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#3 部活


 放課後、米澤は宣言通りに柳衛のいる教室にやって来た。


「げっ」

「げっ、ってなんだよ。人をバケモン扱いしないでくれ」

「びっくりしただけです。それじゃあ連れて行ってください」

「おう」


 柳衛は米澤の後を追い教室を出る。放課後はそそくさと帰る者、部活に勤しむ者、各々の過ごし方を模索して廊下は賑わっていた。そんな賑わいの流れを逆流して廊下を進む。


「旧部室棟へ向かうぞ」


 学園内は事前に貰ったパンフレットでザっと目は通していた。柳衛のいる頴川学園の高等部は現在、校舎の建て替えが進められており旧棟と新棟が存在する。いまいるのは各学年の教室がある新一般棟。旧一般棟はすでに取り壊されている。

 

 いま向かっている方向は旧部室棟だった。部室棟の作業は途中で問題があったらしく、新部室棟は未だに完成していないのだ。予定では、夏休み明けには使えるらしい。


 辿り着いたのは、旧部室棟3階の一番奥の部屋。途中まではすれ違う人もいたのだが、3階に来ると誰もいなくなってしまった。3階で部室を利用する人はいないのではと疑ってしまうほどだ。


「もう部長は来てるはずだよ」


 米澤は扉を開けて、柳衛を先に通した。


 部室の中央には3つの机をくっ付けた大きな長机が設置され、本棚、キッチン、パソコンが存在していた。随分と部費が潤沢なようだ。


「し、失礼します」

「……ようやく来たか。ようこそ、超常現象検証部の部室へ」


 窓際の机に座って片手にティーカップを持っていた頴川は両腕を広げて柳衛を歓迎した。


「どうも……」

「なんだ、不機嫌そうな顔をして。そうだったな、せっかくのお客さんなのだから紅茶でも出さないとな。――十文字、用意を」

「はい」


 座っていた十文字が無表情で立ち上がり、キッチンにある電子ポットからお湯を注ぎ始めた。


 十文字はあの時と同じくメイド服を着ていた。まさか、学園生活もメイド服で過ごしているのではなかろうか。


「どうぞ、お座りください。紅茶です」


 目の前の席にはお洒落なカップに注がれた紅茶を置かれた。ご丁寧に受け皿とシュガーポットまで用意される。


 柳衛は恐縮しながら椅子に座った。一方、隣には米澤が座ったが彼には透明なコップに注がれた水道水が置かれていた。


「あの、十文字さんって本物のメイドさんなんですか?」

「十文字家は代々、頴川家に仕える家系なんだ。彼女の場合はメイドと言うより、私の従僕ヴァレットだな」


 柳衛の代わりに頴川が答えた。


「そうだ、どうせ聞かれるだろうから今のうちに答えておく。私は頴川学園の学園長である頴川流ノ佐(りゅうのすけ)の孫だ」

「学園の名前と苗字が同じだったので血筋の人なんだとは思ってましたけど、お孫さんだったんですね」


 頴川財閥のお嬢様というわけだ。従僕がいるのも納得だ。


「さて、この話題は終わりだ。――柳衛尊くん、本編へ進もうじゃないか。まずは先日、キミの身に起きたことについて話をしようじゃないか」


 頴川はティーカップを置くと、両手を組んで肘を机に乗せた。


「キミはあの夜、ベンチに置いてあった真っ黒な本を拾い、怪物に襲われた挙句、本を身体の中に取り込んでしまった。――そこの米澤のせいでな」


 突然名前を呼ばれた米澤はギクリと肩を上げた。


「その黒い本については心当たりはあるか?」

「いいえ、全くないです。あんな本は初めて見ました」

「――ネクロノミコン、この名を聞いたことはあるか?」

「……あっ」


 あの本を手に取った時に聞こえた名前だ。


「心当たりがあるということは、その本の名前こそネクロノミコンだ」

「何なんですか、ネクロノミコンって?」

「そうだな、ネクロノミコンの話をする前に、この部について説明した方が分かりやすか」


 頴川はそこで一度ティーカップに口を付けてた。


「超常現象検証部、略して超検部は生徒会直属の部で独自の機関だ。主な活動は頴川学園の周囲で起きている超常現象について調査し検証を行う。名前の通りの活動だな。ここまでだとオカルト研究部だと思うだろう?」

「そうですね。でもオカルト研究部は別に存在しているんですよね」

「その通り。では、私たちの超検部とオカ研部では何が違うのか」


 わかるかな?という頴川の眼差しに柳衛は首を傾げた。


「違いは単純だ。本物か、本物っぽいかだ」

「つまり、超検部は本当に存在している幽霊やらUFOの調査をしているってことですか!?」

「別に、今さら驚くことはではないだろう。現にキミは怪異に襲われたのだからな」

「怪異ですか」

「決まった名称があるわけではないが、現在の人類が通常では認識出来ないモノたちを私たちは怪異と呼んでいる。その中でも先日キミが遭遇したのは邪神だ」

「気色の悪い怪物が邪神ですか……」


 柳衛は自分から当時のことを言い出したのにも関わらず身震いしてしまった。あの触手から発せられていたベタベタとした粘着物の感触が記憶から離れないのだ。


「邪神とは地球外より飛来した未知の生命体だ。部の中でも一番取り扱いに困る部類だな。そんな邪神を呼び出す為のアイテムのひとつが『ネクロノミコン』だ」



じゃんけんぴん!


ぎゃははっはははは

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