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#6 ミスターP


 生徒会長から依頼を受けて、2週間が過ぎた。


「あのぉ、私は一体何をしてるんですかねー?」

「ただ歩いているだけだな」

「こんなことをするだけで、あの男の子を見つけることが出来るんですか?」

「ああ、もちろん。俺の直感は正しい。というか話かけるんじゃない。俺の存在がバレる」

「そんなに近い距離にいればバレるでしょうね」


 現在、柳衛たちは街を散歩していた。何か特別なことはしていない。


 学校が終わってからの放課後、1時間程度の散歩をする。これをすでに3日も繰り返している。


 米澤はきょろきょろと周りを見渡しながら電柱一本分ぐらい後ろをついてくるだけだ。傍から見ればただのストーカー。警察に通報される変質者だ。


「そんなの関係ないさ。柳衛ちゃんがスカート短くすればヤツは現れる」

「えっ!ちょっ、はぁ!?セクハラですか!柳衛部長に言いつけますよ!」

「――もしもし昴流パイセン、新人のスカート短くしていいですか?……ええ。やっぱりガードが緩いほうが。……はい。…………ありがとうございまーす。――昴流パイセンから許可は取ったぞ」

「そういう問題じゃないです!」


 一体この人は何を考えているのだろうか。頭にきた柳衛はあっかんべーと舌を出してから走り出した。


「おい、どこに――」

「うっさい死ね!」

「ったく、お下品なお嬢さんだな」


 柳衛は米澤を無視して家に帰ることにした。


 しばらく走って、住宅街の十字路を右へ左へ曲がっていく。ふと、後ろを振り返るが米澤はいない。追ってはこなかったようだ。


「……まったく」


 スマホで時計を確認すると、時刻は18時になるところだ。今まで無駄な時間を過ごした。

 

 帰ろうと思ったが、辺りを見渡して現在地が不明なことに気づいた。というのも、頴川学園は前の学校とは方角が真反対の方向にあるため、土地勘が全くと言っていいほどにない。


 つまりは、道に迷ったのだ。


「こうなれば文明の利器に頼る!」


 スマートホンを取り出してセキュリティロックを解除すると、GPSを起動して地図アプリを開いた。このアプリに頼れば最短距離で帰宅が可能だ。


 自宅の住所を入力して、案内通りに道を進めば無問題。まずは南へ向かう。現在向いている方角を確認して後ろを振り返った瞬間、事件は起きた。


「きゃあああああああああ!!!!!!」


     *


「で、恥ずかしさのあまり、敗北してきたわけね」

「ほんとっ、恥ずかしかったんですよ!米澤先輩は役に立たないし!」

「それはいつものことだ。心配しなくていい」

「役に立たないんだったら、どうしてペアを組ませたんですか!」

「たしかに、アイツは本当に役に立たない。本ッ当に役に立たない。新人に付かせてしまい申し訳ないな。あぁ、本当に使えないな」

「あの、ここに本人いるんですケド。すんごく傷ついてますよ。泣いちゃいますよ?」

「私が悲鳴上げたのに、助けにも来てくれないんですよ?」

「私がアイツの育て方を間違えたのかもしれない。母親……失格だッ!」


 頴川は机に拳を叩き付けて俯く。


「どうして部長に母親面されなきゃならんのですかね」

「ははっ……さて、茶番はトニカク、調査はご苦労様だった。超検部で史上最強の敵が現れたな」

「ほんと最強で最悪ですね。なんなんですか『パンチラの能力者』って」


 生徒会からの依頼。それは、学園付近に現れるパンチラ目撃男の被害を止めろというものだった。


 『パンチラの能力者』と名付けられた男はたちの悪いことに、犯罪として立証出来るかと言えば不可能なことをしてくるのだ。


 被害者に当時の様子を聞くと、風が強く吹いたがためにパンチラが起きた、転んでしまってパンチラしてしまった、犬にスカートを引っ張られてパンチラしてしまった――つまり、自然的要因によってパンチラを見られる「事故」と処理されてもおかしない状況に起きてしまうのだ。


 まさに、『パンチラの(目撃する)能力者』


 女の敵だ!


 生徒会はこの問題に立ち向かったのだが、あっさりと撃沈したそうだ。出雲からもらった資料には敗北の一言が添えられていた。だからこその「スパッツ」なのだろう。パンチラに対抗する唯一の武器。


 けれど、その答えを導き出したのに敗北して超検部に依頼してきたのだから、何か裏がありそうだと頴川は警戒しているのだ。


「それにしても、やるとしても学園内の事件解決だと思ったんですけどね。まさか学園外の事件すら任されるとは思いませんでしたよ」

「学園が大きければ、伴って周辺地域へ少なからず影響を及ぼす。この学園の生徒が問題を起こしても、地域貢献によって、学園内へのヘイトは下げられるわけだ」

「それってどういうことですか?私、頭が悪いんで分からないんですけど」

「つまり、善因善果というわけだ」

「ぜんいん……?」

「柳衛ちゃん、後で勉強教えてあげるね」


 鷲宮がたっぷりの笑顔を柳衛に向けた。


「さて、柳衛のおバカも露呈したところで、今日はお開きにしようか。明日は部の全員でパンチラ男を捕まえるとしよう」

「部長、それじゃあ男がパンチラしてるような言い草ですよ」


 市ノ瀬が苦笑いする。


「それもそうだな。パンチラ目撃男と言うのもしっくりこない。……それでは【ミスターP】と命名しよう」


 頴川のネーミングセンスが皆無。全員苦笑いだ。……いや、米澤だけは必死に笑いを堪えている。


 【パンチラの(見る)能力者】通称【ミスターP】という名前が決まったところで、頴川の宣言通りに今日の部活は解散となった。


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