世界を救う伝説の勇者(泥棒)
「は?」
驚きを隠せない。
「ちなみに、盗賊の使用出来る武器はナイフだけです。」
え!?片手剣使えないの!?勇者って片手剣を使うもんでしょ!?ナントカソードは!?エク○カリバーは!?と思ったが、一旦冷静になる。
「スキルは?」
スキルは大切だろう。カッコイイ攻撃技の
一つや二つは欲しいところだ。
「えっと、あなたはまだLv.1ですので、使えるスキルは……。」
「盗む、だけですね。」
「そうですか。」
悲しいわ。すごく。攻撃手段が通常攻撃だけなんて。
「まあ、Lvが上がって新たなスキルを覚えることもありますし。とにかく、頑張ってください!」
そして、数時間後。セレンはゴブリン相手にスキルを試していた。
「盗むっ!!」
ピキーン。
「なんだこれ。」
それは、ゴブリンが腰に巻いていたボロきれだった。
「ダメじゃん。」
更に、数時間後。ゴブリンを10匹程度倒したところでふと、気づく。
「Lv上がってるんじゃね?」
セレンは職業カードを確認する。
「Lv.3!」
更に、
「スキル:隠密!!」
隠密とは、3分間誰にも気づかれずに行動できる、完全に泥棒用のスキルである。
「いいこと思いついちゃった。」
セレンは村に戻る。
「隠密っ!!」
そして、1番近い民家に不法侵入。住人は出かけているようだ。誰もいない。まずはタンスに向かう。1000リンを手に入れた。そして根こそぎつぼを破壊する。ほとんどのつぼは空っぽだったが、1つだけ何か入っている。5000リンだ。
「やったー!ヘソクリかな?」
そして、何事もなかったかのように村を出る。
「まあ、勇者が他人の家に盗みに入るのは当たり前だよね!」
当たり前では無い。いつからそうなったんだ。それに、まだ正式に勇者として認められていないのに。
「これでお金は手に入ったな。王都に向かうか。」
セレンは3日かけて王都に辿り着いた。その間、Lvも1つ上がった。
「でっかいなあ。」
さすが王都。建物が綺麗で大きい。
「城はどこだ?」
散々迷ってやっと城に着く。王都広すぎ。
「貴様、何者だ!」
門番の兵士たちが聞いてくる。
「勇者です。」
「大変申し訳ございません、勇者様!すぐにご案内致します!」
なんか、すごいあっさり信じてくれたな。普通はもっと疑うもんだろ。
「王様!勇者様を連れて参りました!」
「入れ。」
ガチャン。扉が開く。
「おお。そなたが勇者か。私はこの国の王、ムッツリーニである。」
髭が長い。いかにも王様だ。というかふざけた名前だ。スケベじゃねーか。まあ、ここは丁寧に。
「勇者セレンでございます。」
王様は例の首飾りを取り出す。
「この首飾りは勇者にしか反応しない。そなたが本当に勇者なら、この首飾りは光り出す筈だ。」
セレンは首飾りを受け取り、身につける。首飾りから眩い光が溢れ出る。
「皆の者!ここに世界を救う伝説の勇者が現れた!今夜は宴じゃ!」
俺、本当に勇者だったんだな。と、いうことは。
「勇者だから、他人の家に盗みに入っても罪に問われない!!!」