レディー・ゴー
お約束だから、二回目だけど聞いてね。
「それでは、皆さん!」
司会者が観客席に向けてアピールした。
「パンツァーァァァァァ!」
少し言葉をためてから、
「ファイトォォォォォ!」
右の拳を握りしめ、
「イェーガーァァァァァ!」
ぐぐぐっとためてぇ…、
「ゴォォォォォォォォォォ!」
の掛け声と共に右腕を高く掲げる!
会場に満たされる一体感。
そして、カウント0!
私は一気にペダルを踏み込…まない!これだけ、遮蔽物が多いとスピード出すと衝突しそうだ。
操縦感をゆっくりと倒し『カション』『カション』と歩き出す。
ヘッドホンをし黙想していた幸は、ゆっくりと目を開き、
「(ごにょごにょ)。」
***
兎野幸さんの声が、小さく聴き取り難いので、これより音量を調整いたします。読者の方は、ボリュームにお気を付けください。
***
では、先程の台詞をもう一度。
「そこです。」
同時に引かれるトリガー。
『ズダダダダーー』と、突然左側少し前の壁が、大量の銃弾で吹き飛ぶ。
「うぁ! 危っな。」
操縦桿を引き機体をバックさせる。
銃弾が壁に穴を開けながらこっちを追いかけて来た。
「なんで!」
ペダルを踏み込み、後ろにダッシュ。
「八束さんの言った通りですね。」
と、部長。
「だろう。あれは苦労したんだ。」
「えっ。あれは八束さんが作ったんですか?」
驚く美星。
「おう。下請けだけどな。形が気に入らなくて何度もやり直したから、よく覚えてるよ。」
「なるほど。先程のマップ変更の申し入れに合点がいきました。」
そこへ
「戻りました。」
副部長を先頭に小南、百地が続く。
「あちゃ、始まってるよ。」
と、小南。
「無理に着替えなくても良かったのでは?」
美星が振り向き聞いた。
「今日は、日向さんがメインですから対戦の終わった私達は目立つのはどうかと。」
答える副部長。
「なるほど。確かにそうですね。」
「状況は如何に?」
百地がモニターを覗き込みながら聞く。
「今、始まったところです。」
答えたのは美星。
「良かった。」
と、百地。
「百々っち。ほれ。」
と、小南が椅子を渡す。
「かたじけない。」
副部長と小南もモニターの前に椅子を出し陣取る。
「後、面白い事が分かりましたよ。」
「何々、部長。」
小南が身を乗り出し聞き、副部長と百々も続いて身を乗り出した。
「これを作ったのが八束さん。」
タブレットを見せ指差す部長。
「アクセサリーじゃないんですか?」
副部長が聞く。
「これは…。」
『わぁぁぁぁぁ!』と歓声に、一斉にモニターへと注意が移った。
またまた、お約束が!
今日は[ベタの神様]の出番が多いぞ。
壁に穴を開けながら、追いかけて来る銃弾。崩れかけた壁の耐久力が無くなり一気に『ガラガラ』と崩落し、土煙を上げた。
それが、合図かの様に攻撃が止まる。
その隙きに太い柱と瓦礫の間に機体を滑り込ませ隠れる。
「ガトリングさん、当たらない。」
また目を瞑り集中する幸。
「今のは完全に狙われてた…。こっちが見えてる?」
考える…。
「今は攻撃してこないから、見えてるわけじゃなさそうだけど…。」
「動きませんね。」
モニターを見ていた美星がつぶやく。
「日向さんの事ですから、考えてるんですよ。」
部長が答えた。
「どう対応するのか…。楽しみだね。」
小南はモニターから目を離さずに、
「うんうん。」
同じく副部長。
百地は無言のままでモニターを見据える。
「このまま、じーっとしていても、どーにもならない。」
決意を口に出し、ペダルを踏み込む。
「見〜付けた。」
ゆっくりとした口調で言いながら、目を開きトリガーを引く。
『ギュイーン』と走る私の後ろから、壁に開く穴が弾丸と共に追ってくる。
「やっぱり、私の位置が解ってる!」
でも、弾道から相手の位置の見当も大凡付く。
頭上で起きる爆破。
「ぎょぇぇ。」
降ってくる元壁だったものが『カンカン』と機体に当たる。
「ミサイルさんも、当たらない…。」
狙いを付け直しガトリング砲のトリガーを引く幸。
追ってくる壁の穴と弾丸から逃げる。
見えた角を左に曲がると、開けた所に出た。
「いた!」
思わず声が出た。
開けた先の弾丸で穴が開き崩れた壁の向こう側に見えた。
ようやく捉えた。
こう言う時は、
「倍返しだぁぁぁぁぁ!」
って言いながら反撃するって部長さんに教わってる。合ってるよね。
トリガーを引き、目一杯にライフルとミサイルを撃ち込む。




