目覚めはキスから
目覚めると唇にやわらかい感触を感じると共に息苦しい。
「ぅぅっうぅー、ぷはぁっ。はぁはぁ、無意識なのが怖い......ほんと」
白久からだ。キスをしたのは。
抵抗されまいと両手で僕の片手を握りしめている。
まるで新婚生活のようなシチュエーションだ。
起こさないように手を引き抜き、ベッドをおりて自室を出ていく。
僕は、洗面所でバシャバシャと顔を洗い、タオルで拭い、階段を下りてリビングに足を踏み入れた。
セットしてある炊飯器のスイッチを押して、おかずを作り始めた。
一通りのおかずを作り終え、ダイニングチェアに腰かけテレビを観ていると階段を下りる足音が聞こえ、白久がリビングに顔を出した。
「おはよぅ~安芸くん。唇に感触が残っててさぁ~有名なお話みたいにキスを──」
「おはよう、友恵。してないよ、友恵がしてきたんでしょ」
「えぇ~安芸くんがうーそついたぁ~うーそついたぁ~。しょうもない嘘なんてつかないでよぅ、安芸くん」
「嘘なんてつかないよ。寝癖ついてるけど」
「えぇっ!嘘ぉっ、安芸くんしかいないしいいやぁ~」
呑気に毛先を弄りながら諦める彼女。
時刻は、6時前。
スマホで動画を流している白久は、瞳をキラキラと輝かせ、動画に夢中だ。




