッ
やばいって!!!
「到着です!」
あーやべマジで気持ち悪い
あんな短期間で酔うことある?普段乗り物系は酔わないのに
ぐぬぬっ
「ここはランジェリーショップです!」
いやそんなことを大声で言うな
これ俺が入っても犯罪にならないよな?大丈夫だよな?
入るぞ?入るぞ?
普通に店に入るが何も言われなかったので大丈夫なのだろう
よかった
「いらっしゃいませー」
笑顔なキラキラとした店員に言われるが
何も言えず会釈だけする。
とりあえず自分のバストを測らないといけないけど、全部自分の設定のとこに書いてんな。
えーとまあなんもわからんし全部丸投げすればいいか
「すみませーん」
「はい?」
「あのースタイル?がこんな感じなんすけどちょうど合うの適当に見繕って下さい」
と言って自分のステータスが色々書かれているものを店員さんに見せる。
「えーと、確認させていただきますね〜、わかりました」
「では、こんな感じでどうでしょうか?」
と持ってきてくれたのはピンクの色のものや青などといったものが数種類あった。
「あ、じゃあ何もわからないんで全部下さい」
と言って決済を済ませ、店を後にした。
ここからはダイジェストで行くぜ!
次に行ったのはジェラ◯ケのようなもこもこした感じのパジャマの専門店。
パジャマは、悪くないっすねぇ〜
その後に行ったのは俺もよくわからん服屋を何店舗か行ってめっちゃ買った。
もう何買ったか忘れた。
はあもう疲れた。
ちなみに明日の朝に届くらしい。
そして、ちょうどいい感じに11時になり、唐突にピンポーンと呼び鈴の音が鳴った。
「はーい」
といいながらトテトテ歩いて玄関のドアを開けて出迎える。
「よお、タダ飯食いに来たぞ」
ドアの前にいたのはニヤニヤしながら立っている賢三であった。
「ニヤニヤするなよ、気持ち悪い」
と睨みをきかせたが、賢三は何もなかったようにニヤニヤとしながら入ってくる。
「まあいいじゃねえか」
「いいけど!助かるから普通に感謝するけど!」
「ごめんって」
と今回は笑いながら答えてくる。
「とりあえずそこの木の机と椅子のとこ座っといて」
「へい」
「じゃああっためとくからちょっと待ってて」
「んーあざす」
と会話しながらご飯であるビーフシチューを加熱し始める。
一応一人分のため、少ない量だからすぐにあったまった。
「そういえばスクリムって何すんの?そんなにフレンドがいるわけじゃないだろ?」
と言いながら鍋を持って敷物の上に置き、スプーンとスープ用の皿を2つずつ出す。
「いや、そうでもない
プロゲーミングチームを運営してる大元のめっちゃ大きい会社が主催する大会の
予行練習みたいなもんだから、試合できるぐらいの人数は集まってるらしいよ」
「え?そんな大きい規模のやつなの?」
とキョトンとした顔で聞く。
「うん、そうだけど」
「いや、なんでそんなこと最初の時点で言わないの?
最初に言われてたら断ってたのに!
今から断れない?」
「特殊な事情がないと無理だな。俺が数日前から運営にけいと俺のペアで出るって 言ってたから」
と眩しい笑顔かつサムズアップしながら言ってきた
「普通にしばきたい」
俺がもし最初に断ってたらどうしてたんだよと思いつつ頭を抱えて中指を立てる。
「おっとそれは良くないねえ」
と変わらず笑顔で言ってくる
まじでしばきたいこいつ
と、俺は賢三を睨みながらビーフシチューを注いで食べる。我ながらコクがあって美味しい。
「あ、でも一位は賞金100万だよ?」
「まじで!?」
食い気味で返事すると
「がひはひょ」
時折あちっと言って食べているのを視界の端で見ながら
心の中で叫んでいた。
「おいおいおい、なんでそれを言わないんだ
それさえ先に言っていればさっきみたいな態度取らなかったのに」
「あと、それで有名になったらお金になる」
「うおーーーー」
まじか、これであの地獄のバイトも辞められる!!!
「よっしゃ、俺バイト終わったら速攻で準備してウォーミングアップするわ」
「了解。バイトがんば」
「おう!」
「じゃあなんやかんや食べ切ったしそろそろ帰るわ」
と言われて気づいたが、いつの間にか平らげていた。
それを片付けて賢三を玄関まで笑顔で送り出す。
「気をつけてな」
「じゃあ」
賢三がドアを開けて閉まるまでちゃんと待ってから
「いよっしゃああああナイス賢三!!!!!って、そろそろか」
と叫びながら時刻を確認すると12時だったため、準備をしてバイトへ向かう。
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バイト先に到着し、制服に着替えて従業員控室にいると
茜が入ってきた。
「お疲れ様」
「あ、けい、ありがと
けいは今から?」
「そうそう。茜って今日この時間帯だっけ?」
「いや、実は今日の夜予定があって変えてもらったの」
と、言いながらちょっと目線を逸らして髪をいじくっていた。
「あ、そうなんだ
んーとそろそろ俺時間だから行ってくる」
なにか事情があるんだろうけどあんまり触れたらだめだろうなあ
万が一話題に触れてキモいって思われたら心に刺さるし
「じゃあ私もここら辺で帰るね
頑張って!」
「ありがとう」
そう言って戦場へと向かった
なんやかんや真面目にレジを通していると小太りの、自分より若干背が高い30、40代ぐらいのおじさんが来た。
「・・・」
無言で商品を出してくる。
こういう人まあまあいるけど自分だけ喋ってる感じで途中でしんどくなるんだよなあ、ちゃんと対応するけどね
「2600円になります、隣の支払い機でお願いします」
「・・・」
やはり無言のまま支払い機に向かう。
まあいいかそんな人もいるか
と思いつつそのまま接客していた。
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バイトが終わり、家に帰って風呂に入っている途中にインターフォンが鳴らされた。
「ん?こんな時間になんだ?」
一応インターフォンのモニターを視界に表示させてみると顔は暗くてそこまで見えなかったが、それでも体型と服と輪郭で誰かは分かった。
今日の小太りのおっさんであった。
「、、、え?なんでここにいるの?」
え、めっちゃ怖い怖い怖い
え?なんで俺の住所知ってるんだ?もしかして俺が仕事終わってからストーキングされてたのか?
なんにせよ鍵はかけているから家の中まで入ってくることはないだろうから
安全だとは思うけど。
一応賢三に言っとくか
けい「なあ聞いてくれ」
けんぞう「なんだ?」
けい「今日レジでいた人がストーキングかなんかして俺の家の前にいるんだが」
けんぞう「え、大丈夫か?そっちまで行った方がいいか?」
けい「いや、鍵は閉めてるし入ってくることはないと思うから大丈夫」
けんぞう「わかった、なんかあったら言えよ
何かしら対策は練るし、警察呼ぶか?」
けい「いや、アパートだし迷惑かけたくないからやめとく」
けんぞう「了解。今日のスクリムは来れそうか?」
けい「行けそうではある」
けんぞう「じゃあ8時40分ぐらいにOBCで」
けい「ん」
まあ流石に大事にはならないだろうし大丈夫だとは思うが
心配だし防犯対策練っとくか
んーまあとりあえずは目の前のことに集中しよう