表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【3分小説】親友。

作者: 舞鶴大

「最近、なんだか仲が悪くなったような気がする。」


ミカンがそう感じたのは、中学1年の10月頃だった。

親友のモモコとは小学校来の付き合いで、ミカンが現在通っている私立阪京中学(ハンケイ)を受験したきっかけも、モモコが阪京を目指していると知ったことだった。

小学校時代は、学校が終わると「帰ったらすぐね!」とお決まりの約束をして、毎日公園で遊んだ。誕生日にはお互いの家に集まって、ケーキを食べたりプレゼントを渡し合ったりもした。


しかし、そんな親友であるモモコちゃんに最近どうも避けているような気がする。露骨に無視されるとか、一緒にいるとつまらなそうとかそういったことは無いのだが、モモコちゃんの態度がなんとなく素っ気なく感じられるのだ。

このことを母に相談しても、

「気のせいじゃないの?特に喧嘩したとかいう訳でもないんでしょ。」

とまともに取り合ってくれなかった。

「もやもやするなあ。」



「モモコちゃん!一緒にお昼食べない?学食なんだけど……」

「あー、今日ほかの友達とお弁当食べるんだよね……ごめんね!」

ミカンは1人になってしまった。モモコちゃんはクラスでも友達が多く、毎日色んな友達とお昼を食べている。なかなか一緒に食べられる機会も少ないのだ。

「あのー、私でよかったら一緒に食べませんか……?」

2時間目の体育でペアを組んだカリンちゃんだ。

「うん!学食で大丈夫?」

「はい!今日はA定食のハンバーグがおいしそうでした!」

なんとか “ぼっち飯”は回避できたようだ。



「では、ホームルームを終わります。級長、号令。」

授業が終わった。

モモコちゃんが帰り支度をしている。

「あ、モモコちゃん。一緒に帰らない?」

「ごめん!部活だから。」

そう言うと、足早に行ってしまった。

そういえば、今日は火曜日だった。ウチの中学では、中学生の部活は火、木、土の週3回までと決まっている。

私とモモコちゃんは別の部活である。私は将棋部に、モモコちゃんはテニス部に入った。将棋部は中高合同の部活で人数が多いため、中学生は木曜と土曜の週2日ということになっている。対してテニス部は週3回だ。

「……帰るか」



(……なんでだろう。なんか嫌なことでも言ったかなあ。)




「ドンッ、ゴロゴロゴロ」

「痛ッ!」

考えごとをしながら歩いていたら人にぶつかってしまった。


「すみません!あっ……」

「すみませんじゃないよ!カゴに入ってたテニスボールみんな土手に転がってっちゃったじゃん。何ボケっと歩いてんのよ!」

「この子、うちのクラスのミカンちゃんじゃん。なんかいっつもボケっとしてるよねー」

見ると、大量のテニスボールが土手を転げ落ちていっている。

しかも、よく顔を見ると同じクラスの相馬さんとその取り巻き女子達だ。相馬さんはお金持ちのお嬢様らしく、早くもクラスカーストの上位にいる。よりによってかなり面倒な人にぶつかってしまった。



「何してんのよ。早く拾ってきなさいよ!これで練習に行くの遅れたら、私が顧問に言われんだからね!?」

「ごめんなさい……!今拾ってくるね……」

土手を降りて、テニスボールを拾う。相馬さんとその取り巻き女子達はクスクスと笑いながらこっちを見ている。


涙が出てきた。何故だろう。中学に入る前は、もっと明るくて楽しい学校生活を夢みていたのに……!




「わー!こりゃ大変だね!」




「モモコちゃん……?」



「ほら、相馬さん達も拾うの手伝ってよ!早くしないと、乱打の時間なくなっちゃうよ!」

「ミカン、何で泣いてるの!?」

「……ううん。ありがとう」

「どういたしまして!よし、だいたい拾い終わったかな。」

モモコちゃんの他にも、土手にいた野球部員が手分けして拾ってくれていた。

「はい、相馬さん。これ持って先に行ってて。」




「モモコちゃん!ちょっと話したいことがあって……」

「ん?なに?」

「あの、実は、最近私モモコちゃんに避けられてるんじゃないかって不安で……それで……」

「え!?なんで私がミカンを避けるのさ!」

「だって、なんか最近話す機会も少なくなった気がするし……」

「あー、たしかに、中学に入って新しい友達が増えたからねー!でも、そんな避けるなんてこと考えたこともないよ。」


「そっか……私の考えすぎか……」

「うんうん。考えすぎ!なんなら、明日一緒に昼ごはん食べる?もしよければ、他の子達とも一緒に!」

「……!うん!ありがとう、モモコちゃん」

「ううん。だって、1番の親友はミカンだし。じゃあ、部活。行くね!」


こうしてミカンの不安は杞憂であったことが分かった。

「1人で勝手に不安になってただけだったんだ…」



その後……


「みんな!お昼食べよう!」

「うん!ミカンは学食だよね、じゃあお弁当持って学食行くね」

「ミカンちゃん、モモコちゃんと小学校同じなんでしょ?どんな感じだったの?」

「ミカンちゃんって、勉強できるよねー!今度期末前勉強教えて!」


「よーし!じゃあ今度みんなでうちに来る?」


「「いく、いく!」」



おわり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ