水着選びに連行されるのはキツい
昼食を摂り終え、フードコートを後にし、白久の要望で水着を見に行くことになった僕ら。
水着だけが並んでいる店舗に到着すると、白久がそのまま僕を連れて行こうと引っ張ってきた。
「ちょちょっっ!友恵っ、何のつもりなのっ!?湊川と待つって、行かないって!」
「安芸くんも来てよ。安芸くんがいなきゃ来た意味がないよ、抵抗しないでよっ!」
彼女に抵抗するが、まともに取り合ってくれず力をゆるめることのない彼女に引きずられながら、入店してしまった。
水着を選ぶ女性客の視線が痛いほど刺さる。
大半は一瞥し、水着選びに戻るが学生らしき女子と二十代ぐらいの客にはじろじろと見られてしまう。
「この水着はどうかな?安芸くん、似合うかなぁ」
爽やかさを感じる水色のフレアビキニを身体の前に合わせて、感想を求めてきた彼女。
「かっ、可愛......いぃ、よ。似合ってるからそれにしてさっさと出ない?耐えられないんだけど......」
短く感想を述べ、この店舗から出たいがために購入するように促す僕に、彼女が可愛く「だぁめぇっ」と断って他の水着が掛けられているハンガーに手を伸ばした。
「こっちとさっきのはどっちが良いかな?」
周りで水着を選ぶ女性客の視線が気になってそれどころではないのに......僕を困らせて楽しいか、白久ぅっ!
一時間以上もの間、彼女の水着選びに付き合わされ、精神が滅入った。
水着を選ぶ彼女は、終始笑顔を浮かべていた。
ベンチに腰掛け、スマホを弄り待つ湊川に白久が声を掛ける。
「ごめんね」
「おおぅ~ってぇっ!どうしたんだよ、死にそうな顔しちまって!文句をぶちまけてやろうかと待ってたのに。まあ、いいや......小腹が空いたから、付き合ってくんない?二人とも」
「うんっ!」
「ぁぁああ......」
白久は元気に返事をして、僕はカラオケで三時間ぶっ続けで歌ったかのようながらがら声で返したのだった。