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#11 正体

「おい待て!」


 そんなこと言われて止まる奴がいたら見てみたい。


「逃げ足が速いな!」


 いつの間にか商店街を抜け、学園近くまで来てしまった。徐々に距離が離されていく。そろそろ捕まえないと完全に見逃してしまう。


「なんかねぇか……」


 捕まえる方法を色々と考えて、良いモノを持っていることを思い出した。


「これでも喰らえ!」


 ポケットから野球ボールを取り出して、少年目掛けて思い切り投げつける。このボールは、返すのを忘れていた少年野球のボールだ。


 ボールは少年の背中目掛けて真っ直ぐ飛んでいき、直撃する。少年は前触れもなく加えられた衝撃によってバランスを崩し、地面に倒れた。


「よっし!」


 米澤は倒れた少年の元に駆け寄る。


「さて、降参しな」

「……まさか本物に出会ってしまうとは思わなかったナ」

「最近、女性のスカートが自然に捲れて、それを小学生ぐらいの男の子に見られる事件が多発していた。その犯人はおまえだな?」

「僕は見てないヨ」

「スカートを捲っているのは否定しないんだな」

「その通りサ。僕はあの子のスカートの中を覗きたいという願いを叶えただけサ」

「……何者なんだ?」


 米澤の問いに少年はニタリと笑う。


「僕は世間から『ドッペルゲンガー』と呼ばれる存在サ。君たちは怪異と呼んでいる存在だネ」

「ドッペルゲンガーか。だからあの男の子と同じ顔をしているわけだな」

「その通りサ。このように――ネ」


 少年の顔にモザイクが掛かり、あっと言う間に米澤の顔に変化した。


「あまり驚かないようだネ。流石は異端の狩人ハンターと呼ばれるだけの男だヨ。怪異に見慣れていル」

「そんな名前で呼ばれてる覚えはないけど」

「そうかい?有名だと思うけどネ。少し前に河童に出会っただロ?彼らも君のことはそう呼んでたヨ」

「どうしそれを知ってる」

「僕は怪異だからネ。……先に言っておくけど、それ以上でもそれ以下の解答はないサ」


 再び少年の顔にモザイクがかかり、今度は顔がモアイ像に変化した。


「僕は弱い怪異ダ。見逃してくれヨ」

「今後、悪さをしないならいいだろう」

「……君は意地悪な人間ダ。怪異とは、ある程度の認知度が無ければ自然消滅すル。だから、悪目立ちをすることで怪異の存在を認知してもらっていル」

「そういえばそうだったな。――それじゃあ、取引しよう」

「ン……仕方がなイ。いいだろウ」


 怪異との約束事は絶対だ。双方に嘘を吐くことや、約束を破ることは出来ない。もし、破ってしまった場合は違反者がその身をもって罪を被ることになるのだ。


     *


「どーして今度は米澤がいないんだ!」

「すみません」


 鷲宮がペコリと謝る。


「米澤はどこに行ったんだ?」

「ミスターPもとい、ドッペルゲンガーを追いかけてどこかへ……」

「ボールを追いかけてる犬かアイツは!」


 米澤と鷲宮が探し出したミスターPの正体はドッペルゲンガーなのではという結論に至っていた。


「まったく、悪さをしていたのはドッペルゲンガーとはな。今後同じような悪さをするのであれば、封印する必要があるな」

「封印ってどうやるんですか?」

「今回のドッペルゲンガーは妖怪や都市伝説系の怪異だ。そうなると市ノ瀬の担当になる。式神を使って封印を施せば今後100年は人の目に触れることは出来なくなるんだ」

「へー。担当が決まっているですね」

「柳衛を襲った邪神は十文字が戦っていただろう?それは十文字が邪神を担当しているからだ。邪神は封印することが出来ないから撃退と言った方が正しいな」

「どうして封印出来ないんですか?」

「さあな」


 あっけらかんと言う。


「世の中、計算式では仕組みを理解できない事象が数多く存在しているってことだよ」

「なるほど?」

「さて。これにてミスターP捕獲作戦は終了だ。――解散!」

「米澤先輩は放置でいいんですか?」

「あんなヤツは無視よ無視。帰りましょ」


 みんな米澤に対して冷たい。


「…………帰りますか」


 しばし考えた後、みんなに同調して米澤を放置することにした。



thanks


next...?

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